95回目 最終防衛線からの一斉攻撃
最終防衛線に到達した敵は、当初の半分近くまで減っていた。
それが幾重にも張り巡らせた防衛線がもたらした成果である。
それでもまだ大量に残ってる機械群の大半は、隙間が無いほど密集して防衛拠点へと向かってくる。
観測の為にあげられたドローンや、上空を飛んでる偵察機がその様子をとらえている。
長く延びた長大な機械の列。
金属の光沢を放つそれは、遠目には帯のように一つに見えた。
あるいは、雪崩を打つ石や岩の流れのようでもあった。
その流れを向かえ撃ったのは、備えられた長距離砲だった。
号令と共に放たれた155ミリの榴弾は、接近してくる敵の中に次々と着弾していく。
それと同時に放たれた金属片が周囲に飛び散り、敵を巻き込んでいく。
最大で数百メートルにも飛び散るそれらは、多くの敵を巻き込んでいった。
金属で出来た体を持ってるとはいえ、装甲ほどの強度を持たない敵は、それで破壊されていった。
更に近づいてきた敵には、迫撃砲による砲撃が打ち出される。
飛距離も一発当たりの威力も長距離砲のものに劣る迫撃砲弾だが、その分連射には優れる。
次々に繰り出される迫撃砲弾は間断無く攻め込んでくる敵の列に穴を空けていく。
それでも機械の群は恐れる事無く突っ込んでくる。
だが、防衛部隊にかかる圧力は確実に減っている。
敵の先頭が陣取る機銃座や装甲車などの列の前に迫っていく。
距離は一〇〇〇メートルを切る。
その瞬間に、待機していた装甲車の機関砲が火を噴いた。
35ミリ機関砲は充分に引き込んだ敵を容易く貫通していく。
数台をまとめて破壊する砲弾は、そこに残骸の山を作り出していった。
それでも全ての敵をとらえる事が出来るわけではない。
射撃を逃れた物達が続々と迫ってくる。
その距離が五〇〇メートルを切り、更にその半分に到達しようとした。
12.7ミリの機関銃弾が放たれていく。
車載や自動機銃座に使われてるそれらは、期間砲弾を逃れた敵を次々に破壊していった。
機関砲よりも遙かに多いそれらは、防衛陣地のあちこちから攻撃を加えていく。
残った多くの敵がこれにやられていった。
それでも運良く生き延びた物もいるが、数は大きく減っている。
そして、まだ生き残る事が出来た敵にも、容赦のない攻撃が降り注ぐ。
防衛部隊の最前列が陣取る場所まで一〇〇メートルを切った頃。
最後の攻撃が開始された。
歩兵銃を持つ者達が接近する残り少ない敵を狙う。
7ミリ口径の銃弾は、金属の表皮を撃ち抜き、内部構造を破壊していく。
射程や威力で他の兵器に劣る歩兵銃だが、それでもここまで接近した敵にならば充分な効果を発揮する。
陣地の前には屑鉄の山が作られていった。
とはいえ、それが何時までも続くわけでもない。
弾薬が切れれば攻撃は途切れる。
そうならないように後方にある物資の集積所から弾薬が運ばれていく。
場所によっては交代の車輌や人員と代わっていく。
疲労した者に少しでも休息を与えるため。
そして、砲身などを冷却するために。
ある程度射撃を行った砲身や銃身は使いものにならなくなる。
熱を持つのも良いものではない。
これらに対処するために、砲身や銃身を交換、あるいは冷却する必要がある。
その為に一旦後方に下がる必要があった。
戦闘を続けるためにこうした交代や休憩が必要になる。
その瞬間、わずかに攻撃がゆるむ。
敵はその瞬間に接近し、拠点に危機を与えていく。
大体においてそれは未然に阻止されるのだが、何かの拍子に一気に突破されかねない。
怖いのは、途切れが一瞬で終わらなかった場合だ。
何らかの理由で補給が途切れる。
交代が上手くいかない。
思わぬ故障が発生する。
人が本当に簡単な失敗をおかしてしまう。
そうした事が大きな問題へと発展してしまう可能性。
それが恐ろしい。
今はまだ発生してないが、いずれ出て来る可能性はあった。




