第4話 忍術
速い!速すぎる!いくらなんでもこの馬は速すぎる!
ユリアはユウスケという少年が出した馬にリリと三人で乗馬し、自分の山から10キロ以上も離れている自分の町へと向かっているが、この馬は今までのどの乗った馬よりも断然速い。
ここの土地勘を知らない、異世界人の彼から道案内を頼まれたユリアは余りの速さに細かく指示することが困難だ。
「あーーそこっそこ、そこじゃなくて右です右右右右!!そうです、そしてあそこを超えるとっこんっどは左イィっです左を曲がってくださぁい!左っですってばぁ!!」
かなり大声でアバウトな指示になってしまい、次第に自分も道順がてんやわんやへとなり、どこをどう指示していいのか解らなくなってきた。
「あっ速い!速いです!!早く町に行こうとは言いいましたけどそんなに速く走ったら道がわからなくっーーーーーー」
「お前の町ってここか?もう着いたぞ」
ユリアは驚いた!辺りを見ると確かに自分の町に着いていた!
あの山中からここまで来るのにものの数分しか掛かってない、土地勘も解らずに自分の曖昧な指示を聞いてもうここにたどり着いたというのか?
彼女は平静さなぞ取ることはできず、馬から降りても口からは言葉が出ず、半ば放心状態でソワソワしていた。
ユウスケは彼女とは真逆にこの町に馴れ慕ってるような落ち着きでいた。なんで彼はこんなにも落ち着いていられるんだ!?とユリアはユウスケを見たが、ユウスケは町並を眺めて一瞬だけ神妙な顔をして小さな声で。
「・・・・・・やっぱここ、日本じゃないのか」
その言葉を聞いたユリアは、半ば放心状態だったのに自然となぜか落ち着きを取り戻していた。
「なあユリア、この娘の親の居場所を知ってるなら教えてくれないか?なんかこの娘っ顔がボーッとしちゃってよ聞くに聞けねえんだよ」
彼が彼女に話すときには神妙な顔はもうしていなかった。また明るい顔をへと戻していた。
2人はリリを心配している両親の所に行き再開させ、これまでの事情を語ると両親はユウスケに何度も頭を下げて感謝をし、礼として両手では抱えきれないぐらいの食べ物を彼に授けた。
ユウスケは食べ物を授けてくれたことに感謝しながら家族と別れると、食べ物を馬の背に載せながらユリアと同行した。
この町に着いたときに人前で馬を元の木箱に戻そうとしたがユリアに静止され、リリの両親から大量の食べ物をくれたこともあり今は馬を引っ張りながらユリアの住む家に向かってる最中だ。
彼女は彼に質問する。
「そういえば忍術と馬のことについて教えてくれると言ったんですけどこの馬は一体どういう?」
「ああこいつはカラクリ馬ってやつなんだ」
「カラクリ馬?」とオウム返しみたいにユリアが返すと。
「そう、俺の世界にはカラクリ獣ていう物があって、小さい箱から動物になる機械のことを指すんだ、カラクリ馬はその一種でこいつは見た目は馬だけど中身は機械なんだ」
これを聞いてもにわかに信じ難いモノだが、彼女はさっき彼が説明してくれた通りこの馬は木箱から現れたところを目撃した。そんなのを見たら逆に信じない方がおかしい。
とにかくこの馬のことが解ると今度は1番気になることを尋ねる。
「この馬のことについては解ったのですが、あなたが言ってるニンジュツとニンジャというのは一体どういうもの何ですか?あなたの世界の魔法みたいなものなんでしょうか?」
そうユリアが最もユウスケのことに関して気になることがある、それは忍術である。
彼女が傷だらけのリリを治すときに使った光の魔法を彼は忍術と思い呼び、そしてそれを使う自分にはニンジャと思われた。
それにあのカラクリ馬を出した時のやり取りで、ユウスケの世界では忍術とは別に魔法という概念は存在している。だとすばソレは魔法とは全く異なるモノなのかもしれない。
ユウスケは何の躊躇もなく忍術について語り出した。
「忍術っていうのはニンジャが使う技で、肉体とそこに宿る気力を統一させて発動する術なんだ」
ユウスケは続ける。
「おれの世界にも魔法はある、でも忍術と魔法はまったくをもっての別物なんだ、この世界の魔法についてはよく分からないけどたぶん全然ちがうと思うよ」
その説明を受けたユリアは納得した。ユリアの世界の魔法は使用者の肉体に宿る魔力を媒体とし外来の力を操り、自身が使える魔法を発動するという仕組みと、忍術の仕組みはかなり似ているのである。
「いえ、先程の説明がそうでおればニンジュツと魔法は恐らく似ていると思います、でもニンジュツをこの目で見たことがないのでーーーッ」
すると見知らぬ女の子の声が響いた。2人は話しを中断し声をする方に顔を振り向くと、声を出したと思われる女の子が池の向こうに片手をいっぱい伸ばしてたのだ。
池の方には帽子が浮かんでいた。どうやらその娘はなんらかで帽子を池に落としてしまったらしい、ユウスケはこれを見ると。
「ちょうどいいな、今からあの娘の帽子を取るから忍術を見せるよ」
彼はそう言うと女の子の方へ歩き、「ちょっと待ってろ」とその子に優しく声を掛けると、そのまま池の水に足を踏み込む。
踏み込んだ足は水に沈まず、水面を地面のように立ちながらそのまま歩いた。
彼の身長は188はあり、池の深さは彼の胸まではあるのだから何の細工も無しに水面の上に立つなど不可能だ。
ユウスケは帽子の所まで歩き、それを取ると女の子の方へ向いた。すると彼は水面を強く蹴り、木よりも高く跳んだ。
跳んだ彼は女の子の隣に着地したが、あの高さまで跳んでたのが嘘みたいに彼は表情を何1つ崩すことなく帽子を女の子に渡した。
女の子が「ありがとう」と礼を言いどこかに行った。
ユウスケはユリアの方に戻ると微笑みながら。
「あれが忍術だスゴくてカッコいいだろ、お前の魔法も中々凄いけどな」
自分が見せた忍術を自慢するがユリアはそれには答えないまま質問した。
「それでさっき水の上を歩いてたけどイズモさんは水の忍術の属性を使うのですか?それに高く跳んだのは風の忍術を使ったのですよね?」
「いや、ちがうよ」
「えっ?」
「あれは肉体を強化しただけだよ、水と風は使えるけどそんなに上手くはねえんだ」
「俺の本命は炎の忍術だよ、だって俺は炎のニンジャだから!」
その時、ユリアは忍術が魔法よりも上の存在だということを知った。




