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96回目 浪費と消耗の果てに

 いつ終わるのか分からないような戦闘が続いていた。

 集積してあった物資は次々に無くなっていく。

 その間にも後方から物資は輸送されてくるが、消費される速度はそれを上回る。

 それでも敵の数は減る事はなく、勢いを保っていた。

 拠点で戦ってる者達からはそう見えていた。



 実際には敵も大きく消耗していた。

 敵を撃破するでもなく、戦線を突破するでもなく。

 やってる事と言ったら、無駄に消耗していくのみ。

 そんな事を繰り返しているのだから、消耗するのは当たり前である。

 残骸だけを積み重ね、成果は全く上げられていない。

 後続の部隊も段々と途切れていく。

 増産された機械が補充されてはいる。

 これらは完成した直後から前線に向かっていく。

 それは細々とした列を作ってはいた。

 だが、塊のような群を形成する事はない。

 消耗の方が補充を上回っている。

 弾薬が続くならば、人類側がいずれ勝利すると思われた。

 その弾薬が尽きそうなのが問題だったが。



 どちらも問題を抱えていた。

 どちらも有利な部分を持っていた。

 それらが結果を出すまでまだまだ時間がかかる。

 決める要因はどちらも同じ。

 必要なものが切れる事。

 先にそうなるのはどちらなのか。

 単純な消耗戦を行ってる両者にとって、結果を決めるのはそれだけである。



 上空の目はそれをいち早く掴んでいく。

 機械群の最後尾が人類側の陣地へと向かっていく。

 その様子をいち早くとらえていた。

 それを見た司令部は、形勢を悟った。

 残りの弾薬と、現在稼働してる兵力。

 大雑把に示されるそれらと、概算される敵の残存兵力。

 照らし合わせれば結果は見えてくる。

 それを見た司令部の者達は、一様に安堵の息を吐いた。



『攻撃を仕掛けてきた敵兵力は尽きかけている』

 この通信が入ったのは、司令部が空からの偵察結果を見てから程なくである。

 それを聞いた者の反応は様々である。

 すぐに信じて喜んだ者。

 本当かどうか分からないが、とりあえず朗報と思った者。

 この逆に、自分が確認出来てないから、まだ信じなかった者。

 上層部が景気づけに流す嘘や出鱈目の類だろうと信じなかった者。

 他にも大小様々な思いを誰もが抱いた。

 それでも共通するのは、この状況がさっさと終わって欲しいという思いだけだった。



 結果はそれから幾らか時間が経過してから訪れた。

 尽きることなくあらわれてきた敵の姿が消えた。

 散発的に出て来る物もいたが、それらは攻勢と言えるほど大規模なものではなかった。

 途切れる事無く後続もやってくるが、それらは脅威と言えるものでは無くなっている。

 対処可能な範囲で襲ってくるので、もはや標的と言ってもよい。

 放置は出来ないが、気を張る必要もない。



「終わったみたいだな」

 タクヤの呟きに、周りの者達も頷いていく。

「ドローンを飛ばしてくれ、念のために」

「偵察ですか?」

「そうだ。

 状況を確かめておかないと」

「そうっすね」

 そう言って部下がドローンを取り出し、空に飛ばしていく。

 そこから送られて来る画像を確かめる。

「……いないな」

「いないですね」

「いないっすね」

「消えたんですかね」

 全員、カメラがとらえた様子を見て同じ事を口にする。

 敵がいないという、率直な事実を。

「終わったのか?」

「たぶん、終わったんですね」

「敵は消えたみたいです」

 口にして彼等も実感していく。

「終わったんだな……」

 まだ幾らかやってきているが、先ほどまでのような強烈な勢いはない。

 この先どうなるかは分からないが、とりあえず敵を撃退する事は出来た。

 それだけは確かである。

 それが分かった瞬間に、タクヤ達はその場にへたり込んだ。

 喜びも消耗感もない。

 ただただ疲れによって何も考えられず、これっぽっちも動けなくなった。

 命を失う事無く今回を乗り切る事が出来た。

 その事実だけを感じていく。

「……助かった」

 短い言葉が感じてる全てを表現していた。

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おまえら、教えやがれ
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  ↓
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/479725667.html

『ピクシブのブースを使ってるので、その事を伝えておかねば』
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/477601321.html

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