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とおのものがたり  作者: 新兎和真
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マヨヒガ(迷い家)

マヨヒガ(迷い家)



遠野では山道などで急に見たことのない豪邸が現れるという。


この家に入って誰も居らず(気配だけはあるという)家の何かを持ち帰ると、その家は栄えるといわれている。


この家を「マヨヒガ」と呼ぶ。






マヨヒガ 其の一


さて、小国村の三浦家は村一番のお金持ちだが、今から二、三代前まではまだ家が貧しく、少し頭の弱い妻がいたという。


この少し頭の弱い妻が、ある日蕗を小川で採っていると、いいものがなかったので探すうちにどんどん谷奥に入って行った。





ふと見てみると目の前に立派な黒い門の家があった。


門から中に入ると大きな庭に立派な黒い門の家があった。


門から中に入ると大きな庭に紅白の花が一面に咲き、鶏が遊んでいた。


その庭の裏に回れば、牛小屋があって牛が沢山いる。

馬屋もあって、やはり馬も沢山いたが、どこにも人がいない。


ついに玄関から上がってみたが、次の部屋には朱色と黒色の膳やお椀が沢山出されている。


奥の座敷には火鉢があって、鉄瓶の中に入ったお湯が沸騰していた。


しかし、人影がない。


「もしかすると、ここは山男の住処かもしれない」と思い、急に恐ろしくなって家に逃げ帰った。


家に帰って人に話してみたけれど、誰も信じない。




ある日、自分の家のカド(家の前を流れる川の岸に水を汲み、物を洗う各家ごとに設けた川戸)で洗い物をしていると、川上から赤いお椀が流れてきた。



あまりに綺麗なお椀だったので拾ったが、

「拾ったものを食器に使うなんて、汚い!」

と人から言われるのではないかと思い、米や稗を入れる箱の中に入れて米や稗を量る器として使った。


すると不思議なことに、このお椀で量り始めてから米も稗も一向になくならない。


家の者が怪しんで問いただしたので、妻は事の次第を語った。


それからこの家は、どんどん裕福になっていった。


マヨヒガは見た人に何か授けるために現れると言う。

この女の場合は無欲で何もとらずに帰ったのでお椀が自分から流れてきたらしい。





マヨヒガ 其の二


金沢村は白望の麓にあって山奥の為、人の往来がほぼない。


六、七年前にこの村から栃内村の山崎という家が婿養子を取った。


その婿養子に入った婿が、実家に帰ろうとしていたところ、マヨヒガに行き当たった。


隅から隅まで話に聞いていた通りで、誰もいないはずなのに、どこか便所のあたりにも人が立っていそうな気がした。


恐ろしくなって、その男は何もとらずに引き返して小国村に出た。


そのあと、婿に入った山崎のほうで「」と婿を急き立てて婿がマヨヒガを見たというところを探してみたけれど、見つからなかった。


結局、その婿も金持ちにはならなかった。


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