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61回目 休暇

「それで、なんでこっちにいるんだ?」

「お給料が良かったから」

 開口一番という程では無いが、挨拶もそこそこに切り出した問いかけと返答である。

 そんなタクヤに呼び出した方は短く答える。

 簡潔にして要を得た答え……いや、それ以外に答えようがない理由だった。

「それでわざわざ何にもない所にかよ」

「それはまあね。

 しょうがないって思えるから」

 そう言ってタクヤを呼び出した女、アマネは笑顔を見せる。

「でも、ジュースくらいはあるから」

「それしかないだろ」

「そうなんだよね。

 開拓地ってこんなに物がないんだね」

「何も無い所に町を作ってくんだから、最初はそんなもんだ」

「経験者は語る、ですか?」

「そうなるのか……?

 一応、こんな事ばっかりやってるからな」

 そんな事を言いながら、コンビニへと向かっていく。

 他に行くところがないという選択肢の無さがもたらした結果である。

 ついでに何かあれば買っておこうという、どこか消極的な思いもある。

 何より、適当に時間を使うには丁度良いのが、今のところコンビニだけというのが現状だ。

 この状況が早急に改善される事を、タクヤはとにかく願った。



「というわけで、近況報告。

 今、どんな事やってるの?

 ちゃんと食べてる?」

 歩きながらアマネが尋ねていく。

 メールにも書いてあったのだが、今回呼び出した目的はこのあたりを問いただすためだという。

「なんでお前にそんな事を……」

「おばさんから言いつけられてるから」

 アマネがわざわざ呼び出したのは、それが理由であるという。

 タクヤの親から近況を探ってこいと言われたとか。

「別にいいだろ、そんなの」

「それはそうなんだけどね」

 否定することなくアマネは頷いた。

「兄ちゃんの仕事がどんなものなのかはおじさんだって知ってるだろうし。

 それに、自分から危険な仕事についたんだから、どうなっても仕方ないとは思うんだよね」

「まあ、そうなんだけど。

 でも、そう言われると少しは心配して欲しくなる」

 どうなってもいいと言われたようで、少し切なくなった。



 その後、コンビニで飲み物を買って、二人は適当な方向へと走っていった。

 とはいえ、落ち着いて話せるような場所はあまりない。

 公園などがあれば良いのだろうが、そんな気の利いたものを設置する余裕などない。

 やむなくタクヤは、海の方へと向かっていった。

 港湾として使っているあたりはともかく、そうでない浜辺は憩いの場のように扱われている。

 海の中にはモンスターがいるので海水浴は出来ないが。

 それでも、下手に開拓や開発されてない場所という事で、自然公園のような場所になっていた。

 なお、海の近くが開発対象になってないのは、潮風が金属などを簡単に錆び付かせるからだ。

 その為、なるべく海から離れた場所が開拓や開発対象になる。

 手入れをするにも手間と面倒がかかるので放置されてるというが正しい。



 そんな浜辺近くまでバギーで向かい、適当なところで停車する。

 ベンチなんて気の利いたものはないので、そのままバギーに腰をおろして買ってきたものを口にしていく。

 緑茶とおにぎり、ココアとサンドイッチ。

 タクヤとアマネはそれぞれ選んできたものを口にしていく。



「そんで、母ちゃんはなんて?」

「うーん、最近全然連絡がないから生きてるかどうか確かめておいてだって」

「何を気にしてるんだか」

 そこまで心配するほどのことかと思ってしまう。

 タクヤが戦闘部隊に入ってるのは分かってるはず。

 それがあちこち転戦するものであることも。

 運送や輸送の護衛、施設警備などの仕事でもなければそれが普通だった。

 それは仕事で開拓地などの前線近くで勤務していた母も知ってるはずである。

 わざわざ心配するのもどうかというところだった。

「連絡がないとさすがに心配するよ。

 たまには電話くらいしたら?」

「そんな暇は無い」

「メールも?」

「そもそも電波が届かない」

「あー、そういう所にいるもんね」

 タクヤが出向いてる場所は通信用の電波が届かないような地域である。

 連絡など取りようがない。

 それ以前に、ある程度開拓や開発が進んだ上陸地点ですら通話状態は悪いのだ。

 こんな場所で連絡を取り合うなど無理というもの。



「仕事の事もあるし、話せる事なんて無いしな」

「それはさすがに言えないね」

 業務上の機密である。

 どこで何をしてるのかは話せない事が多い。

 少なくとも会社が公開してる範囲でなければ口にする事は出来ない。

 それ以外については本当に喋りようがない。

 所属部署ですら下手に口に出すわけにもいかないのだ。

 そこから色々と割り出せる可能性があるのだから。

 特にタクヤの場合、現在の業務については何一つ喋れない。

 単なる開拓業務であるならばそれほど神経質になる必要もないのだが。

 探索の目的が何であるのかを考えると、迂闊な事は言えなかった。

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おまえら、教えやがれ
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http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/479725667.html

『ピクシブのブースを使ってるので、その事を伝えておかねば』
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/477601321.html

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