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転生・婚約破棄物語~悪役令嬢は何度でも繰り返縺吶?ゅ≠縺ョ螟懊r雜翫∴繧九◆繧√↓?

作者: ノシ棒

私の名前はアンナ。

乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢だ。

悪役令嬢は婚約破棄をされて死ぬ。追放されて死ぬ。

悪漢に乱暴にされて、魔王復活の生贄にされて、あらゆる責め苦にまみれて死ぬ。

まるで、悪役令嬢にはお似合いの末路だと言わんばかりに。

悪役令嬢に生存ルートは存在しない。

逃れられぬ死の運命。だから。

今日も私は、世界そのものと戦っている。

チートを使いながら私は。


あっ。







□~繧キ繝シ繝ウ霆「謠~□







目を覚ますと、そこは今日もまた乙女ゲームの世界だった。


「チュートリアルを始めるよ! 髪型を決めるね! すきな、ほうを、えらんでね! 私は神だ」


「・・・あ゛あ゛~」


地獄の底から響くような酒焼けした声で返事をする少女。

アンナである。

酒瓶が転がるベッドからよろめきながら這い出して、少女が出してはいけない声を発しながら、酒臭いゲップをかます。

昨夜は深酒をしすぎたようだ。


「あ゛あ゛~・・・ランダムで・・・」


「わあ~! かっわいい~! 私は神だ」


「空調ガンガンにかけた部屋でカップ焼きそばに唐揚げにビール。ヒロインだったらこんな食生活アウトよね。悪役令嬢万歳。あ~迎えワインうめ~」


「次は、ひとみのいろを、すきな、ほうを、えらんでね! 私は神だ」


「な~にが神じゃ私は悪役令嬢だっつーの・・・はいスキップスキップ」


スキップ、とアンナが繰り返すと自称神がスッと消える。神域も消え、見慣れたアンナの歪んだ部屋へと戻った。

自称神は、首から上は厳めしい威厳たっぷりのヒゲをたくわえた老人だったが、首から下は葉で隠しただけのきわどい恰好をした少女の身体だった。

ゲーム開始時、キャラメイクから操作方法を教えてくれる『チュートリアル妖精』と、『この世界の神』が融合した姿である。

アンナは知っている。

この世界に神などいないと。


「初期能力値、設定、体力を99から1にして、そしたらもっかい99に」


アンナの『たいりょく』がオーバーフローし9999になる。

その他全ての能力値も同様に。

毎朝行われるポイントの割り振り判定を操作することによって、アンナは事実上無敵の存在へと自分を『ステ振り』したのだ。

そう、ここは『乙女ゲームの世界』。

全てが数字て決定づけられる世界だった。

ここは現実だ。ゲームの世界じゃない。そう考えていたのも今は昔。

最大値が99に設定されているゲームでこれは酷い。

ゲーム性の破壊もいいとこである。


「所持金も半額孤児院に寄付して、そしたらもう半額また同じとこに寄付して、また半分も・・・残った端数は後で高笑いしながらそこらにばら撒くから置いといて」


アンナの視線と指先が宙を彷徨う。何かを操作したかのようだ。

瞬間、アンナの服が豪奢なドレスへと変化した。金の髪も美しい巻き髪へと。

アンナは全てを知っている。

この世界が『乙女ゲーム』の世界であると。

アンナが悪役令嬢に転生する以前、寝食を忘れるほどにやり込みまくったゲームだ。

アンナは全てを知っている。知っているのだ。

そう、このゲームの抜け道……『チート』の方法も。


「ッア~! 二日酔いにはこれよね~」


スッキリとした顔になったアンナ。

腰に手を当て一気飲みしたビンの中身は、死人すら蘇ると言われる霊薬エリクサーである。

もちろん、アンナが持てる知識を総動員して増やしたものだ。

