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71回目 接触、そして

 同じ人類、同じ国の人間がそうやって争い合ってる時。

 来訪者である機械の集団は勢力を更に拡大していった。

 建設された施設も、探索の為に動いてる者達も、より遠くへ、更に広範囲に拡がっていく。

 それをこなす機械群も増大し、拠点は著しく成長している。

 既にそれは拠点や町という規模を超えている。

 都市ですらない。

 機械地帯というのがふさわしいほどの規模になっている。

 何カ所かに集中して設備があるのではない。

 それらのいる地域全てが機械に覆われていて途切れてる部分がない。

 彼等のいる地域や一帯が全て彼等のものとなっていた。



 日をおう毎に増大していくその規模は、観測衛星で状態を確かめてる者達を震えあがらせた。

 そこから上がってくる情報を受け取る者達も同様に。

 とにかく何とかせねばならないという思いだけは誰もが共通していた。

 しかし、有効な手段をうてるわけではない。

 相手に対して何をすればいいのかすら分かってない。

 ただ、増大していく相手におののくばかりであった。



 幸いにも新年度に入り、新社会人も増えていく。

 それらが各産業を支えていく。

 巡り巡って第三大陸の開発にも影響を及ぼしていく。

 社会全体の活性化の恩恵は、あらゆる所に及んでいく。

 実感出来るほどの効果はなかなか感じられないが、それは確かに存在する。

 少なくとも全体を見通す立場の者達は、実際に増加してる業績という形で効果を確かめていた。



 それらが第三大陸にある、現在の最前線での拠点建設を加速させる。

 だが、それ以上に早い速度でやってくる来訪者達の速度には追いつかない。

 それらはすぐそこまで迫っており、遅かれ早かれ接触する事になる。

 事情を知る誰もがそう予想していた。

 この時点で政府は、自ら出向いて来訪者との接触を試みる事にした。



 新地道側も政府のこの動きを察知して、無理矢理同行していった。

 許可をとったわけではない。

 動きがあるのを見て、勝手についていっただけである。

 政府からすればいい迷惑だろう。

 だが、新地道からすれば、何をしでかすのか分からない怖さがある。

 相手と接触をし、そのまま交渉に入り、自分達のあずかり知らぬ所で好き勝手に取り決めをされたらたまらない。

 それが自分らに不利な内容であったら目も当てられない。

 交渉そのものには関われないにしても、政府が何をするのかは見届けねばならなかった。

 でなければ対応が遅れてしまい、取り返しのつかない事態になりかねない。

 それだけはどうあっても避けねばならなかった。



 結果から言えば、この心配は杞憂に終わる。

 拠点から200キロほど離れた地点まで出向いた外交使節は、やってきた機械との接触は果たす。

 しかし、相手は呼びかけを続ける外交使節に向けて攻撃を開始。

 熱噴射や溶けるほどに熱された金属片を浴びせかけてきた。

 これをうけた外交使節は重傷を負うか苦しみながら死んでいった。

 そんな外交使節を機械は取り囲み、乗っていた車輌共々捕獲しようとしていた。

 それを見ていた新地道の者達は、即座に攻撃を開始。

 外交使節に襲いかかった機械を蜂の巣にしていった。

 銃弾は難なく金属の体を貫通し、相手の動きを停止させた。

 この来訪者の登場以来の疑問の一つがこの時解消される。

 金属製の体を持つ事が確認されていらい、銃器で効果があるのかが問題だった。

 今回の一件でこれが解決される事になった。

 全ての存在に効果があるわけではないだろうが、一部には確実に効果があるのだと。



 そして、こんな接触になってしまった事で、新地道は来訪者を敵とみなす事になった。

 こちらの呼びかけにも応じず、即座に攻撃を仕掛けてきたのだ。

 友好的とはとても思えない対応である。

 このような行動に出て来る者達が友好的であるとはとても思えなかった。

 また、意志の疎通が基本的には不可能な事もあり、交渉そのものが成り立たないのもはっきりとした。

 来訪者達がどう動くかにもよるが、新地道はこれらとの共存は不可能と判断するしかなかった。



 そして、この経緯を録画していた新地道は、一部始終をそのまま放映。

 マスコミもネットも用いて行われた発表により、視聴者に事態を理解させる事に成功した。

 トンネルの向こうからやってきた者達は、こちらに襲いかかってくる危険な存在であると。

 これにより新地道では来訪者に対抗していく事が共通の見解になっていった。



 その後、残骸となった来訪者の機械を回収し、研究対象としていく。

 相手の事を知るために、相手の使ってる道具を調べねばならない。

 機械を調査するだけでは相手の全容を知る事は出来ない。

 しかし、相手が使ってる物を知る事で対抗手段を見つける事が出来るかもしれない。

 使ってる技術についてもだ。

 その為に新地道は、残骸を可能な限り回収し、分解と調査を繰り返す事になる。



 なお、外交使節であるが。

 交渉に失敗した彼等のたどった運命は悲惨というしかない。

 外交使節の負った負傷は重く、攻撃を受けた者はほとんどが死亡する事になる。

 即死を免れた者も例外ではない。

 極大な熱噴射機(後に溶接用のバーナーと判明)から熱噴射を受けたのだ。

 それを浮けた部位は黒こげどころか体に穴を開けるほどになっていた。

