第1話 ありきたりな異世界転移
今日から毎日更新していきます。
1~4話までは今日投稿します。
疲れた。
本当に疲れた。
毎日毎日会社に行って、上司にこき使われて、頑張ってもダメ出ししかされない。
日曜日は休みだけど、会社の資料をまとめる作業で1日の大半が消費される。
「死にてぇ......」
井藤尚弥は自分の部屋の天井を見つめながら呟く。
でもそんなことをする覚悟もないから、明日に備えて寝ることにした。
布団をかぶり、目を閉じる。
だんだん意識が薄れてゆく。
あれ?
ちょっと寒い......
俺はそう思い、ゆっくり目を開けた。
「どこだよ、ここ?」
そこは俺の住んでいるアパートの小さい部屋などではなかった。
俺を暖めてくれていたボロボロの布団もない。
どうやら俺は地面に寝転んでいるらしい。
体を起こし周りの景色をマジマジと見ると、石造りの建物が多く建ち並んでいることが分かる。
俺の近くには大きな噴水がズッシリと構えていた。
一番驚いたのは、目の前にドワーフみたいな生き物が立っていることだ。
こんなの漫画やアニメでしか見たことがない。
2体いる。
楽しそうにお喋りしてやがる。
「最近魚の値段が上がってきてるのよ」
「そうだな、ここのところずっと不漁だって聞くからな」
日本語だ。
日本語を器用に使って話している。
一体何が起こっているんだ。
ふと空を見上げると、赤い色をしたドラゴンが飛んでいた。
わかったぞ。
「俺、異世界に来たんだ!」
現実から解放された気がして、つい叫んでしまう。
これから俺の楽しい冒険が始まる、そんな気がした。
この日、井藤尚弥は異世界転移を果たした。