65回目 第三大陸における最初の進出予定地 2
「とにかく前線基地にしていかないと」
「工事の規模を拡大しないとな」
「今より更に進めるのは難しいげど」
「出来る範囲でどうにかしていくしかない。
幾らかは後回しにするしかない」
施設の建設の方は、さすがに簡単にはいかない。
幾らか遅れが出るのは承知の上でやっていく事になる。
「あと、武器はどうする。
戦闘部隊が持ってる武装だけじゃ足りないかもしれないぞ」
「自治体の方にかけあってるけど、動いてくれるかどうかはあやしいし」
「危機感は持ってるようなんだけどな」
こちらの方も深刻な問題だった。
必要になるかもいしれない戦闘部隊の展開がおいつかない。
また、一井物産をはじめとした民間の戦闘部隊の装備では対処仕切れない可能性がある。
なので新地道自治体が保有してる戦力が欲しいところだった。
しかし、これを動かす事のが難しい。
企業の戦闘部隊より強力な装備を持ってるとはいえ、それを動かすには様々な手続きが必要になる。
また、定められた条件を満たさなくてはならない。
自治体の方は現状を深刻な状況ととらえてはいる。
通常よりは簡単に部隊を動かしはするだろう。
だが、それが前方に展開してる一井物産などが求めるほどに早いかどうかは分からない。
あくまで通常の場合よりは素早いというだけだ。
迅速に動いてくれるという期待は出来なかった。
そういった楽観的な考えを企画部の者達は持たないようにもしている。
自分達の意志で動かせないものを頼りにするほど危険なものはないのだから。
「自治体の方はがんばってせっついていくしかないな」
「交渉担当者に期待するしかないな」
自治体の戦闘部隊が動くかどうかは、担当部署に任せるしかない。
「まあ、こっちも出来るだけの事はしていこう。
担当部署に任せっきりなのも申し訳ないし」
「そうだな。
俺らも俺らで出来る事はしていかないと」
会社の今後について考えるのが企画部である。
最善の措置をとるべく、策を考えていく。
交渉だけでなく、交渉を有利に進める条件作りの為に。
その為にとれるあらゆる手段を採用していくつもりだった。
でなければ、最前線で自社の部隊が損失を受けてしまうかもしれない。
ある程度は仕方ないが、自分達だけが損害を被るのは避けたいところだった。
それは会社としての損失だけではない。
戦力が低下すれば、それだけ社会に対しての発言権も下がる。
実際に戦闘力を保有してるというのは、やはり影響力に大きく関わっている。
それを失う事は避けねばならなかった。
「あと、あいつらとの交渉をするのもそろそろ決めてもらわないと。
さすがにそれは俺達の仕事じゃない」
肝心な部分である。
新地道自治体も一井物産も、来訪者と戦争をするのが目的ではない。
相手の意図をはかり、可能であれば交渉で事をおさめたいと考えている。
その為にも相手と接触をして、意思の疎通をはからねばならない。
さすがにその役目は一井物産が担うものではない。
それは政治の分野の話であり、政府が担うものである。
もっともこの異世界においては、新地道自治体がその役割を担う事になるだろうが。
下手に日本政府を関わらせて、面倒な事態に陥るのは避けたい。
全ては新地道内で事を進め、結果の事後報告という形で政府に伝える。
そういう流れでやっていきたかった。
その為にも、交渉担当者を自治体から出してもらわねばならない。
誰が担当するのかは分からないが、早急に決めてもらいたいものだった。
でなければ何も決まらないまま相手と接触しかねない。
営業活動ならともかく、社会の代表として相手と接触するつもりは一井物産には無かった。
それは余りにも荷が重すぎる。
どんなに巨大で影響力が強くても、一井物産は企業である。
生産や経済活動はしても、社会というより大きな枠組みの動きに従事するのは本筋ではない。
その為に負わねばならない義務は大きすぎる。
それを負う事で得られる権利もなさ過ぎる。
政治活動をするにしては負担が割に合わない。
だからこそ自治体には早く前に出てもらいたかった。
それなりのお膳立てはしているのだから。