チートと言えば聞こえは悪いが、しかしこれは『仕様』……開発元がシナリオを楽しんでくださいと修正を放り投げた『仕様』なのだ。

正確にはグリッチだろうか。相応の手順と努力を駆使してのチートである。

その結果がご覧のあり様だよ。


「・・・エリクサーで治らないかしらね、この世界も」


残念、仕様です。

これが現実。エリクサーでも治らない。現実です。

もう何度も試した。


「アンッ!ナー↓アーーッ↑」


「まあ、王子様」


二段ジャンプを駆使しなければ辿り付けないアンナの部屋へと、バーン、と扉を叩き開いて突入する美少年。

王子である。

酒焼けした喉などエリクサーで全回復した。甘い声をあげながら、ウットリとした顔でアンナは王子の顔を見つめる。

というか顔しか見たくなかった。顔はいいのだ。顔だけは。

上半身は、バーン、と扉を開いた時に異様に伸びた右腕が垂れ下がり、下半身は超速で足踏みするあまりに漫画のあれだ、ダッシュするときのぐるぐる足のようになっていた。

これらを無視すれば、という条件が付くキラキラした理想の王子様だった。

無視しなくてはいけない部分が大きすぎるのが玉に瑕ですね。


「おはようございます。王子さ――――――」


「あなたを暴行罪と器物損壊罪で婚約破棄します!理由はもちろんお分かりですね?

 あなたが皆をこんな嘘で騙し、セーラをいじめたからです!

 覚悟の準備をしておいて下さい。ちかいうちに追放します。裁判も起こします。裁判所にも問答無用できてもらいます。

 慰謝料の準備もしておいて下さい!貴方は犯罪者です!処刑所にぶち込まれる楽しみにしておいて下さい!いいですね!」


「ああ、今日のフラグは婚約破棄ルートの日ですか・・・」


セーラとはヒロインの名だが、これ以降触れることはないので説明しなくてもいいだろう。

力強く異様に伸びた右腕で指さしてくる美少年。

ノック無しで部屋に踏み込んで来て第一声がこれ。

ほとんど毎日がこんなノリ。

悪役令嬢の婚約者であった王子は、アンナの運命改変の試みの余波をモロに受けていた。

『フラグ』管理が滅茶苦茶になり、いつどこでどんな態度と台詞が飛び出すかわからないガチャ人間になってしまったのだった。

今日は婚約破棄ルートのクライマックスの日らしい。


「俺は強い!つよぉぉぉおおおおおおんごおおおおおおいいいンゴぉぉぉぉ」


「おはようございます。騎士だ――――――」


顔面があり得ないくらいに伸び縮みして崩壊している騎士団長の息子がエントリー。

言語も溶けてきて崩壊していてまともに会話ができない。

元から会話ができるキャラがそもそもいないが。

ここから半日をかけてンゴしかしゃべれないゴリラになっていく。


「「キャピピキュピピゲッターン!」」


「おは――――――」


わんぱく天然元気系が過ぎて肉眼では捉えられない現象そのものになった双子があらわれた。

なんか、なんかこう、なにこれ。風車みたいな。回転する物体。西部劇のあれ。

これが空中を浮いていて滑るようにして移動する。

正直怖い。夜中に目撃なんてしたら夢に見そう。

ていうか見た。

デフォルトで空中移動である。


「シリカーラでルンバ。魔法は」


「お・・・・・・」


魔王の息子だが身分を隠して魔術師見習いをしている闇の貴公子だ。

両手にはバスターソードを装備していて、顔面には攻撃力を倍化させる呪われしマスカレードマスク。

剣装備不可のジョブ縛りを越えて物理で殴るスタイルだ。

魔術師バージョンは眼鏡系知的根暗男子。ジョブチェンジしたらイケイケの俺様系黒貴公子。一粒で二回美味しいスタイル。

今は絵が得意そうな雰囲気を醸し出している。

あと魔法ではなくレベルが上がって物理が極まり両手だけにとどまらず第三の装備スロットに無理矢理槍を装備している。

第三の装備スロットはどこかって?

