55回目 周辺探索 3
思うように進まないながらも、探索は続けられていく。
実際に見て回る事で判明する問題点。
それらが探索の足を引っ張ってしまう。
だが、同時に今後の対応をどのようにするかも見えてくる。
分かっていなければ右往左往してしまうが、知っていれば対策はとれる。
そもそもとして、問題のほとんどは通り抜けできない事によるものだ。
これらは土木工事で解決が出来る。
それが必要な場所を事前に把握出来ているというのは大きい。
探索は何一つ無駄ではない。
そうするうちに、船便も増加していく。
完成した遠洋型の護衛艦が護送船団に加わったのだ。
これにより、船便の回数を増やす事が出来るようになった。
それだけで輸送量が飛躍的に増加していく。
第一大陸と第二大陸の間だけではなく、第三大陸にまでその恩恵は届いてくる。
これにより第三大陸に届く物資は増大していった。
同時に作業に必要な人員も増加していく。
ここに来て第三大陸の開拓と開発は加速がついてきた。
上陸地点の整備が進み、居住地は拡大を始めていく。
これまでどうしても手がつけられなかった部分も着手されていく。
運び込まれる物資の貯蔵施設も含め、様々な建物が建造されていく。
それらが更に多くの物資を人員を集める事を可能としていく。
年末になる頃には駐留する人員の人数も二倍ほどに増えていた。
それは探索においても影響を与えていく。
侵入を阻んでいた地形の整地が行われ、探索範囲の拡大がなされていった。
まだ上陸地点の近くしか整備されてはいないが、それだけでも効果は大きい。
侵入可能場所が増えれば、それだけ移動出来る範囲が増える。
迂回しなければならなかった場所が急速に減ったのが大きい。
これにより更に活動範囲を拡げる事が出来た。
探索範囲が広がり、新たに問題点が浮かび上がる。
それへの対応策が出され、後日工事がされる事になる。
この繰り返しによって、探索活動は拍車をかけていく事になった。
それでも上陸地点の拡大拡張が優先されてるので思うようにはいかない。
今後を考えれば少しでも先へ進みたい。
だが、その為にも上陸地点の整備を進め、活動拠点としての能力を高めねばならない。
より遠くまで進む為には、それを支える設備が必要になる。
単純に探索に必要な部分だけととのえれば良いというわけではない。
来訪者達との接触予定地点にまで進むには、数カ所の中継所が必要になる。
そこに進む為には道を切り開かねばならない。
その為の物資と人員と作業時間がいる。
それらを抱える事が出来る場所がどうしても必要だ。
また、先へ進めば進むほど、人や物資を貯蔵する場所も必要になる。
そうした物資を集めておく中継地点に配置する人間も。
人も物もどんどん必要になっていく。
これらを最初に集めておく場所として、上陸地点の整備は欠かせない。
それが進むまでは、探索の範囲にも自ずと限界が発生してしまう。
その為、タクヤ達は探索以外にも、周辺モンスターの駆除もさせられる事となった。
探索が頭打ちになった時にはこういった業務を回される事が多い。
安全確保の為に必要な作業であるが、先に進めないのはもどかしい。
なまじ機械の来訪者の事を知ってるだけに、焦りをおぼえてしまう。
(こんな事してていいのかな)
というのが理由だ。
モンスターを放置しておけというわけではない。
それよりも来訪者の方が気になってしまう。
だが、モンスターの危険性も分かってるので反対するわけにもいかない。
どのみち、他にやる事もないのだから、与えられた仕事を全うするしかない。
ただ、こうした作業によってモンスターに襲われる危険性が減る。
それは作業の安全を確保し、作業時間の増大に繋がる。
モンスターの気配を察してその都度避難する必要が無い。
作業の進捗において、これは大きな意義があった。
少なくとも、全体を統括する立場からすれば、モンスターの駆除は大きな利点である。
これの有無で作業の完結までにかかる時間に大きな差が出る。
タクヤ達の作業は決して無駄ではない。
結果として、それは探索にとりかかるまでの時間を大きく短縮していく事になった。