86回目 強行偵察 8
目的地に到着してから現場の下見をしていく。
まずは敵の目撃地点へ。
そこを中心にして現在の状況を確かめていく。
衛星軌道からでは見えない部分を確かめるために。
だが、これが一苦労になる。
目撃地点に向かうにしても、簡単に行けるわけではない。
探査も調査もされてない地域である。
衛星軌道からの撮影とそれを元にした地形予想図はある。
だとしても、どうしても見落とす部分も出てくる。
それらが行く手を阻む事もある。
単純なところで言えば、木々の間隔。
この幅が狭くて車輌が通れないというのはざらにある。
また、細かな起伏が車輪による通行を止めてしまう。
しかもこれらが、雑草やら張りだした枝葉によって隠されてしまう。
一目では分からないような障害にぶちあたる事もままある。
こんな当たり前の事が幾つも発生する。
その度に新たな未知を見つける手間をかけねばならない。
これらをこなしながら進むのでどうしても時間がかかる。
苛立ちも積み重なっていく。
地図に障害を書き込みつつ、進んでは戻りを切り返していく。
「やってらんねえな」
そんな声があちこちから上がっていく。
何より怖いのは、敵との遭遇である。
突発的な遭遇による戦闘が今は危険だった。
対処出来ないからではない。
地形がよく分かってないのが問題だった。
撤退にするにしても追撃するにしても、周囲の状態が分からない。
迂闊に動けば足をとられる可能性がある。
そうなった場合、移動手段を失う事になってしまう。
それだけは避けねばならなかった。
何せ拠点からかなり離れてるのだ。
足を使って帰還するなんて不可能に近い。
そんな時に機械の敵やモンスターに遭遇したら目も当てられない。
銃弾があるうちは何とかなるが、それが尽きたら対処方がなくなる。
なので、どうしても慎重になるしかなかった。
今まで何度も繰り返してきた事である。
今更愚痴っても仕方が無い。
なのだが、それでも面倒な作業だ。
タクヤ達も嫌気がさしていく。
それでも目撃地点へと向かい、ゆっくりと進んでいった。
どのみち仕事はやらねばならない。
ここで手を抜くわけにはいかなかった。
逃げるわけにはいかないのはタクヤ達だって分かってる。
仕事をさぼれば、どこかにツケが回っていく。
それが死亡に繋がる事だってありうる。
何より、敵を放置すれば自分達への脅威と成って襲いかかってくる。
避けて通るわけにはいかなかった。
地道な活動をこなして三日。
遭遇したくないものと出くわす。
木々の間に見える敵の姿。
底部から噴出によって浮遊する機械の塊。
その群を見て、タクヤは指示を出す。
「やるぞ」
全員が武器を構えていく。
逃げるわけにはいかない。
敵も向かってきている。
ここで叩かねば、延々と追跡してくるだろう。
それはこれまでの戦闘で判明している。
やるか、やられるか。
この二つしかない。
だったら、やられる前にやるだけだ。
配下が全員武器を構える。
その報を受け、タクヤは短く告げる。
「撃て」
戦闘が始まった。