7回目 開拓に関わるモンスターの脅威と、現地のおける武装事情 4
ただ、武装しないとやっていけないという事情は、本国の多くの者達にも伝えられてはいた。
その為、新地道における武装も、
「仕方が無い」
「やむをえない」
「当然の結果だ」
とする者達が圧倒的だった。
そんな者達から武器を取り上げるのは、
「やりすぎだ」
「横暴だ」
「生きる手段を剥奪してる」
と非難も起きた。
現地に出向いた者達が、実際にモンスターの襲撃を見て、その様子を録画してインターネットに流したのも大きい。
それを見て、
「こんなのを相手にしてるんじゃしょうがない」
「むしろ、武器がないとまずいだろ」
という意見が圧倒的になっていった。
その為、選挙で選ばれてる国会議員も、迂闊に新地道の武装解除を口に出せなくなっていった。
国会議員に従うしかない官僚機構もである。
資源の輸入先として新地道が成長してるのも大きかった。
いまだに資源の多くを他国に依存してる日本である。
そんな日本において、異世界でありながらも自国の領土である新地道は貴重であった。
そこからもたらされる資源は、日本の輸入依存度を大きく下げてくれる。
相手の政治的な事情で、資源の輸入が閉ざされるという可能性を大きく下げてくれる。
そんな貴重な資源産出地を、政治におけるつまらない反発で失ってはたまらない。
資源の自給率。
そして、広大な土地による食料の自給率の増大。
これを前にすれば、現地の武装などとるにたらない事だった。
問題にする事すら異常であった。
新地道の武装が、「いずれ独立するための下準備だ」とかいう者もいる。
だからこそ危険であると。
だが、それ以前に、現地にいるモンスターの存在を無視している。
それらを排除する手段がどうしても必要である事も無視している。
そして、現地の者達を守る為に、自衛隊や警察などが行動してるのか、という問題もあった。
モンスターへの対応は、自衛隊や警察の主な任務では無い、としているのに。
政府というか、官僚答弁としては、あながち間違ってもいない。
自衛隊は諸外国からの戦争に対抗するために。
警察は人の間で起こる犯罪に対処するために存在している。
モンスターという存在に対抗する為ではない。
だから出動出来ない、というのは、一応は筋が通っている。
言ってしまえば、モンスターというのは現地にいる野生動物である。
これへの対応は害獣駆除がもっとも近い。
それは自衛隊や警察の業務とは言い難いものがあったのだ。
しかし、現地の者達の安全を確保してないのは確かである。
「何もしない連中が文句を言うな」
というのが現地の者達の、そして、その境遇を把握した日本国民の大半の考えであった。
そんな事を理由に動こうともしないのであれば、現地の人間を見殺しにしてるも同然である。
さすがにこれには反発が大きかった。
対応する法整備すらもする事もない姿勢も反感を募らせた。
それは怒りと言っても良かった。
かくて新地道における武装は、進められていく。
大量に出現するモンスターに対処するために、こればかりは仕方が無いものがあった。
また、その武装も強化の一途をたどっていく。
もっともこれは、駐屯する自衛隊に対処するため、というのが大きい。
モンスター相手だったならば、せいぜい重機関銃と軽装甲車両だけで十分だったのだから。
おかげで、新地道の一部の部隊は、戦車に戦闘機という、異世界においては過大と言える装備をしてもいた。
余談であるが、こうした流れに伴って、新地道には射撃場という娯楽も登場していった。
これが予想以上の好評を受ける事になった。
何せ、今までであれば、銃器の射撃の為には海外にいかないといけない。
その為にパスポートなどを手に入れねばならず、非常に面倒であった。
だが、新地道という、一応は国内にこれが出来た事で手間は一掃された。
行って帰って来るだけでもかなりの時間はかかるのだが、それでも外国よりは楽と言われていった。
単純に言葉が通じるというのが大きかったのもある。
そんなわけで、新地道において、これが意外とばかにならない作業になってもいった。