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Re:D.A.Y.S.  作者: 結月亜仁
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目覚め

******


チュンチュン、と鳥の鳴く声が聴こえた。


そう知覚したときには、もう頭が覚醒している。肌が毛布の温もりを感じて、目を瞑っていても明るい光が瞼を通り越して照らしている。


朝だ、と思った。


ん?朝?


おれは目を開けた。案の定、周りは明るくて、視界がはっきりとしている。目の前には、天井が見えた。けれど、妙に近い。


天井って、こんなに低かった?

いや、違う。これは天井じゃない。


おれは上半身だけ身体を起こした。包まっていた毛布がさらりと脱げ落ちて、温もりが外へと逃げていった。


小さな部屋だった。


ここから反対側の壁には、二段ベッドと思われる家具が一つ。おれの頭側の壁には、窓が設えられていて、太陽の光が差し込んでいる。


それ以外、これといった装飾品は見当たらず、何も無い。


いや、どうやらおれ自身二段ベッドの下段に寝ていたようだから、二段ベッドが二つあるだけだ。道理で天井が近いわけだ。


おれはベッドから抜け出して、窓の外を眺めた。上には真っ青な空に、幾つもの雲が漂っている。目線を降ろすと、何も植えられていない、殺風景な花壇が目に映った。


「ここ、って…」


不意に後ろから、とっとっとっとっ、というリズミカルな音が聴こえてきた。この部屋のドアの向こう側から聴こえているようだ。そのドアは壊れているせいなのか、半開きになっていて、部屋の外の様子を窺うことができる。


音がだんだん近づいて来て、すっと、赤いものが部屋の目の前を過った。そのまま音は過ぎていくと思ったが、急に音が止まった瞬間、またこちらに近づいてきた。


「あ!ユウト、起きてたの!?」

部屋のドアを勢いよく開けて、ポニーテイルの女の子が入ってきた。女の子の髪色は、綺麗な赤だった。そうか、さっき見えたのはこれか。


というか。


「えーっと、ハル、カ…?」

おれは首を傾げながら呟いた。同時に様々な疑問が頭を過って、硬直しかけた。

ハルカ、だよな。うん、たぶん彼女はハルカだ。でも今なんで、赤髪が似合っているな、って思ったんだろう。


まあ、それもあるけれど、なぜハルカがここにいるのだ?


すると突然、また廊下の方から足音が聴こえてきた。よくわからない鼻歌まで聴こえてくる。

それが部屋の前まで来た瞬間、鼻歌を歌っている人物と目が合った。


「あ!ユウ君、起きたんだ!おはよう!」

そこにいたのは、大きな籠を持った眼鏡の女の子だった。彼女はおれと目が合うなり、笑顔で手を振ってきた。


「あ、ああ」おれはつられて手を振り返す。「おはよう」


いやいや、おはよう、じゃなくて。


眼鏡の女の子、彼女はミコトだ。ミコトまでいるとは、どういうことだろう。

ミコトは、持っていた籠を床に置くと、おれに近づいて身体を舐め回すように眺めてきた。


「えっ、え?何?」

「…ユウ君、特に痛いところとか、ない?」

「え?痛いとこ?ない…と、思うけど」

「そっか!」ミコトは手を胸の前で合わせておれに向き直った。「良かったぁ」

「…良かった?」

「うん、良かった」

「何が?」

「何がって?」

「…あはは」

おれは軽く後ろ頭を押さえた。何なんだろう、これは。意味が分からない。何か自分は悪いことをしたのか。全く、身に覚えが無い。


…身に覚えが無い?


「え」ハルカが手で口を押えた。「あんた、まさか覚えてないの?」


ハルカの様子を見て、おれは少し狼狽えた。覚えてない?何を?いや、自分が誰なのか分かるし、彼女たちが誰なのかも分かる。では、何を覚えていないのか。昨日。


昨日、何したっけ。


あれ。


「それじゃあ」ミコトも、不安げな顔でユウトを見つめた。「あの、黒い化物のことも、覚えてないの…?」


「え…」

くろいばけもの。嫌な響きが、喉の奥につっかえた。

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