94回目 第一次防衛線、戦闘開始 3
後方の努力によって、どうにか支えられてる戦線。
そこは迫り来る敵を撃破するために誰もが必死になっていた。
最初に敵と接触し、その後無理する事無く後退してきた第一次防衛線部隊。
それらと合流した次の防衛線部隊は、数を増して敵に対処していく。
単純に増えた砲門の数のおかげで、敵の殲滅速度は各段に上がっていく。
しかし、敵の勢いが止まる事は無い。
後から後から湧いてくる敵に、前線部隊は弾薬を使わされていく。
その消耗具合を後方に報告し、余裕のある段階で後退を開始していく。
そうしながら次の陣地まで下がり、再戦に臨んでいく。
防衛線を後退するごとに、敵の進撃速度は落ちていく。
合流して数を増した事で火力が上昇。
敵に与える打撃力が増した為だ。
単純だが、これにより敵は次々に撃破されていく事になる。
そこかしこに残骸が転び、数も減っていく。
頭上から見れば、人類側の防衛線に近づく度に接触面が削られていくのが分かるだろう。
だが、それも長くは続かない。
後退する毎に必要な弾薬量は増えることが予測されていた。
合流により頭数が増えるのだから当然だ。
その為、拠点に近い陣地・防衛線ほど予備の弾薬なども多く用意されている。
なのだが、敵の勢いが変わらない事も相まって、弾薬はすぐに消耗してしまう。
その瞬間、敵の前面が一気に削られ、空間が発生する。
倒れた敵が多く、その分だけ最前列が消滅するからだ。
同時にその分の弾薬も消えていく。
得られる戦果は大きいが、失ってしまう継続力も大きい。
これが続けばどうなるか。
それを誰もが不安に思っていた。
味方の補給は保つのか?
敵はあとどれくらい残ってるのか?
今はまだ良いが、この先どうなるのか?
誰もがそうした不安を懐いていた。
多少なりとも救いなのは、後退する毎に補給の手間が省ける事だ。
移動距離が減れば、その分だけ楽になる。
わざわざ前線まで物資を運ぶ必要がなくなるのは大きい。
補給線がのびていくのは、戦争において常に大きな問題になる。
この問題が解決されるのは素直にありがたい事だった。
そして、敵の移動距離が長くなる。
補給線がのびていく。
すぐ後ろの生産拠点からの補充部隊が到着するのに時間がかかる。
ほんのわずかであるかもしれないが、その利点もまた大きい。
それだけ敵の勢いがそぎ落とされる事になるのだから。
実際、人類側に向かって侵攻する機械群は確実に減っていっている。
大きな塊は人類側との接点で削られていく。
そして、後続の部分は徐々に途切れていく。
丸い塊だった群はその一部が欠け、欠けた部分が円形に拡大していく。
それを後続の機械群が補おうとして前進する。
そうして全体の形をしぼませていく。
それでもまだ巨大な群を形勢してはいる。
いずれは消えてなくなるが。
人類側の攻撃が途切れる事が無ければ。
しかし、人類側も余裕があるわけではない。
消耗品の増産は続けられてるが、それが届くまでには時間がかかる。
それが尽きたらどうにもならない。
かき集めた兵器もただの鉄くずになる。
そうなる前に敵が潰える事を誰もが願っていた。
それでも後退を余儀なくされる人類側は、最終防衛線まで後退する。
港から離れた位置に築き上げた防衛の為の拠点。
兵器と物資を集めたそこが、人類側の最終防衛線だった。
ここを抜かれたら後はない。
誰もが覚悟をもって迫る敵に備えていった。