第10話 ハヤテ
白を基調する建物と赤レンガで舗装された廊下で美しさが際立つこの街並みに人々から悲鳴とともに鮮血が飛び散る。
人の姿に似た妖怪に突然と二刀の刀で深く斬りつけられた人は血を吹き出しながら倒れていく。それを見た周りの人は怯えながら一目散に逃げるも怪物にすぐ追い付かれて自分も斬られていいく。
1人、また1人と斬られ白い建物の壁には襲われた人たちの返り血で赤く染まり道には襲われた人々が横たわり、美しかった街はたった1体の化物によって恐怖で覆われていた。
妖怪は目に獲物が写らなくなるとゆっくりと歩き、自分で造り上げたこの残酷な状況を見回して満足する。
その時妖怪の背後に今でも己を喰らうような殺気を感じた。
すぐさま後ろを振り向く、そこで目にしたのは建物の屋上で太陽を背に腕を組んで、こちらを見下ろしなが立つ紅いニンジャがいた。
怪人はこのニンジャが自分に怒りと殺意を向いてることをすぐ察し警戒した。
「お前は誰だ!?」
怪人は紅いニンジャに問う。
グレンは怒りを噛み殺してるかのように低い声で答えた。
「グレンだ、全ての影を打ち払う炎のニンジャーーーッ」
「ーーーーーーッグレン!?」
妖怪は相手がグレンだ分かり驚愕した瞬間、グレンが奴の目と鼻の先まで接近し忍刀で胸ぐらを斬りかけた。
胸ぐら斬られた妖怪は咄嗟に後ろに引き、グレンと距離を取ると怒りを表にした。
「キサマァッ!!一体何しやがるんだ!!何が目撃なんだ、言ってみろ裏切り者オ!!」
グレンは答える。
「正義、ただお前を殺すだけだ」
その言葉を合図に両者は一気に詰め寄り闘い始めた。
お互い手にしてる刀を相手に振りかざして剣撃が始まる。互い刃が交えても全ての攻撃を塞がれ体勢を崩さないため、蹴りや殴打を少し入れるがこれらも全て塞がれてしまう。
とにかく隙を見せず攻撃を与えず差が開かない両者の闘いは続き長引いていた。
妖怪はこの状況に打開したいのか後ろに飛んでグレンから離れると刀に風の力を宿し、彼に向かって刀を振ると風の力は刀から離れた。
離れた風は刃の形となり、それが4つになりかなりの勢いでグレンに迫って来た。
同時にグレンも対抗すべく両手から火の輪を4つ出して技を呼びながら妖怪に投げ飛ばした。
「火円斬!!」
投げ飛ばした火円斬は全て風の刃を1つも残らず衝突すると、2体の間で大きな爆発が起きた。
見えない!妖怪は爆発が壁のように遮ったためグレンの場所を把握出来ず強烈な爆風のせいもあってただ突っ立っていた。
その瞬間、爆煙の中からグレンが現れ妖怪に急接近をしながら斬りにかかった。
妖怪はこれを防ごうとしたがもう遅い、グレンの忍刀は空気を切る速さでそいつの左腕を斬った!
「アッアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
左腕を斬られた妖怪は苦痛に耐えきれずサイレンのような断末魔を上げる。だがグレンは容赦しなかった。
今度は左目を突き失明を負わせると喉元に強く蹴りを入れ飛ばした。
情け容赦のない攻撃を受けたカマイタチは地面に這いつくばるように倒れ、喉元に蹴りを入れた影響で呼吸をするのが困難になり立ち上がることが出来ず一呼吸するのがやっとだ。
カマイタチの方にグレンがゆっくりと近づいてくる。1歩、1歩と歩き進んでくるグレンにカマイタチは死を感じた。
その途中カマイタチの傍に突如と、赤い着物を纏いそれと同じ色の仮面を被った人間のような白キツネが現れ、こちらに体を向いた。
そのキツネを見たグレンは動揺してそいつの名を発した。
「赤エリ!!」
赤エリというキツネは女性のような声で嬉しそうに挨拶した。
「やあグレン、この世界でも逢えるとは思ってもいなかったよ、ワタシは今君に逢えて心がとてもときめいているよ」
赤エリの存在を確認したグレンはこの世界たちに転移した妖怪たちが何者なのか確信した。
「バケノシュウは、お前らはあの時封印されたはずた、何故この世界に!?」
「フフッこの世界でワタシたちバケノシュウを必要としてる奴がいてねぇ、そいつに封印を解いてもらって転移してきたのさ」
「お前らを解いたのは何処のどいつだ答えろ!!」
グレンは赤エリの返事に怒りがこみ上げ、怒鳴り散らすように封印を解いた張本人を追い求めた。
そんなグレンの物言いに赤エリは動じることはなく淡々と返してきた。
「そこまで答えることはできないよ、でももう一度ワタシと1つになってくれれば答えれるけどね」
「ふざけるな!」
グレンに自分の要求を断れた赤エリは深くため息をし、倒れているカマイタチを担ぎ。
「それじゃあ彼を連れておいたするよ、もう一度彼らの相手をしてくれ」
赤エリはそう言うとグレンの前に複数の人形をした影出した。
影は段々と見覚えのある姿へと変わり完成すると実体化した。
実体化した影はこグレンがこの世界で最初に闘い倒した妖怪たちになったのだ。
恐らく反魂の術か何かで再生させ傀儡化したのだろう、グレンは軽く推測をするが数は倒した15体全てだ。
再生妖怪たちは壁のように間を遮ると赤エリは闇の空間を造り、弱まったカマイタチを連れて闇に入り退散した。
赤エリたちを逃してしまったグレンは次は目の前にいる再生妖怪たちと相手しなくちゃいけない。
彼は刀を構え、迎えようとしたその瞬間!
妖怪たちの頭上から突如と雷や竜巻、炎が同時に滝のように降り注いできた。
それを浴びた妖怪たちは悲鳴を上げるも降ってきた雷などの音に遮られ、後がたもなく消滅した。
呆気取られたグレンは傍観してしまう。すると後ろから男の声がした。
「よっしゃあ、運良く間に合ったぜ!お前もこのへんてこりんな世界に来ちまったんだなっグレン」
喋り方からするにさっきの技を出したのはこの男だろう、自分の背後を取られたグレンだが男からは危機感を抱いてない。
彼はこの男の声を知っている。かつて人々を護るため共に戦った盟友の1人の声だ。
グレンは嬉しさを隠して平静さを装うも隠し切れず男の方に振り向いて応える。
「逆に間に合ってないよ、助かったよハヤテ」
全身がマゼンタで顔の半分を埋めている獲物を睨むようなエメラルドグリーンの複眼を持ち、羽織のような黒い甲冑を身に纏ったニンジャがいた。
そのハヤテはグレンに詰め寄りこの惨状に問いだした。
「おいグレンこれは何なんだ!?邪気を感じたから駆けつけてみたら大量の妖怪にこの状況、俺たち意外にどれぐらい妖怪がーーーーーー」
「話しは後にしよう、お前に会わせたい人がいるんだ付いてきてくれ」
「ーーーーーーわあかった、ひとまずここから立ち去ろうぜ!」
「そうだね」
グレンの指示に従うハヤテは彼が建物の屋根に跳びながら移動するとその後を追って2人はこの場から去った。
戦いが終わり静寂が訪れたこの場は、血生臭い惨劇と悲劇しか残らなかった。