49回目 新たな大陸にて 14
企画部にて発案された探索・調査の案は、新たな事業計画として提案されていく。
それが通るかどうかは取締役会などでの承認を得ねばならない。
どうしても時間がかかる。
だが、それを待ってるほどの余裕もない。
相手がどれ程の速度で進むのかが分からないからだ。
一秒でも早い行動が望まれる。
そこで企画部は、彼等の権限の中で動かせるものを動かしていった。
会社全体で取り組む必要がある事には、当然ながら経営陣の判断が必要になる。
しかし、全てを経営陣が仕切っていては時間と手間がかかりすぎる。
会社全体で行われてる活動全てに目を向けるのも大変だ。
一井物産の経営陣は、会社の規模に応じてそれなりに大きい。
それでも数十人を超えるものではない。
この人数で何万という社員による経営活動全てに目を通す事など出来るわけがない。
なので、小さな案件などについては、下位の部署で活動の決定や承認をしていく事になる。
今回、探索・調査を行うにあたり、企画部はこの権限を用いる事にした。
与えられてる予算や資材や機材、扱える範囲を定めた権限。
これらの中で動かせるものを用いて、現地での活動を決めていく。
これにより、現地の探索や調査が可能となっている。
必要な情報を得る為に与えられた企画部の権利である。
大規模な活動はさすがに出来ないが、小さな規模の探索ならば独自の権限で派遣する事が出来る。
これが出来ないと、必要な情報を得られずに終わる事もあるからだ。
この権限で動かせる範囲は限られている。
さすがに中継地点を建設するほどの人員や物資などを動かす事は出来ない。
それらはより上位の部署や責任者の承認が必要になる。
モンスターの蔓延る場所に送り込むので、ある程度の人数と武器は用意出来るが。
それでも、せいぜい数十人が限界である。
物資もそれに合わせたもの。
また、調査期間はどんなにのばしても一ヶ月を超える事は出来ない。
一回の活動で繰り出せるのは、このあたりが限界になっている。
出来る事は限られるが、これは仕方が無い。
この範囲でやれる事を企画部は決定し、実行に移していった。
「作業指示ねえ」
指示を受け取ったタクヤは、新たな業務にうんざりした口調になる。
「しかも遠出かよ」
「最悪ですね」
「なんでまた」
部下からも文句が出る。
新大陸の上陸してからこっち、モンスターの襲撃に備える日々だった。
防備の設置も粗方終わり、それらから解放されたと思ったのだが。
そんな所にきて、新たな指示である。
それも、上陸地点の拠点から外に出ろというものだ。
「もう少しゆっくりさせろっての」
本土に帰って休養を、とまではいかない。
だが、ある程度余裕が出来たのだから、それなりの休暇を与えてもらいたかった。
交代でとる事になってる所定の休暇とは別に。
「それで今度はどこに行けってんですかね?」
「さあな。
外に出ろってんだから、それなりに遠出する事になるんだろうけど」
指示書には正確な事は書いてない。
それについては、後日正確な情報を出すとなっている。
機密性が高い内容なのだろう。
事前の告知の段階では正確な内容は記されてない。
だが、そういった作業が楽なものであるわけがない。
それが分かるからタクヤ達はうんざりとする。
「賞与をはずんでもらわないとなあ」
ぼやきが口をつく。
居合わせた部下もその通りだと頷いた。