もう少し後で説明するから。


「ボッツッカッツボッボッツカッツ! ドゥドゥドドッチッチドッチチッ! OH-OH-OH-OH-アンナOH-YO-」


「おあああああ――――――」


眼鏡をクイクイしながらボイパとラップを刻みつつ表れたのは宰相の息子。

ブンブン、ハロー。

何故か常に変顔をしているためイケメンと認識できないが、生前のアンナ最推しである。

十数年も変顔を見させ続けられていたら、いい加減ぶん殴りたくなっているが、それでもできない。

どれだけ変顔をしていようが常にボイパをしていようが、アンナは自分自身の矜持を裏切ることができなかった。

推しへの課金惜しむべからず。転生前は身持ちを崩すほどにグッズに注ぎ込んだものだ。

たとえブン殴りたくなる変顔を常にしていようとも、手を上げることはできない。

最推しは、殴れない。

広告収益とかで生計立ててそうでも。


「ああああああ゛あ゛~~~!」


地獄絵図である。

なんでヒロインのところに行かないの。私に付きまとうの。フラグがすり替わったから? 

私ぃ~めだたずにぃ~地味に生きていきたいんですけどぉ~でも周りのメンズがぁ~私は迷惑なのにぃ~ヤンデレみたいな~キャハ☆

転生系の悪役令嬢のパターンなんかだいたいこれでしょ。もしくは婚約破棄からの他国の王族がいきなり登場して私が貰うぞのざまぁパターン。

ええやんけ、私も甘い汁吸いたいって思っちゃだめなんか。

みたいなことしたいなとかほんの少しでも思ったから? その罰ですか神様。

神様ごめんなさい。ああ神様も同類だった。

自分がしでかしたことの大きさに後悔で眠れない夜もありました。そんな時期もありました。

気付いたらヒロインは壁に半分めりこんだオブジェクトになってました。

喜べ、壁尻だよ。


「バグっとりますがーーーーーーー!?」


ここは乙女ゲームの世界。

記憶が戻った幼き頃のアンナは、死にたくないの一点で、自分が出来るあらゆる努力をした。

あらゆる努力をしてしまった。

つまるところ、アイテムの無限増殖やステータス操作・・・『チート』に手を出したのである。

本来NPCであった悪役令嬢が世界にハッキングを仕掛けた結果、世界の歪みが蓄積されていくとも知らずに。

この世界が乙女ゲームの世界だと気付いてから、アンナは悪役令嬢に生存ルートはない? よろしいでは自分で開発するの精神を宿してしまった。

こんな感じでヨチヨチ歩きの頃から、壁にむかって後ろ幅跳びを連続で行うことで移動速度を溜める、などの奇行を繰り返していたアンナ。

10年以上、アンナは努力を続けた。

生存ルートなき自分が生き延びる努力を。

シナリオ外へはばたく努力を。

世界を改変する努力を。

そして気付けば、世界はどうしようもなく歪んでしまっていた。

ある意味、アンナの努力が実ったのだ。実ってしまったのである。

わかりやすく説明するならば。

ここは、どうしようもなく『バグって』しまった、乙女ゲームの世界である。







□~繧キ繝シ繝ウ霆「謠~□







「悪役令嬢のRTA3分クッキング~はーじまーるよー!さあ今回はエリクサーを最速で作ってみましょう」


「あなたを婚約破棄します!」


「ここに子供の駄賃でも買える薬草各種があります」


「ンゴォォ」


「普通に調合すればただの傷薬にしかならないこれらですが、しかし公式はいいことをしてくれました」


「「スリー、ツー、ワン、GO!シュート!」」


「本来は初心者救済のためのシステムだったんでしょうね。これ、ボタン連打して高速で振ると、青く光り出すんですね」


「もレッソーうだ。魔法が」


「ボッツッカッツボッボッツカッツ! ウイイーーッ!」


「はい、青く光ったものがエリクサーになります。ですが、この高速連打システムを駆使してただの傷薬をエリクサーに精製するには、人間の限界を越えなくてはいけません。

 名人でも無理です。しかしここに抜け道があります。そう、NPC協力システムですね。バディを組んだNPCのすばやさが調合に反映されるんです。

 これ、ゲームをやってる時はどんな調合方法してるんだろうな~なんて思ってはいましたが、現実に目の当たりにすると納得って感じでした。 

 じゃ、さっそく私に張りあうがあまり悪役令嬢アンナのステに比例して自分のステも上がるとかいう裏設定が判明したすばやさ9999になっちゃって下がらない王子に実演してもらいましょう。

