12.プライバシーという言葉の意味を教えたはずよね?
「ギュナイルだけじゃなく、貴方にも散々伝えたわよね? プライバシーって言葉を」
あえて私は、二人に知識を与えようとはしてこなかったし、彼らも電化製品の扱いくらいしか質問してこなかった。
「私の油断だわね」
「言い訳に聞こえるだろうが、未開封のものを開けたりなどはしていない」
雑な生活がいけない、即ち片付けていない私が悪いって事ね。
「一つ、訂正があるわ。産めなくはないわよ」
まぁ、リスクはあるけど。
「悪かった」
「ごめん」
お互いの声が被った。青い目が真ん丸だ。そんなに私が謝罪をするのが珍しいのかしら。
「……何に対して?」
今度は、悔しそうに顔を歪めた。今夜のランクルはよく表情が変わる。苛立ちを隠さない、その頬に触れてみれば、それは戸惑いに変化していく。
「この緩い関係に甘えていたわ」
時にやるせなさと疲れとでヘロヘロに帰宅すれば、ランクルやギュナイルは何も聞かずにご飯やお風呂の用意をしてくれていた。
『ただいま』
『おかえり』
そんなやり取りが当たり前になっていく。だけど、居心地が良すぎたと感じるのは私であり彼らではない。
「婚約者になったまま、先送りにしていたのは謝る」
決めたくないくらい今の状態が好きだった。
「大した内容じゃないんだけど、ギュナイルも交えて話したいな」
婚約証明書に酒に飲まれてサインしたとはいえ一様ギュナイルも婚約者である。
「とりあえずランクルは明日、空いてる?」
「夜なら構わない」
「了解。まぁギュナイルは暇そうだし大丈夫だろう」
ランクルとそんな話をしていた頃、ギュナイルはこの屋敷から遥かに離れた国境の境目で怪我をし意識を失っていた事をまだ二人は知らない。