 溶けるほど熱された金属片(これも溶接用の半田のようなものと後に判明)を受けた者も同じだ。

 攻撃を受けた体には大きな穴が空いてしまい、それを防ぐ手段は無い。

 設備のととのった治療施設にすぐに連れていければ話は別だったかもしれない。

 しかし、まだ設備が充分にととのってない進出先の拠点建造地ではどうしようもない。

 即死を免れた者も、着実にやってくる死から逃れる事は出来なかった。



 ついでではあるが。

 外交使節の護衛をしていた自衛隊であるが、彼等も彼等なりの理由で効果のある対処が出来ずにいた。

 様々な制約がある自衛隊は、相手が何かしら行動に出るまで動く事が出来ない。

 どれほど危険の兆候に気づいても、予防的な行動は許されてない。

 だからこそ、来訪者の機械が外交使節を攻撃するまで、自衛隊は行動する事が出来なかった。

 例えどれ程優れた装備を持っていても、訓練で高い能力を身につけていようとも、それだけでは意味が無い。

 それらを有効活用する運用方法が無ければどうにもならない。

 その運用方法に不備(法律や憲法すらも関わってくる部分)があるのだから、改善が期待出来ない部分だった。

 今回、外交使節が決して助からない重傷を負った。

 そうならないように対応するのが自衛隊ではあるのだが。

 実際には何一つ動く事が出来ずにいた。

 これは彼等の能力が追いつかなかったからではない。

 対応しようにも、そうするための法整備が全くなされてなかったからだ。



 今に至っても自衛隊は『反撃しか許されない』という状態になっている。

 つまり、攻撃されるまでは一切手が出せない。

 先制攻撃などもってのほか、という事になっている。

 このため、相手が目に見える状態で武器を保持していて、それで目の前までやってきても対処が出来ない。

 それこそ、誰かが死ぬまで行動は出来ない。

 そうなってからようやく攻撃が可能となる。

 極論すれば、大挙して押し寄せる、それこそ一気にこちら側を全滅させる程の戦力がいても、対処が出来ない。

 そして、相手がこちらに攻撃を仕掛けてから、つまりは全滅してからようやく次の行動が出来る。

 馬鹿げた話であるが、これが自衛隊がいまだに置かれた状況である。

 今回の場合、このために外交使節(と護衛を担当する自衛隊自身も)が攻撃を受けても一切動く事が出来なかった。

 常識的に考えれば異常であろう。

 だが、自衛隊の対処としては極めて真っ当であり、非の打ち所がない。

 敵が攻撃してくるまで、そうして正当防衛の理由が出来上がるまで自衛隊は行動出来ないのだから。

 加えていうならば、今回の護衛においては、指揮権は外交使節が握っている。

 彼等が防御にしろ攻撃にしろ、指示を出さねば自衛隊としては動きようがない。

 そういう制度になっているのだから、自衛隊としてはどうしようもない。

 もし自衛隊の行動に文句を言うならば、その矛先はそのまま外交使節に向かっていく。

 相手の行動に対して全く何の対処もしなかったのだから。

 指揮権を持たない自衛隊には何の責任もない。

 もとより行動に多大な、それも致命的な制限を受けてる自衛隊である。

 満足な、効果のある行動をとれたかどうかは分からない。

 しかし、ろくに何の行動も出来なかったのは、事前に何の指示も与えてなかった外交使節の責任である。

 その結果、死なずに済んだ者達が無駄に死ぬ事となっていった。



 これらも含めて、新地道の者達はあらためて感じた。

 政府はあてにならないと。

 とっくに見切りはつけていたが、ここに至り、あらためて日本本国には見切りを付けていった。

 すぐにその影響が出る事はないかもしれないが、それが新地道の意志決定における判断基準になった事は間違いない。



 何よりも。

 目の前に明確な危機があらわれた。

 これへの対処を新地道は否応なしに決めていかねばならない。

 既にこれは、

『もしあらわれたらどうしよう』

という仮定の話ではない。

『目の前にいるけどどうしよう』

という現実の話になったのだ。

 そこに曖昧さが入る余地は無い。

 先送りにする事も出来ない。

 今すぐ、この場で全てを決めねばならないのだ。

 それが新地道の今後を決めていく。

 存続か、滅亡かを。

 躊躇ってる暇は無い。

 敵はもう目の前にいて、行動を開始してるのだから。



 この日、異世界において来訪者はあらためて敵として認識される事となった。

 ということで、ここで一区切り。

 次から新章に。



 次章の最初の何回かは、ここまでのまとめみたいな形にする。

 本格的に話が始まるの、実質的な第一章という形になるかと。

 つまり、ここまでの部分は読まなくても大丈夫、という事になってしまう。

 というより、ここまでの部分が無駄に長すぎたと思う。



 では、あらためて次章からもよろしく。

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おまえら、教えやがれ
  ↓
  ↓
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/479725667.html

『ピクシブのブースを使ってるので、その事を伝えておかねば』
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/477601321.html

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