 王子の腰に傷薬をくくり付けて。はい、スタート」


「婚約破棄ィイイイイ――――――!」


「はい、衝撃波がすごいですね。華麗なぐるぐる足ありがとうございます。青く光りましたね。これでエリクサーの完成です。

 ちなみにですがぐるぐる足の最低条件はマッハ3、毎秒100回の足踏み速度が必要らしいですね。物理エンジンの動画を見たから間違いありません。あとググりました。

 すばやさ9999はマッハ3。新しい発見ですね。真夜中までなにやってんでしょうね私。

 こうやってね、ふざけてないとね、もたないの。心が」







□~繧キ繝シ繝ウ霆「謠~□







「はい、この闇の貴公子君。実はですね、魔術師なんですが、物理で殴った方が強いんです。さすが魔王の息子さんですね」


「放つぜェス! 俺の魔法!」


「しまってください。本来はジョブチェンジをしなければ近接武器は装備出来ないはずなんですが、そこはチートです。

 第三の装備スロットに槍を装備することによって、武器のジョブ判定をカットすることができるんですね。

 えっ、第三の装備スロットはどこかって? 右手、左手ときたら決まっているでしょう。

 そうですね、下半身です。

 下半身にね、槍を装備させることで・・・えっ、下半身に槍を装備ってどういうことですって?

