プロローグ
幼い女の子は山の中で必死に走った。
自分の足から靴が脱げ落ちて、足の裏が血だらけになっても走り続ける。
女の子は自分を追いかけてくる武器を持った怪人たちから死に物狂いで逃げていた。
どれだけ時間が経っているかわからない。自分が今まで見たこともない得体の知れない怪人どもに捕まれば自分はどうなってしまうのか、そんなことを考える暇もなく振り向かずに今は生きることしか考えずがむしゃらに走り続けた。
だが女の子は足をつまずいて大きく転んでしまった。振り向くと執拗に追いかけて来た怪人たちは女の子が今から逃げても追い付けられるぐらい近づくと、走るのを辞めてじりじりと詰め寄ってきた。
今まで感じなかった身体中の痛みが一気に降りかかり立ち上がったとしても痛みで走る気力すらなく、全身を覆いすくような恐怖心のせいで助けてっ、と声を出すことも出来ない。
もうダメだっ死んでしまう、そう思った瞬間。
「おいお前ら!この娘に何しようとしてるんだ!?」
そこに出雲ユウスケという少年が駆け声とともに突如と女の子と怪人たちの間に割りに入り怪人たちの前に立ち塞がった。彼は藍色の制服とズボンを身に着けており左肩には鞄を背負い右手には少し大きい紙袋を掴み持っていた。
彼ユウスケ「ちょっとこれを持ってくれる?」と優しい声で後ろにいた女の子に鞄と紙袋を軽く投げ渡し屈託のない笑顔を見せて「大丈夫っオレは味方だよ」と安心させるように伝えた。
そしてユウスケが怪人たちの方に振り向くと彼の表情に笑顔が消えた。そこに表れたのは笑顔とは正反対の怒りであった。怪人たちは突然現れた謎の男に立ち塞がれたことで武器を構えながら強く警戒した。
「ひっふっみっまぁざっと15人てところか、オマエらぁっ自分たちが何をしてるのかわかってんだろうな!!」
敵の数を数えた男は右手首を胸の前に出し、左手で制服の袖を強く捲ると大きなモノが付いたブレスレットが現れた。
ユウスケはブレスレットに左手を当て、ナニかを呼び出す儀式かのように、左手を離し右手を空に掲げながらこう叫ぶ。
「グレンッ!!」
すると身体中から紅い炎が現れ、炎は彼の身体のすべてを包みこんだ。女の子と怪人たちはその異様な光景におののいたが怪人たちは一層警戒し、身を低くしながら武器を男に向かって構えた。
ユウスケは一度空に掲げた右手を下に降ろし、右腕をVの字にして身を少しだけ丸め腕を横に大きく振ると身体から出てた紅い炎は全て払われた。
炎が完全に払われた時には彼の姿は変わっていた。藍色の制服とズボンは消えて上皮膚は紅色のスーツのような質感に変わり、胸部には金の装飾と黒のラインが入った皮膚と同色の軽甲冑を纏い、後ろ首にはそこから腰まで伸びた長いマフラーが現れ靡き、頭部には丸みのある葵い複眼と龍を想わせるデザインの仮面を被っていた。
ユウスケは周りの反応など気にもせず堂々と名乗り始めた。
「グレン、俺の名はグレン!全ての影を打ち払う炎のニンジャだ!!」
グレンと名乗った少年は怪人たちに拳を握りながら姿勢を構え、戦いに挑んだ。




