9回目 別大陸におけるモンスター駆除業務 2
我が身をまずは大事に。
そう言いたくなるのも当然である。
モンスターの襲撃は、それだけ危険なのだ。
昼に比べれば襲撃の頻度は多くはない。
モンスターのほとんどは夜には眠る。
襲ってくるのは、夜行性のものだけで、それほど多いわけではない。
だが、やってきた場合には手間がかかる。
襲ってくるのが夜なので、当然ながら視界が限られてしまう。
夜間に備えて照明は用意されてるが、それらが照らし出す範囲はそれほど大きくは無い。
周辺全部を照らし出すわけでもないので、どうしても対応が遅れる。
動体探知機などが反応してくれればいいが、感知されなかったり、範囲外からやってきたらどうしようもない。
結果として、接近するまで気づかない、という事もある。
防備が完成してない最初の段階においては、この襲撃が一番厄介であった。
堀や土塁でもあれば多少はしのげるが、それすらも無いとなると、接近を阻むものがない。
先に見つけて先に倒す事だけがモンスターに対抗する唯一の手段となってしまう。
その為、どうしても見張りを疎かに出来ない。
これが、防壁が完成するまで続くのだ。
そしてモンスターは、そんな人間側の苦労を汲み取りはしない。
そこに人間がいれば襲ってくる。
タクヤ達はそれを察知するとすぐに銃を構える。
「こっちに来んな!」
叫びながら引き金を引き、モンスターを倒していく。
向けられた探照灯の中で、姿を見せたモンスターが倒されていく。
そんな事が夜の間に3回ほど発生した。
気が抜けない状態のまま夜明けを迎える事となった。
ありがたい事に、作業は順調に進み、土塁と堀は数日で出来上がった。
司令部であり、資材置き場であり、夜間に立て籠もる場所である。
それが出来上がった時、タクヤ達武装警備員は神と作業員に感謝をした。
実際、これが出来上がってからは夜間の警備がかなり楽になった。
一時的にでも接近するモンスターを食い止める事が出来るのは大きい。
何よりありがたかったのは、車の中で寝なくて済む事だった。
安全を考えて、寝る時は出来るだけ車内で、という事になっていた。
だが、キャンピングカーでもなんでもない、戦闘用の車輌がほとんどである。
軽装甲車両もそうだし、いまも使われてる一般車両を改造した武装車輌も寝泊まりは考えてない。
座席の上で寝るというのは、意外と疲れるものだ。
そこから解放されるだけでも大きな成果であった。
とはいえ、まだまだテントに寝泊まりするだけ。
いずれプレハブなども設置されるだろうが、それはまだまだ先である。
それらは事務所などに優先的に回されていくのだから。