60回目 周辺探索 8
最前線になった進出先の拠点。
そこに物資が運び込まれ、とりあえずの居住地になっていく。
テントがはられ、発電機が設置され、通信機が並んでいく。
その周囲を戦闘部隊が囲み、防備を作っていく。
本格的な建設はまだ先の事だが、人と物は集まってくる。
これからここに大きな町が出来上がるという前触れであった。
タクヤ達がようやく休暇をとれたのはそんな頃だった。
人が増えた事で余裕が出来た。
今までの超過勤務分も踏まえて二週間ほどの休みが与えられる。
まずは交代要員と入れ替わりに上陸地点へと向かう。
そこで正式に休暇が与えられた。
合計2週間という太っ腹である。
もっとも、それまでの数ヶ月の激務を思えば、微々たるものではあったが。
「それになあ」
ようやく得られた休暇ではあるが、不満もある。
「いくら休暇って言っても、ここから出られないんじゃな」
「何もないですからねえ」
「戻るにしても、時間がかかるし」
「結局、やる事なんて何も無いですね」
これが問題だった。
休暇は確かにある。
その間は仕事をしなくて良い。
モンスターが一斉に襲いかかってくるとかでも無い限りは。
だが、その時間を何に使うかとなると、これがまた問題だった。
第三大陸では遊ぶ場所がない。
気晴らしをしようにも出来る事がほとんどない。
娯楽らしい娯楽なんてほとんど存在しない。
そんな所で休暇をもらっても、寝転ぶ以外にする事はない。
何もしないでボケッとしてられるのはありがたくはあったが。
だが、それだけしてるというのも虚しい。
「あ、でも。
この前、店が出来たっていってましたよ」
「どうせコンビニだろ」
「まあ、そうなんですけど」
様々な物品を扱うコンビニエンスストアは、開拓地において真っ先に出店されるものの一つである。
本来なら娯楽になりえない場所ではあるのだが、色々な物を見ることが出来るので開拓当初は賑わう。
やがて他の企業や店舗が出店してくるまではかなりの客入りになる。
それだけ娯楽に飢えてるのが開拓地というものだ。
コンビニもそういった事情が分かってるので、なるべく開拓当初に出店する事を心がけている。
他が出店するまでのわずかな期間は書き入れ時になるからだ。
それが分かってるので、店と聞いてすぐにコンビニだと思った。
そんなものしかないのが辛かった。
そして、そんなものだと分かっていても、折角だからと出向いてしまいたくなる。
なんだかんだでタクヤも遊びに飢えていた。
少しでも気晴らしが出来るならばそれで良かった。
そんなタクヤが携帯電話のメールに気づいたのは、上陸地点に帰還してからだった。
送信されてから既に何日も経っていたようだが、受信したのは戻る途中。
通信環境がととのってないから起こる現象である。
迅速な連絡など、開拓途上の地域では望めない。
ちゃんと届くだけまだマシというものだった。
そして、受け取ったメールを見て、顔をしかめた。
(なんでまた……)
馴染みのある差出人だった。
その名前を見て、うんざりとした気分になった。