表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女に振られるといじらしくてかわいい少女を養う事になるらしい  作者: ネコクロ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/30

第12話「おねだり」

 神楽坂さんの頬は、目的地である岡山駅付近の大型ショッピングセンターに着いても戻る事はなかった。

 フグみたいに頬をパンパンに膨らませた状態で不機嫌そうに俺の隣を歩いている。

 なぜか肩が当たりそうなくらい近い距離で歩いているけど、とても機嫌が悪いので離れるよう言いづらい。

 俺から距離を離すとその分近寄ってくるし、神楽坂さんが何を考えているのかよくわからなかった。

 美少女が頬を膨らませて歩いてるせいで周りからも注目を浴びているし、いい加減機嫌を直してほしいのだが。


「えっとさ、何がそんなに気に入らないのか言葉にしてくれないとわからないんだけど」

「……ご褒美、ほしいです」


 何度目かわからない声掛けでやっと神楽坂さんは重たい口を開いてくれた。

 そして不機嫌さは直らないまでも、何かを期待するような目を俺に向けてくる。

 いつの間にか頬が赤く染まっていて、潤いを持った瞳は年下ながら色気があると思った。


「ご褒美? あぁ、掃除を頑張ってくれた事の?」


 思い当たる事を聞いてみると、神楽坂さんはコクコクと一生懸命に頷く。


 もしかしてご褒美をあげなかったから拗ねていたのだろうか?

 いや、でも、確か拗ね始めた発端は俺が撫でるフリをして彼女をからかっていたからであって、ご褒美云々とは関係なかったはず。

 だけどまぁ、それで機嫌が直ってくれるのならいいか。


 ご褒美がほしいと言ってきた神楽坂さんの言葉を聞いて、俺はポケットから財布を取り出す。

 すると、なぜか不思議そうに神楽坂さんが俺の顔を見上げてきたけど、俺は気にせず財布から五千円札を取り出して彼女に差し出した。


「五千円でいいかな?」

「なんでそうなるのですか……!」


 あれ?

 てっきり喜んでくれると思ったのに、また頬を膨らませて怒ってしまったぞ……?


「あっ、金額が足りない? うーん、でも、一万円は高いかなぁ……」

「違います、金額のお話じゃないです! やっぱりお兄さんはわざとやってるのですか!?」

「何をそんなに怒ってるの?」

「お兄さんがとぼけるからですよ……!」


 別に何もとぼけてなんていないのに、神楽坂さんは凄く怒ってしまっている。

 いったい何を怒っているのか全く見当がつかない。

 これはもう、本人に聞いてみたほうがいいだろう。


「何がほしいの?」

「…………」


 質問をすると、また無言で頭を差し出されてしまった。


 なぜこの子は言葉にしてくれないのだろう?

 絶対言葉にしたほうが相手に伝わると思うんだけどな……?


 頑なに行動だけでアピールをする神楽坂さんに俺は疑問を抱かずにはいられなかった。

 しかし、彼女が言葉にしない以上俺も仕草から読み取らないといけないだろう。


 頭を差し出している――普通に考えれば、頭を撫でてほしいというアピールだ。

 佐奈の場合、頭を撫でてほしい時は凄く甘えてきたり、言葉にしたりするが、拗ねている時はこういうふうに黙って頭を差し出してくる。

 だけど、相手は神楽坂さんだ。

 先程は頭を撫でようとすると嬉しそうに目を輝かせていたが、散々からかわれてなおも撫でてほしいというアピールをしてくるとは思えない。

 ここで頭を撫でてしまえば、余計に怒らせる可能性もある。


 となれば、なんだ?

 何を持って頭を差し出してくる?


「――――なんで、そんなに悩むんですか……!」


 神楽坂さんが何を考えているのか予想をしていると、痺れを切らした神楽坂さんが俺の手を引っ張ってきた。

 そしてそのまま自分の頭へといざなう。


「頭を撫でてほしいんです……!」


 どうやら、頭を差し出してきていたのはそのままの意味だったらしい。

 俺は何を余計な詮索をしていたのか。

 おかげで神楽坂さんは更に不機嫌に――いや、なっていないな……。


 言われた通り頭を撫でていると、神楽坂さんの頬はみるみるうちに緩んでいた。

 余程撫でられる事が好きらしい。

 高校生にしては大人っぽい見た目をしているのに、随分と子供っぽいところがあるものだ。

 だけど頬を緩めている神楽坂さんはとてもかわいいので、特に文句もなかった。


 まぁいきなり頭を撫でろと言われて動揺はしているけど、相手は年下。

 年下にこんな事で動揺をしていると思われたくなかった俺は、何事もないように神楽坂さんの頭を撫でるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『新作です……!』
↓のタイトル名をクリックしてください

数々の告白を振ってきた学校のマドンナに外堀を埋められました

『数々の告白を振ってきた学校のマドンナに外堀を埋められました』5月23日1巻発売!!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
数々1巻表紙
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  


『迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について』8巻発売決定です!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
お隣遊び6巻表紙絵
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  


『迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について』コミック2巻発売中!!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
お隣遊びコミック2巻表紙
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  

― 新着の感想 ―
[一言] あれ、また岡山駅が。 ということはもしやあの作品の主人公たちとランデヴーが?
[良い点] なんやこの可愛い生き物は [気になる点] 岡山の大型ショッピングモール! 推し武道でチャムジャムがLIVEした舞台ですか?
[良い点] もう、お前わざとやってるだろ!! でも、この可愛い生き物のヤキモキしてる姿が見れるならokです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