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逃げろヒロイン

ヒロイン、スーパー逆ハー達成!

作者: 笛伊豆

一発ギャグです。

 アルタナ王国王立魔法学院の卒業パーティ。

 会場は異様な熱気に包まれていた。

 楽団は何とか演奏を続けているが、誰も踊ろうとはしない。

 その楽団もひとつ、またひとつと楽器の音が途絶えていく。


 着飾った紳士淑女たちの視線は一点に注がれていた。

 そこには王太子ギルバートを中心とする高位貴族の御曹司たちが円陣を組んでいる。

 そしてその中心には最近になって学園どころか王都の貴族界の話題を独占する少女がいた。


 あどけない表情、小柄で桃髪。

 ヒロイン、アリスである。


 市井に育ちながらトロイ男爵家の庶子として引き取られ、礼儀作法や貴族としての基礎知識すらおぼつかないまま魔法学園に編入してきたアリスは、たちまち王太子を初めとする高位貴族の御曹司たちを魅了した。


 そしてギルバートに守られたアリスに対峙する美しい令嬢。

 学園を牛耳ってきたサイレン侯爵令嬢レレイ。


「レレイ嬢。何か言うことはあるか」

 抑揚のないギルバートの声にレレイは瞳を落とす。


 これまで繰り返してきたアリスに対する虐めを認めることは構わない。

 でも謝罪は出来ない。

 ギルバートの婚約者として、そして侯爵令嬢としての矜持が許さない。


 無言のレレイに溜息をついたギルバートが口を開こうとした瞬間、アリスが言った。


「別にいいですよ。気にしてませんから」


「おお!」

「聖女か!」

「だが」


 レレイがはっと顔を上げて、表情をくしゃくしゃにする。

「いいの?」

「いいです。もっと近くに来て下さい。他の人たちも気にしないで。皆さん、いらっしゃい」


 うおおおおっ! という雄叫びと共に小柄なアリスに殺到する紳士淑女。

 レレイは真っ先にアリスに駆け寄って抱きつこうとしてギルバートに阻まれた。


「おっと。その位置は私のものだ」

「……仕方ありませんわね」


 その間にも群衆が殺到し続ける。

 見れば楽団員すら楽器を捨てて身を投じていた。

 押しくら饅頭のようになった人垣の中心でアリスが言った。


「ではいきますよ。それっ!」


 たちまち展開される巨大な魔方陣。

 桁違いの魔力を操るアリスは水魔法と風魔法を駆使し、パーティ会場を巨大な気化熱式冷却装置(エアコンディショナー)に変える。


 清涼な風が吹いた。


「「「「「「涼しい~」」」」」」


 かつてない異常気象に襲われたアルタナ王国の王都。

 観測史上初めてと言われる強烈な熱波に王国が震撼する中、それでも開かれた魔法学園卒業パーティ。


 会場の冷却魔法装置が過負荷に耐えかねて次々にダウンし、着飾った参加者が熱中症で命すら危ぶまれる中、一人の天才少女が成し遂げた奇跡。


 これがアルタナ王国に長く語り継がれる「男爵令嬢スーパー逆ハー」の始まりであった。

あまりにも暑いので思いついて書きました。

これも魅了魔法ですよね?

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― 新着の感想 ―
[良い点] クーラー魔法ですか! これは羨ましい! 一家に一台欲しいですよね! うぇあらぶるクーラー!
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