18.七年ぶりの再会は
「最近、僕って夜は寝るんだけど」
レイちゃんは、ストローを口にくわえて上下させながら意味不明な話をしだす。
「だから何だっつーのよ。私だって寝たいわ!」
人間、睡眠が大事に決まっているじゃない。
「躊躇するなんて、アンタらしくないね」
「会ってどうするのよ。それに」
「病んだから? って、いきなり取らないでよ」
雫を飛ばしているのが悪いわよ。
「レイちゃん、七年よ? 十歳が十七歳になるくらいの年月なのよ。無理よ」
何よその目。子供の姿なくせに、そんな目で見ないでよ。
「それだけではないはず。実際にその場にいないから詳しくは知らないけど、アンタはいつもどこかで冷静だ。それが衝動的な行動だったとしてもね」
皮肉っているわけではないらしく至って真面目な口調に逆に不安になる。
「……ギュナイルは、生きてる?」
空気清浄機の音ってこんな大きかったっけと思うくらい静かな室内で私の声はいやに響いた。
顔は隠れていても、あの壊れそうな子の姿が強く残っていた。伸ばされた包帯だらけの手を見ないふりしたのは私。
決めたのは私。
──なのに。
「やっと言った。それは自分で確かめてみなよ」
レイちゃんのため息と共に私の身体は、懐かしい浮遊感と光に包まれた。
「いったー!」
見事にお尻から着地し、痛みに身悶えしていたから周囲を確認するまでには時間がかかる。
いや、既に仁王立ちのシルエットが落とされた照明の光で伸びていた。しかも二つ。
「カナ。つつがなく過ごされているようでなによりです。そういえば酒の量はお変わりないようですね」
ギュナイルの柔らかな口調のなかに小さな棘が混ざる話し方は昔と変わらない。
「食生活もなってないようだ」
ランクルは、どストレートである。
「言い忘れたけど、久しぶりに道を開いたせいで安定してないよ。短時間で呼ぶからそのつもりでいてよね」
「ぎゃ、って!ちょっと!」
逆さまになった状態のレイちゃんの顔半分が、いきなり何もない空中に現れ消えた。
本当に、なんなのよ。
「カナ」
背なか越しに先程から感じている強い視線に無視を続けるのも限界か。肝心のレイちゃんが不在確定となり、どうしょうもない。
「やっとお会いできましたね」
諦め、ゆっくりと彼らに体を向き直せば、変わらぬ声とは違い変貌した二人が佇んでいた。