第3話 神様との出会い
彼女の視線は明らかに俺に向けられているものだ。
俺は思いきって声をかけてみた。
「俺、ですか?」
すると彼女はニコッと笑い返答する。
「そう、君!」
やっぱりそうだ。この人は俺のことが見えている。
この人は今俺と会話したんだ。
誰かとまともに話したのは2ヵ月ぶりくらいか。少し泣けてくる。
「もう一度聞こう、君はこんなところで何をしているんだい?」
彼女の二度目の質問に、俺は勢いよく答えた。
「寝てました!」
「な、何故こんなところで寝るの?」
「何故って、それは、住む家が無いからです」
今度は彼女は目を大きく見開き、口をあんぐりと開け、これでもかと驚いた表情をする。
そりぁそうだ。
こんなヤツ見たら驚くに決まっている。
しばらくの間彼女は黙り込んでいた。
何を考えているのかはわからないけど、改めて見ると可愛らしい女性だ。
黒髪ロングで少しつり目。
胸はまぁまぁある方で、身長は150センチぐらい、かな。
「よし! 決めた!」
静寂を破るように、彼女はかなり大きい声で言った。
「君を私の家に住まわせてあげよう」
え?
いやいやいや
「そんな急に、悪いですよ」
正直住みたくないと言ったら嘘になるが、今会ったばかりの人のお世話になる訳にもいかない。
「いいからいいから」
彼女は強引に俺の腕を掴むと、無理矢理引っ張って行こうとした。
「あっ、ちょ、待っ」
凄い力だ。抗えない。
こうして俺は為す術もなく、路地裏から引っ張り出された。
そのまま夜でも賑わっている大通りに出た。
彼女は俺の腕を掴んだまま大通りを真っ直ぐ歩き続けている。
そして、いきなり俺の顔を見て言った。
「自己紹介がまだだったね、私はレア。君は?」
「俺は井藤尚弥です」
「そうかそうか、ナオヤ君だね、よろしく!」
「はい......」
そうこうしているうちに、俺達は大きなお屋敷の前まで来ていた。
このお屋敷は知っている。
町を探索している時に見つけて、あまりにも立派だったので覚えていた。
「着いたよ」
え?
彼女の放った言葉の意味を理解できなかった。
「ここが私の家だ」
このお屋敷が、レアさんの......
俺は目を大きく見開き、口をあんぐりと開け、これでもかと驚いた表情をしてしまう。
「レアさんは一体何者なんですか?」
思わず聞いていた。
こんなところに暮らしている人が何者なのか、気になってしまうのは当然のことだろう。
「私はまぁ、一応神をやっている者、かな」
俺は驚いた表情のまま、しばらくその場に立ち尽くしていた。
だっていきなり神様なんて言うから......
この日、井藤尚弥は神と出会った。