51回目 新たな大陸にて 16
「しかしまあ……」
はれて探索業務に抜擢されたトモルはため息を漏らしていく。
危険な作業に放り込まれ、嫌でも出向かねばならなくなってしまった。
指示を受けた当初は不平と不満を、それこそ四六時中漏らしていたものである。
だが、業務の説明を受けてからはその回数は大幅に減った。
「やらなくちゃならねえんだろうなあ」
そう思えるくらいに、状況が悪くなりつつあるのを察していた。
探索に先だって、業務に従事する者達が集められた。
作業内容の説明のためである。
上陸地点に設置された会議室用のプレハブ。
そこに押し込められた業務予定者達は、顔にありありと不満を浮かべていた。
そんな彼等に、本社の企画部から派遣されたという者が説明をしていく。
「本日はお忙しいなか、集まっていただきありがとうございます」
「挨拶はいいから、説明をしてくれ」
冒頭の挨拶を遮って誰かが用件を催促する。
非礼や無礼にあたる行為であるが、それを咎める者はいない。
集められた者達は発言内容に賛成であったし、説明をする方も少しでも早く本題に入りたかった。
「それでは早速説明を始めます」
無駄な時間を大幅に省いた説明会はこうして開始されていった。
そこでタクヤ達は事実を知る。
この第三大陸にあるトンネルから、別の世界の住人が出てきている事。
それらが現在トンネル周辺を開発して拠点を築いてる事。
その範囲は加速度的に拡大している事。
そんな相手に危機感を抱いた事で、無理をしてでも第三大陸への開拓が始められた事。
その最大の理由は、来訪者との接触が戦争に発展した場合に備えてものである事。
それを観測衛星によって撮影された写真や動画などを交えて説明されていった。
不平不満を抱えていた者達も、この事実にそういった気持ちを吹き飛ばされていった。
「そんなのが来てたのか」
「おい、大丈夫なのか」
「かなり速い速度で建設してるぞ」
「何者なんだ、あいつら」
そんな声が会議室の中で生まれていく。
それらを制して企画部の者は説明をする。
「これらが何であるのかは全く分かってません。
ですから、まずは接触を試みたいと考えてます。
相手と友好を築ければそれで良し。
そうでなかったら、最悪の場合を想定しなくてはなりません」
そりゃそうだろうと誰もが思った。
相手がどういう存在なのかが分からねば話にならないのだから。
説明はそれからも続き、タクヤ達は
現在分かってるあらゆる情報を教えられた。
だが、衛星軌道からの撮影で分かってる事以外に判明してる事は無い。
せいぜい、相手の建設速度や、周囲に展開してる者達の動きくらいである。
そこから予測できる未来くらいは割り出せるが、根本的な部分の解明には至ってない。
だからこそ相手と接触をせねばならないのだ。
対応が遅れてしまう前に。