 挟むんですよ。

 当然でしょう。

 有名な技ですよ。

 というわけでね、はい、せっかくなんで最強の槍を装備させました。させたんですよ。そしたら外せなくなりました。やってしまいましたねえ、これは。

 神殺しの槍とかいう神様まだ生きてるのにチート入手したのを装備させちゃったからでしょうかね。

 そういえば神様もね、システムでした。ていうかこの世界のメインシステムが神様って名乗ってただけなんでしょうかね。哲学ですね」


「ケトル引き締めていけよ!魔法を使うぞ!」


「あそこで物理三倍でドラゴンの群れを虐殺してるのが闇の貴公子君ですね。すごいですね、ロンギヌス。さすが神様殺しの槍。

 即死効果がついてるんですが、即死効果って何っていうと、攻撃力をオーバーフローさせて威力9999を超えさえてるんですね。攻撃力2万らしいです。

 なるほど、こうやって即死効果を疑似再現させてたんですね。たぶんここあたりの数値がステ振りのあれやこれやに関係してるんだと思います。

 彼の下半身はロンギヌス。私がやりました。フフ、笑えませんね」


「ああ・・・本当の俺を見つけた気がする・・・魔法を、解放する・・・」


「魔王の血を受け入れたジョブチェンジの時の台詞・・・やめてこないでロンギヌスをしまって!あっ、外せない!ロンギヌスは外せない!」





□~繧キ繝シ繝ウ霆「謠~□





「みんな・・・力を合わせて、魔王を倒そう!」


「ンゴ!」


「「シェイハシェイシェイハ!」」


「出たぜ!俺の魔法がよォハヨウゴザイ魔王の子!」


「YO-YO-!」


「ああ、今日は魔王討伐ルートの日ですか・・・」


半ばあきらめ顔で、ヒロインの壁から生えた尻にもたれかかりながら、鬱蒼とため息を吐くアンナ。

今やこの尻だけが私を癒してくれる。

毎日がフラグガチャ。魔王討伐ルートはまだマシなルートだ。

一番最悪なのがハーレムルートだ。なんで最悪かって?バグってるからだよ。


「魔王を倒すには伝説の剣が必要だ!」


「魔王を倒すのに伝説の剣が必要だと思っているようですが、別になくても倒せます」


「魔王を倒すには伝説の剣が必要だ!」


「レベルを上げて物理で殴る最強の魔術師の暗黒の貴公子くんがいますから」


「魔王を倒すには伝説の剣が必要だ!」


「たぶん私も素手でいけますけどォ!? なんで! 会話が! 通じないの!」


「魔王を倒すには伝説の剣が必要だ!」


「あ゛あ゛~! 今日は無限ループかよォ~!」


アンナのストレスゲージが高まっていく。

乙女が口にしてはいけない悪態をつきながらヒロインの尻を叩くアンナ。

すばやさ9999とちから9999が奏でるリズム。打つごとに赤色のダメージ表記が上がるヒロイン。フルコンボだドン。

ちなみにヒロインはオブジェクト判定なので破壊不可である。

涙をぬぐってさあ、立ち上がれアンナ。


「クソァァァ! やったらああああ!」


アンナの頭髪が光り輝く。


「チュートリアルモードオオオ!」


「私は神だ」


「髪型変更! ペガサス盛りィア!」


光の中に、物語後半でマップ飛行移動を可能にするペガサスが表れた。

否、ペガサスの豊かな尾がアンナの頭髪と融合している。

『ペガサス』と『ペガサス盛り』を同化処理させた文字列バグである。

アンナwithペガサス盛りモード。

ペガサスがヒヒンと鳴き左右非対称に激しく羽ばたく。

いざゆけアンナ、伝説の剣を探しに。

現時点では物理演算バグでしか入れない魔王の居城へと。


「ぬふぅ!」


たいりょく9999でなければ耐えられないGがアンナの細首に襲い掛かる。

激しく羽ばたくペガサスがアンナの頭髪を引き上げた。

アンナの顔面がタイツを被ったかの如く釣り上がる。

いかにバグった世界であろうと、現実の部分は多少なりと残されている。

であれば、人が空を飛べるのだろうか。

否、飛ぶ。

飛ぶのだ。

悪役令嬢であれば、飛べずしてなんとする。

飛べない悪役令嬢はただの令嬢だ。

飛べ、アンナ。全ての運命を背負い。今ここに。


「あ゛あ゛~!チッキショオオオ!」


悪役令嬢、空へ――――――。







□~繧キ繝シ繝ウ霆「謠~□







「魔王を倒すには伝説の大地のオーブが必要だ!」


「あ゛あ゛~! 髪型変更! モグラ盛りィ!」


「私は神だ・・・」


悪役令嬢、大地へ――――――。







□~繧キ繝シ繝ウ霆「謠~□







「魔王を倒すには伝説の龍の吐息で編んだ海のベールが必要だ!」


「はいはい髪型変更ね! ドルフィン盛り!」


「私は神だった」


悪役令嬢、海へ――――――。







□~繧キ繝シ繝ウ霆「謠~□






たどり着いた魔王城。

ここにくるまでに長い、長い道のりを経た。本当に長い道のりだった。20分くらいかかった。

いつもはワープで移動してるのに、魔王城は転送不可能領域にあるのだ。

ペガサス大活躍である。


「さあこい聖女オオ! オレは四天王のザ・フジ」


「くらえええええ!」


「グアアアア!」


「フフ奴は四天王の中でも最じゃグアアアア!」


「グアアアア!」


「グアアアア!」


はい、四天王イベントスキップ。


「おむにあわにたす、おむにあわにたす、おむにおむにおむに」


アンナが一心に唱えるのは狂ったからではない。バグってはいるが。

武術のマーシャルアーツレベルを最大値まで引き上げると覚える最強必殺技。

これを駆使した高速移動歩法である。

後ろ向きにファイティングポーズを取りながらすべるように移動するアンナ。

残像が画像バグで残り続けている。

それを鏡代わりにみながら盛りで乱れた髪をなおす余裕。これくらいのバグはもう慣れた。


「ほう、懲りずにまたやってきたか」


まおう が あらわれた!


