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Re:D.A.Y.S.  作者: 結月亜仁
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命の取り合い

「おいユウト!こっちに集中しろ!」というゲンの声で、我に返った。


おれは前に向き直った。そうだ。脇目を振っている余裕は無い。まだこっちの相手が残っている。


あっちはミコトとコウタが一匹を相手するだろうから、任せておいて平気だろう。それで、こちらはザルシュがあと三匹。


おれはふと気付いた。三匹のうち、一匹だけ他のザルシュに比べて明らかに一回り身体が大きいやつがいる。腕も太くて、強そうだ。


ザルシュが群れを成しているのは、だいたいがボス的な存在のザルシュに付き従って行動していることが多いからだ。今回の群れも、その一つだろう。


ということは、あいつがボスだ。


「グルルッ」とボスザルシュが低い声で鳴いた。すると、他の二匹のザルシュが躍りかかってきた。


来た。


おれはザルシュたちに剣先を向けた。どう来る?二匹相手は難しい。一匹はゲンに任せようか。でもボスザルシュは?まだ動かないけれど、何をしてくるか分からない。


放っておいても?

いや。


来ると思っていたザルシュ二匹は、ユウトを無視して、ゲン一人を襲い始めた。


「うおっ!?」

ゲンは慌てて盾で迎撃する。なぜだろう。なぜ、こっちに襲ってこないのか。


そうじゃない。たぶん、ボスザルシュがそういう風に命令したんじゃないか。一人ずつ、確実に倒していった方が良い、ということを理解しているから。


そういうことを、やつらは知っているとしたら、思いのほか、戦略的だ。甘く見ていたのかもしれない。


おれはゲンを助けようとして、踏み止まった。駄目だ。目の前にはボスザルシュがいる。こいつを何とかしないと、助けにも行けない。


ボスザルシュがじりじりと近づいてくる。間近で見ると、かなり威圧的だ。毛むくじゃらで、筋骨隆々で、特に腕の太さが尋常じゃない。木の幹ぐらい、あるのではないか?ないか。でもそれぐらい太く感じる。


やれるか?やれる?おれ一人で?


「グルゥアアアアア!!」

突然、ボスザルシュが奇声を上げて殴りかかってきた。やれるか、ではない。やるしかない。


おれは降ってきた拳を右側に回避しながら、攻撃の隙を窺う。


無暗にこちらが攻撃しても、リスクが高いだけだ。だから、確実に仕留めるために様子を見る。生憎、身体はちゃんと動いてくれる。あとは、気持ちの問題だ。


ボスザルシュはさらに腕を振り回してくる。あんなに太い腕なのに、軽々と振るっている。


こいつ、まるで嵐だ。ブワンブワン、って。音が。やばいって。


ボスザルシュの攻撃は止まらない。おれは右へ左へ、ステップで避ける。たまに剣で弾く。弾くというよりも、受け流す。真正面から剣で受けたら剣が折れてしまうかもしれない。それに、衝撃がえげつない。何度も弾いていたら、手が痺れてきた。ひりひりしてきた。


右、左、左、右、右、右、左。規則性なんて、あったものじゃない。そろそろ辛くなってきた。腕が重い。


大丈夫か、これ。耐えろ。耐えろ。耐えろ。耐え。

右足の踵に、何か引っかかった。地面から突き出た、木の根だった。あまりの猛撃で、足元を意識していなかった。


あ。


気を逸らした一瞬の隙に、ボスザルシュの左ストレートが顔面目掛けて繰り出される。おれは咄嗟に剣を構えた。


「うぎっ!?」口から変な声が漏れたが、何とか剣で受けきった。剣も折れていない。でも、剣が腕ごと跳ね上げられる。


身体が。

剣だけは放すな。そう直感して、必死に吹っ飛びそうな剣を握りしめる。が、できたのはそれだけだった。身体が、がら空きのままだ。ボスザルシュを見る。右ストレートを構えていた。


え、うそ、やばい、どうなるんだ。これ。


言ってる場合か。考えろ。諦めるな。どうでもいいから、自分を守れ。

右ストレートが飛んでくる。


その時、パッと、視界にヒビが入って-------。


「ギャアアアアッ!?」という声でおれは目を見開いた。

なんだ。どうした。身体。痛くない。右ストレートも来てない。


違う。

逸れていた。右ストレートは、おれの左側を過ぎていく。

何が起こったか分からないし、理解していなかった。でも反射的に身体が動いた。

跳ね上がった剣を両手で握りしめ、思いっきり前方へ振り下ろす。


剣の刃が、ボスザルシュの左肩にめり込んだ。がりっと、骨の当たる感覚が伝わって、ぐっと親指に力を込める。


ボキボキと骨を貫通する感触を何度か繰り返した後。

グガァ、と言ったのか、ウバァ、と言ったのか、よく聞き取れなかった。ボスザルシュは地面に仰向けで横たわっていた。見下ろすと、その眼にはもう、生気は宿っていない。


そして、ボスザルシュの右眼に、ナイフが突き刺さっていることに気が付いた。


そうか。ナイフで拳の軌道が逸れて。

理解した時には、足に力が入らず、地面に膝を付いた。そういえば、ゲンたちは、と思って周りを見渡すと、既に彼らは戦闘を終えていたようだった。


「はぁあああああああああああああああ」

おれは胸に溜まっていた全ての空気を外に押し出した。


ああ、きっついな、これ。


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