57回目 周辺探索 5
「けど、このままってわけにもいかないからな」
「確かに」
「最低限、せめて中継地点は確保しておかないと」
「人と物をもっと増やすしかないな」
「今でもギリギリだが」
「輸送量を増やすしかない」
余裕があるならば無理をする必要は無い。
ただ開拓をしていれば良かったなら、こんな事はしなかっただろう。
そもそも、別の大陸に出向くなんて事もしなくて良かった。
だが、今はそうではない。
もう新地道の、地球人だけではない。
他の世界からやってきた者がいる。
それとの接触をして、相手の出方を見極めねばならない。
悠長にしてるわけにはいかなかった。
「船便を増やして輸送量を確保する。
今でもギリギリだけど、やるしかない」
「でも、それだと物が無くなるかもしれないぞ」
別の問題も出てくる。
「今でもあちこちで品不足が起こってる。
開発が必要なのは第一大陸も第二大陸も同じだ。
そっちに回す分がなくなるぞ、このままじゃ」
これは現在の生産力に関わる問題だった。
採掘・精製・加工の全てを考慮した生産力は、今でも限界近くにある。
その中で様々な分野に物資を割り振ってる状況だった。
ここで第三大陸の開発に物資を振り分けるとなると、他の方面における開発が停滞する。
会社の事業計画も関わってくるので、それらを留めるわけにはいかない。
そうでなくても〆切りや納期を超えてしまってるものすらある。
それはこの世界では珍しい事ではない。
時間も物も足りない事が多いのだ。
どこかで遅れが出るのはやむない事である。
なので、ある程度は寛容にそれらを受け止めのがこの世界での慣習になりつつあった。
だが、そうであっても停滞や遅れは可能な限り無くしたいものである。
それを今後更に生み出すような事態は避けたいものだった。
「けど、第三大陸を放置するわけにもいかない」
それが大きな問題に繋がる事は誰もが分かっている。
だが、だからと言ってここで第三大陸を後回しにするわけにもいかなかった。
優先順位がそれだけ高いのだ。
第三大陸の開拓と開発が……ではない。
そこに存在する相手が、他の何よりも優先されている。
「こっちを後回しには出来ない」
幸いにも稼働を始めた工場などもある。
それらが生産力を底上げしてくれる。
足りない物はそれらで補っていく事が出来る。
不足状態がそれほど長く続く事は無いはずだった。
しかし、供給と消費のせめぎ合いはいつどこで均衡が崩れるか分からない。
増えた分だけ減っていく、減少した分を増加分が補う。
この繰り返しはまだまだ続いていく事になるだろう。
特に今は消費や消耗が激しい。
第三大陸の事がなくても、開拓と開発が進んでいる。
純粋にそれらだけを見ても、様々な資本が求められているのだ。