顔面が真っ黒に塗りつぶされた魔王である。

子持ちバツイチのイケオジとしてその界隈では有名だった本作の魔王だが、顔面黒塗りではただただ不気味なだけである。

ローブをまとった姿は、真っ黒な顔の部分にだけ大きな穴があいているかのよう。

アンナの体が硬直する。強制イベントムービーである。

こればかりはスキップできない。


「ようこそ、世界に変革をもたらす者よ、人の軛を外れしものよ」


「オラアアア!魔王オラアアア!何回目だと思っとるんじゃオラアアアア!」


「くり返す度、ほんの少しずつずれていく・・・世界が歪むとも知らず、お前は何故あがくのか」


「イベントムービー長いんだよオラアアアア!スキップさせろやオラアアア!」


「この世界に勇者などおらぬ・・・私は魔王とはならぬ」


「ぶっ飛ばしたらあよ!ぶっ飛ばさしたらあよおおおお!」


「もうたくさんだ。だから貴公も、もう休むがよい」


「うおおおおチュートリアルウウウウウ!」


アンナの頭髪が光り輝く。

いななき声。

ペガサスフォームだ。


「神でした・・・」


「何故もがき生きるのか。滅びこそ我が喜び」


「うるっさああああェオア!何度でも滅ぼしたらあよおおお!」


「滅びとは、静かに眠ることよな・・・貴公ももう、ゆっくりと眠るがよい」


「うおおおペガサスフォームッッ!」


アンナの両手がペガサス座の軌跡をなぞる。

ペガサスの羽ばたき。

縦に引き伸ばされるアンナ。


「ウオオオいくぞオオオ!」


「何度でも来るがよい。貴公が眠りに就くまで・・・終わらぬ悪夢が終わるまで」


「くらえチート神拳最終奥義イイイ!」


悪役令嬢、空へ・・・否。

悪役令嬢、宙へ――――――!


「選択プレゼントつ無!」


説明しよう。

選択プレゼントつ無、とはNPCへのプレゼント機能を使用し、相手に無を送り付けることである。

そしてチート神拳最終奥義とは、選択プレゼントつ無を連打することによって、無を送り続けることである。

無ってなんだろう。怖い。

その結果、フリースロットを無で埋め尽くされたNPCはHPを喪失し、『しぼう』する。

アンナが宙から生身にて大気圏へと突入。

赤く全身を燃え上がらせ、今。

魔王へと無をプレゼントする。

拳で。


「偽りの虚無に眠ろう・・・汚れた夜明けがくるまで」


魔王が無に呑まれ消えていく。

最終戦、魔王が実は世界の調停者であった真実が明かされる、驚愕の台詞を口にしながら。

アンナも涙なしには見られなかったシーンだ。

消えていく魔王を見ながらアンナの目には涙があふれていた。


「決着ゥゥーーーッ!」


天高く突き上げられる右手。

その手は無を運ぶための右手ではない。勝利を掲げる、そのための右手なのだと。


「ッラアアアイ!魔王討伐RTA新記録達成ィィイア!」


違った。

心を保つために自分ルールで何かのチャレンジをしていたアンナだった。


「あ゛あ゛~!何度くり返させられるのよおおおお!もおおおお!」


明日の朝にはフラグバグで復活している魔王だった。

たぶん明後日くらいにはまた魔王討伐ルートが始まるだろう。


「エンディングだよ、泣けよ。ですわ」


壮大なBGMと共にスタッフロールが流れていく、気がする。

この辺りは現実の世界仕様である。BGMなど聞こえないし、スタッフロールなどもってのほか。

しかしアンナには見えていた。

寝食を忘れてのめり込んだゲームだ。

スタッフ一人一人の名前を今でも暗記している。

アンナの脳裏には、Finの文字が流れ着いていた。

魔王は討伐され、こうして世界は救われたのであった。

しかし、アンナの戦いは続く。


ヒロインをオブジェクト化し、自分がヒロインのフラグ管理位置に潜り込むことには成功した。

しかしアンナがアンナである以上、悪役令嬢の運命からは逃れられない。

ペガサスとペガサス盛りのように、悪役令嬢がヒロインの皮を被ったとて、悪役令嬢のままであるのだ。

アンナの挑戦は続く。

闘え、アンナ。

世界そのものと。

チートを使って。

アンナの挑戦は今日も続縺上?ゅ>縺?刈貂幄ォヲ繧√※縺励∪縺医?縺?>繧ゅ?繧偵?





