90回目 動きがないのは力を蓄えて嵐になるためのようだった 3
そんな忙しい中で、迎撃態勢は確実に増強されていく。
長距離砲などが拠点に運び込まれ、火力の増強がはかられる。
自動機銃座も増設されていく。
拠点そのものも拡大され、所狭しと兵器と物資が置かれていった。
戦闘車両も可能な限り持ち込まれ、前進して駐留していく。
迫って来る敵にはこれらが最初にあたる事になる。
その後は、後退しながら攻撃を加える。
最終的には拠点に合流し、そこで全ての火力を合わせて攻撃を加えていく。
もっとも、上手くいくかは分からない。
相手の数と勢い次第ではこんな事をする余裕すら無くなるかもしれない。
それでもやれる事はやっておかねばならなかった。
出来るだけ遠くで敵を食い止め、本拠地に到達する前に殲滅するために。
そうしてる間にも敵の数は増していく。
衛星で確認される集結してる兵力は、日を追う毎に増大していた。
計測が不能なほどに多く、まさに大地を埋め尽くすが如くという有様だった。
それを見て、本当にこれに勝てるのかという危惧が生まれていく。
最悪、第三大陸からの撤退も視野に入れる必要がある。
いくつかの会社は、業務に支障がない程度の避難を検討していく。
ただ、人が減ればその分現地ので作業効率が落ちる。
それが事前の準備に支障を発生させ、敵の殲滅を不可能にするかもしれなかった。
その為、どうしても避難を優先する事も出来ない。
それでも、最悪の場合に第三大陸から撤退が出来るように、人を乗せて移動出来る手段の用意だけはしていった。
もっとも、敵が港付近まで来たら、全員の避難など不可能である。
やらないよりは良いとはいえ、焼け石に水の対策ではあった。
そんな状態が続いて一ヶ月。
敵の勢力が膨大とか莫大という規模を超えた頃。
敵は一斉に行動を開始していった。
一塊だった機械の群が端から動き出していく。
それはこれまでの侵攻経路をなぞりながら進む。
だが、進みはそれほど早くはない。
邪魔になる木々を伐採しているからだ。
その為、動きはさほど早くはない。
しかし、切り倒されていく木々の数は多い。
信じられないような速度で、伐採された面積が増えていく。
それは、徐々に徐々に侵食を進めていくようにも見えた。
情報は一気に新地道を駆け巡る。
敵、侵攻を開始────。