59回目 周辺探索 7
探索担当者達の不平や不満はともかく、彼等は確かに足をのばしていった。
中継地点も幾つか建設され、そこが新たな足がかりになる。
それらを踏み台にして、探索隊は目標としてる平野に辿り着こうとしていた。
思ったよりも長い時間がかかったが、当面の目的はどうにか達成されようとしてる。
目的地は大河沿いにある開けた場所。
そこが新たな拠点の候補地であった。
今後、人や物資を集めるために、どうしても広い場所が必要になる。
守るには不利になるが、それよりもまずある程度の人数が集められる事が重要になる。
条件を満たす場所の中で、最も適切と判断されたのが、探索隊が到着したこの場所だった。
「ようやく着いたな」
目の前の草原を見て呟くタクヤ。
ここまで来るのにかかった手間と時間を思うと感動などない。
ただ疲労感があるだけだった。
進めば侵入不可能な地形にぶつかり、迂回路を探して引き返す。
その繰り返しだった。
いつしか神経も気持ちもすり切れていた。
感動する心など残ってなく、終わったという感慨が残るだけだった。
しかし、それも長くは続かない。
「ここからまた始まるんだよな」
目の前にある草原が新たな出発点になる。
いずれここに資材や工事車両、作業員が入る事になる。
活動拠点が建設され、ここから再び探索に出向く事になる。
それが分かってるから落ち着いてなどいられない。
ここからまた忙しくなるのだ。
「面倒だな」
「全くですね」
「休暇、もらえないですかね」
「さすがに超過勤務もすぎるんじゃないかと」
部下も要望を口にしていく。
実際、ろくに休みも取れない日々が続いている。
労働基本法などあって無いような開拓地において、これは珍しくはない。
探索などの場合、一度出発すれば帰還するまで作業時間のようなものだ。
気が休まるわけがない。
そうでなくても気を張り詰めねばならないのだ。
どこかで休みを入れたくなるのが当然だ。
そのあたりは会社も分かってるので、必要以上の無理をさせはしない。
「安心しろ。
これが終わればまとまった休暇が取れるらしい」
会社からはそう言われている。
連続勤務が続くタクヤ達探索隊には、まとまった休日が与えられるとの事だった。
さすがにこれ以上働かせると、気力と体力がもたないと会社も判断していた。
そうなった場合の作業効率と労働意欲の低下は、会社にとって最悪の損害となる。
それで社員が死んだら、実績を積んだ熟練者を失う事になる。
そうでなくても、仕事に嫌気がさして辞職する事もありえる。
会社に留まっても、手を抜きまくって効率が大幅に落ちる事もある。
実際にそういった事例が多発したので、会社も無理はさせないよう頭を働かせている。
特に戦闘部隊には鬱憤を溜めさせないよう気をつけていた。
武装してる連中が腹を立てれば、それこそ戦闘が発生する事になる。
そういった事も過去に何度か起こっている。
そうならないよう、作業員の管理には気を配っていた。
でなければ、その反動を受け取る事になるから。
最終的には我が身かわいさが理由ではある。
だが、それが不当な扱いを避ける事に繋がっているので、悪い事では無いだろう。
それは法律による規制よりも強い強制力をもたらしていた。
とはいえ、休暇がすぐに与えられるとは思っていない。
進出先の拠点が出来るまではそこの警備が必要になる。
周辺の探索もしなくてはならない。
交代がいずれ来るだろうが、それまではタクヤ達が頑張らねばならない。
増員されたとはいえ人手不足はまだ続いている。
タクヤ達も簡単には休めるような状況ではない。
それでも、休暇がいずれは与えられると思えばまだ頑張れた。
出来ればそんな努力が不要になってもらいたかったが。