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縺ゅ≠縲∵擂荳悶′逕ィ諢上&繧後※縺?◆縺?縺代?∝ケク縺帙□繧阪≧?







□~繧ィ繝斐Ο繝シ繧ー~□







「私は神だ。ずっとお前のことを見ていたぞ。さあ、お前の願いをかなえよう」


「ン!?はっ、えっ!?新イベント!?今までなかったのに、なんで!?」


「ほう、お前は愛に生きたいのかね。よかろう、お前たちの仲を神の名において祝福しよう」


「これ・・・二人の間にある愛の障害を神様が解決してあげるよイベント、デウスエクスマキナイベじゃない!」


「さあ、お前は誰と結ばれたいのか。その名を告げるがよい」


「略してデマイベじゃん!強制的に誰のエンディングになるか選ばされるやつ、複数キャラが好感度横並びの時にしか発生しない、同時攻略の詰みポイント!

 いや、同時攻略どころかハーレムエンドも目指してないんですけど!私はただ生きたかっただけで!」


「さあ、お前は誰と結ばれたいのか。その名を告げるがよい」


「これも無限ループかよオオオ!落ち着け、落ち着け私・・・どうせ明日には全部元通りになってる!」


「ホッホ、お前に愛を捧げんとする男は、二人いるようじゃ」


「あなたを婚約破棄です!」


「王子!」


「ウンウン、これもまた魔法だね」


「闇の貴公子!」


「ホッホ、他の男たちはお前を祝福すると言うておるぞ」


「ンゴ!」


「「ステーッステーッ!」」


「DO-IT!ボッツ!カッツ!チッチッ!」


「みんな!」


「ホッホ、お前に愛を捧げんとする男は、二人いるようじゃ」


「もういいよ!もしかしてエンディングまで続くのこれ!?結婚式から出産までスチル絵みせられるやつ・・・嘘でしょ!?

 今回は速攻で魔王倒しちゃったから・・・民衆の怒りの矛先が魔物じゃなくて貴族に向いて広場に吊るされるエンドじゃないの!?

 神輿でワッショイワッショイされるんじゃなかったの!?」


「私は神だ。すきな、ほうを、えらんでね!」


「んがあああああ!変なとこで現実が残ってるこの世界なら、出産の前には当然、イヤアアアアア!」


「婚約破棄婚約破棄さっさと婚約破棄」


「受け止めて、俺の魔法」


「王子のマッハ3か・・・闇の貴公子の下半身攻撃力2万か・・・!?」


「DO-ッチ! ドッドッチ! DO-ッチ、ダイ! Hey!」


「あ、ああああああああああ゛あ゛~~~!!!!」


悪役令嬢、宙へ――――――!








設定

チートってよく言うけどチートなら使い続けたらどっかでバグるよね!

あと神と魔王にはくり返す世界とバグに対する認識があります。


さてさて。

お久しぶりでございます。

逆立ちしてもネタがまったく浮かばず、最近は筆を半分置きつつあります。

もっと文才が欲しい・・・センスある文章が書けるようになりたいです。

笑えるような文章が書きたいなあ。うーーん難しい。

それでは、ここまで読んでいただけた皆さま方へ。

ありがとうございました。

また、どこかで。

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― 新着の感想 ―
[良い点] みゃーうちです。ノシ棒さんのペースで良いので、気長に待ってます。あと、とうとうこちらも書き始めました。
[一言] 昔から応援してます!無理ないペースで今後も執筆がんばってください!
[一言] ………昔の人は言いました。 『チート』駄目、絶対。 よゐこのみんなはぼくとの約束を守りましょう。
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