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2.ランクル君の話にのる事にした

「ねー、早く帰してよ。やれば出来る子レイちゃんでしょ?」

「その呼び方はヤメロと言っているだろう! あぁ、やはり暫くは無理だな」


レイちゃんは、殺人事件に使えそうな分厚い本を閉じた瞬間、ペンを投げ捨てた。


嘘でしょ?


「ちょ、レイちゃん? 私、久しぶりの連休なのよ? 夜勤からの早番からの夜勤とかもう頑張ったのよ! わかる? やっと次の日を気にせず飲めるはずだったのにっ!!」


私は、真面目なのである。いや、やんちゃな時代もあったかもしれないが、至極まともな大人になった。


それゆえ今は連休だけはお酒をセーブしないと決めている、いわゆるマイルールがあるが、最近は全く連休がなかった。


それだけに恨みが増していく。


「はぁ、しかもウィルスのせいで家飲みで我慢しているから、贅沢して取り寄せたお酒を冷やしておいたのに」


ツマミまでそのお酒に合わせた高級品である。


「カナ、レイルロード殿は息が出来ないようだが」

「ん?」


いつの間にかレイちゃんは、白目を剥いていた。


「ちょっと! 私を帰してから気絶しなさいよ!」

「カナ、流石に放さないと。彼が死んだら帰れなくなり……我々はそれでも構いませんし、むしろ都合が良いのか」


ギュナイルの不穏な呟きに瞬時にレイちゃんから手を離し、彼からもなんとなく距離をとれば気づかれた。


「どうしたのですか?」

「いや、ギュナイルの顔が怖いわよ。鏡を見てみなさい」


一瞬でいつもの穏やかなモードに戻ったが、私は、今の薄暗い笑みを浮かべた顔をバッチリ見たからね。


「カナ、とりあえず陛下に挨拶した後に許可が出ればだが、王宮ではなく家に来るか?」


気を失ったレイちゃんを肩に軽々と抱えたランクルは、ソファーに意外にも慎重に降ろした後、私に提案してきた。


ランクルの家。


「そういえば、ラインさんは? 家に来ていたわりに話題にのぼらなかったから気にはなっていたけど」

「食事もとれるようになり以前と同じくらいには回復している。ただ、後遺症なのか魔力循環が少し」


最後はなにやら言い淀んでいるが、彼の顔色を観察し簡単に読み解くと私にこれ以上の助けを欲しているわけではないけど、まだ万全でない兄が心配って事かな。


「じゃあ、迷惑にならないならお邪魔しようかな」


此処にいても、レイちゃんに苛つくだけだしな。


「カナ、是非私の家にも」

「うん。変な薬とか飲まされたりしたら嫌だからギュナイルの家は遠慮する」

「そんな事しませんよ!」


悲壮な顔をされても無理なものは無理だから。


「じゃ、さっそく陛下に許可とるか」


多分、面白そうだなと判断されオッケーが出る気がするのよね。




***


「お〜、記憶通りの立派なお屋敷」


以前みた大きな門に足を踏み入れるとシンボル塔のような噴水からでる水が陽の光の効果で輝いて見える。二度目でも飽きないわ。


「私の屋敷もなかなかだと思いますが」

「ふ〜ん。って何でギュナイルもいるの?」


そう、何故かギュナイルまで付いてきたのだ。


「私は、貴方の婚約者なのですよ?」

「そうなの?! いつよ?! ランクルとはまだ解消してないけど」


すっかり元の生活の忙しさで、婚約は忘れていた。思い出させてくれたのは良かったかもしれないが、ギュナイルまで婚約だなんて記憶にない。


「私が珍しい酒を持参した日にサインしてくれましたよ」


あっ、まさか。


「すっごい飲みやすくて、しかも色が紫のやつ?」

「はい。とても高価ななだけあり口当たりは良いのですが、かなり強い酒で有名な品なのです」


滅多に酒にのまれない私が、寝落ちしたのもわからないまま朝を迎えたやつだ!


「何枚でも書くわよと仰っておりましたので、無理強いではありません」

「それって、かなり卑怯じゃない! 返しなさいよ!」


へろへろの名前が書かれた紙を見せられ、思わず飛びつくも寸前でかわされた。そんな事を繰り返しているうに目的地の玄関にたどり着いた。


「お待ちしておりました」


扉の周囲はずらりと使用人さんが並び、その中心から一人、長身の男が進み出てきた。


「カナ様。ノージス家へようこそ」


固く目を閉じ痩せこけた姿しか見た事がなかった私は、彼のはりのある声や姿に一瞬、見惚れた。


ランクル君のお兄さんのラインさんは、やはり美形だった。


存在感が凄い。


「これ、入居者さん達に会わせたら引っ張りだこ間違いなしだわ」


入浴の誘導に使えそうだわと呟く私を不思議そうに見下ろすラインであった。







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