9.ギュナイルとランクルの想いは
「あったかいけど〜硬い!おしぃ〜」
「……ギュナイル、アンタは何の為の付き添いだったんだ?」
カナを軽々と背負いながら前を歩く姿を見ながら私は、大量の菓子と酒を持ちながら言葉を返す。
「最初は、私の忠告通りに抑えてくれていたんですよ。ただ、隊の方々と飲み比べ大会が始まりまして。もぅ、最後はこの有様です」
顔は見えないが、未だ収まらない怒りを背中から発せられても困るんですよね。
「流石に祝福すると台に上がり弓を出現させた際には静止の術を彼女に放ったのですが」
「効かなかったか。怪我人は出ていないようだが」
ギュナイルは、カナから消失したと聞かされていたし、まさか祝の場でそんなモノを使うなど誰が予想していたか。
『やっぱ、フラワーシャワーがあったほうが派手でよくない?』
突然、武器を構えた彼女に会場にいた皆の驚きと恐怖による悲鳴。それなのに聞こえていないのかカナは上空に矢を放った。
『幼なじみとゴールインなんて、ホント幸せねー! おめでと〜!!』
距離があろうと必ず瘴気を消し去る金の矢は、何故か花弁を降らせた。拍子抜けした何名かの口にその花びらが入り込むも、どうやら幻のようで吐き出される事はなかった。
「カナは、我々の予測を超えますねぇ」
「だから困るんだ」
少し歩む速度が遅くなった。口調も怒りは残っているようですが、棘はない。
「元婚約者とは話がつきましたか?」
私の一言で苛立ちを見せるかと思えば。
「勝手にあの娘が言っているだけだ。気を……悪くしていたか?」
無口な男は、最近よく話すようになった。料理の腕だけではない変化。
「カナは、私に女性がいるなら離れて構わないと言っていました。ですが」
あの庭での顔。
「あの令嬢が来て部屋を出た後のカナは、寂しそうに見えました」
まぁ、私の思い込みか見間違いの可能性もありますが。
「術が全く効かない、酒も強ければ意思も強いカナは、たまに抜けていて幼く見える時がありますよね」
もう、私は戻れない。
「私は、カナのいない生活は味気なさすぎて考えられません」
貴方は、どうです?
私の声にださない問いは、伝わりましたか?