13.ギュナイルの呟き
「レグスター様っ」
「君がいても足手まといなんですよ」
部下達の恐怖に震える姿に君達、意外と可愛げがあったんですねとギュナイルは新しい発見をし、少し気分が良くなった。
「行きなさい。鳥を飛ばしてはいますが、陛下に早急かつ正確に伝えねばなりません」
獣がひと吠えしただけで耳鳴りがする。魔獣、しかも意図的に改良してきた獣。
趣味が悪いですねぇ。
「ですが、聖女様が」
「くどい」
纏わりつくのは好みでも、その逆は不愉快なんですよ。幼さが残る若いが優秀な部下を見下ろせば、わかり易いほどに肩が上がった。
「──私を誰だと思っているんです?」
ゴクリと唾を飲み込んだ部下は、怯みながらも応えた。
「誉れ高いレグスター家の当主、ギュナイル・レグスター様」
「そうです」
あと数日後の任命式では魔術士の頂点に立つ私に向かって威勢がよいですね。
「リール!もういいだろ!レグスター様、御無礼を申しわけございません!」
「構いませんよ」
教育係のアスラが、リールの頭を無理やり下げさせていいますが、別に不快ではないのですよ。
「無駄話は終わりです」
行きなさい。
「必ずお戻りを」
アスラが立ち去る一瞬の間に振り向き敬礼をした。
「魔術士は敬礼はしないんですよ」
騎士団にいた頃の癖は消えないですね。
*〜*〜*
「責務は果たしましたが……困りました」
カナのいる世界に時間を割くようになり怠けていた。
「カナに言われたように、もう少し身体を鍛えておくべきでした」
かといって、私はランクルにはなれない。
「魔力切れとは新人に笑われますね」
降り出した雨が体温を奪っていくも、ただ雨を全身で受けとめるだけ。地面に横たわるこの身は先程から震えが止まらない。
『顔がいいからって何しても許されると思ったらおお間違いなんだからね! 距離は大事!』
このような状況だというのに、思い出される声は容赦ない言葉ばかり。
「やっと貴方を独占できるかもしれないのに…」
──身体の感覚も失ってきましたね。
「カナ、今日は私にとって厄日だ…っ」
言い切ることなくギュナイルの意識は深く沈んでいった。