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19.急に困るわね

「二人の成長した様子が感慨深いわ」


以前会った時には既に成人していたけれど、中身より外見が大人びていたというか。


「カナは変わりないですね」

「ハイハイ、どうも」


お世辞なのはわかりきっているので適当に返事をしておく。


それよりも、やはり確認してしまった。


『ギュナイルは生きてるの?』


数分前にレイちゃんに尋ねた言葉は、生存しているかという意味ではない。


「とりあえず中身が死んでなくてよかったわよ」


あの時、私はランクルにこの世界で移住すると伝えるつもりだった。私の言葉で端正な顔が歪む。


「カナの判断は、当時の私には酷でした。話すことは叶わなくなったとしても、近くに存在してくれるなら耐えられると。なのに貴方が選んだのは完全な拒絶だった」


顎で切り揃えられている銀の髪が項垂れた顔に影を落とした。そんなギュナイルの動きに色っぽいなと思う私は不謹慎だろうか。


「カナ、私達は真面目な話をしているのですが」

「ちゃんと聞いてるわよ」


やれやれ変わらず鋭いな。


「本当は、君達と暮らすって言う予定だったのよ。でも、ギュナイルの顔を見てやめたの」


今更こんな話をしても意味があるのかわならないけど、どうやらまだ迎えが来ないようだし仕方がない。


「あの時、私が残ればギュナイルのメンタルは更に病むと思ったし、それだけじゃなくてランクルにも言えるんだけど」


上手い言葉が出ないな。


「そう、依存になるから」


正確には共依存か。


「人それぞれの考えがあるけど、私は嫌だった」


二人を振り回したのは認める。


「今ならば、望みはあるのか? この場にいるというのはそういう意味だと捉えているんだが」


至極真面目なランクルは、ザクザクと切り進めてくる。刺されそうな視線も重たいというか痛いというか。


「困ったな。レイちゃんが急に現れて落ちたというか転移してきたのよ」


「月日は経過しましたが、俺達の気持ちは変わりない。カナは?」


真っ直ぐ過ぎよね。まぁ、そこが良いとこでもあるんだけど。


「正直、今で手一杯なの」


自分の現状を維持する事しか考えていない。


「此方に来ていただけたら、病も完治するとレイルロード様が言っていた」


ランクルってレイちゃんを様づけしてたの?


「このままだと余命幾ばくもないのですよね?」


レイちゃん、君はいつから私のストーカーになっていたのかしら?


「今すぐってわけじゃないけどね」


ギュナイルの言う通り私の身体は緩やかにだが、確実に弱っている。


「年配の方々をケアするのが仕事だし、死は身近に感じてはいたけどね。まだ先だと思っていたのは否めない」


まさか自分が、こんなに早く終点行きの電車に乗るとわね。


「人生って、わかんないわよね」


だからこそ面白いんだけどさ。



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