91回目 動きがないのは力を蓄えて嵐になるためのようだった 4
侵攻開始とはいえ、すぐに戦闘になるわけではない。
敵は数千キロの彼方にいるので、接触までに時間がかかる。
それまでの間はまだ平穏なものだ。
この間も人類側はひたすらに準備に明け暮れる事になる。
ただし、逼迫感や緊張感は今まで以上だ。
やがてくる敵との戦争を考え、死にものぐるいになっていた。
戦闘が無いまま時間が過ぎていく。
武器や弾薬の運搬は更に続く。
これからの消耗を考えれば、どれだけあっても足りない程だ。
途切れる事が無い程に船やトラックが動いていく。
ある程度形になってきた空港を使い、航空輸送も行われていく。
あらゆる手段を用いてなお、準備はいまだ終わらない。
敵の数を考えれば、どれだけあっても少ない少ないと言えた。
とはいっても、大量にあってもそれを適切に管理出来るわけではない。
単純に置き場所が無ければ、どれだけ物資があっても意味が無い。
実際、最前線の拠点などでは山積みされた物資が、管理がされてるのか分からない状態で置かれていた。
一応、雨除けのテントなどはなされてるが、その程度の対応しかできない状況だった。
しっかりとした倉庫など望むべくもない。
また、棚もほとんど無いので、地面に直接置いてる。
更に、荷物の上に更に荷物を積み上げてしまっている。
おかげで物を取り出すのも一苦労になる。
それでも、置いておける場所がないので、山積みは次々に増えていく。
それを管理する者達も、これではまずいと思うも、他に方法がないのでどうにもならずにいた。
他にも食料の問題なども発生している。
人が増えればそれに合わせて食べる物も必要になる。
運搬する物資の中にしめる割合が増えていく。
その分、他の物資の運搬が減ってしまう。
輸送量を増やせれば良いのだが、トラックや船、飛行機の数が決まってるのでそれも出来ない。
これらの中にしめる食料の割合は、放置出来ない問題になっていく。
ただ、人がいなければ戦力を確保出来ない。
前線における必要な人員は増える一方であり、減らすわけにもいかない。
このため、どうしても一定の比率で食料などを運ばねばならなかった。
生活に必要な他の物資も含めて。
そんな中で、戦闘部隊が敵に向かって進軍していく。
事前に敵を減らす為に展開する者達だ。
拠点に敵がやってくる前に、少しでも減らす為だ。
ある程度切り開かれた道(ほとんどが敵機械が木々を倒した所)を進み、敵を迎撃しにいく。
しかしその数は、敵に比べれば余りにも少ない。
敵を全滅させる必要は無いが、間引きすらもこの数で出来るのかどうか不安になる。
見送る者も出発する者も、等しくそういうった思いを抱きながら出発していく。
あらゆる所で先の見えない不安が渦巻いていた。
それでも、明日の為に誰もが目の前の不安と向かい合っていた。




