48回目 新たな大陸にて 13
「本当なら上陸地点の周辺を探りたいところだけど、そうも言ってられん」
提言した者は説明を続ける。
「探索は、出現した相手との接触の為に動いてもらう」
「そのまま相手の所に向かえと?」
「いや、まずは中継地点の確保だ」
そう言って提言者は衛星写真から作られた地図の一点を指す。
「衛星写真からは、この場所に適度にひらけた場所があるのが分かってる。
まずはここを目指してもらう。
その途中の道の状態も確かめてもらいながらな」
指が上陸地点と目標地点の間を動く。
それは、比較的平坦で開かれた場所を指している。
途中に断崖絶壁などのない、比較的ひらけた部分を伝いながら。
それらは衛星軌道からの観測で、おそらくは車輌の通行が可能であろうと思われてる部分だった。
「実際にどうなってるのかも、ついでに確かめてもらう」
「けど、それだと遠回りになるんじゃないのか?
わざわざそうする意味があるのか?」
提言者の案に疑問が出された。
「もちろんだ」
疑問への答えはすぐに出される。
「まず、上陸地点から直接向かったら、こちらの位置がばれる可能性がある。
進行方向から、こちらの位置を割り出されたらたまらない」
その為に、わざわざ迂回して相手に向かおうとしていた。
「相手が攻撃してきた場合、直接上陸地点に向かわないようにしておきたい。
その為、まずこちら側に引きつけようと思ってる」
「なるほど」
ならば迂回するような道筋も納得出来た。
「どのみち、相手のいる所まで行くには、途中に補給や休憩が出来る場所も必要だ。
攻め込んできた場合には撃退出来るような設備もな。
だったら、出来るだけ上陸地点から離れていた方がいい」
「その為の場所がここだと?」
「そう考えてる。
上陸地点から適度に離れていて、最も手近にある広い場所だとここが一番だと」
近いと言っても数百キロは離れている。
それでも何千キロも離れた所にいる相手の所に向かう第一歩である。
相対的には手近と言えた。
「ここから更に何カ所か中継地点を作る。
それで相手に接触をする。
こちらから出来るだけ遠い場所でな。
それで相手の出方を伺う」
それが提言者の考えだった。
可能な限りこちらの安全を考えての事だ。
まっすぐに相手に向かっていかず、出来るだけ自分から遠い所で接触をする。
そうする事で、相手に自分達の位置を誤認させる。
こちらに侵攻してきたとしても、それに必要な距離を出来るだけ稼ぐ。
それがどれだけ意味があるのか分からないが、少しでも有利な点を増やしておきたかった。
「とは言っても、人も機材も全然足りないが」
問題はそこであった。
中継地点はどうしても必要になるが、それを作る余裕がない。
補給物資の集積と、維持する為に必要な人員の配置。
必要な施設の建設。
モンスターもいるので、それらへの防備も作らねばならない。
そうなると、今の状態では全く人手が足りない。
そもそもとして、こういった事をしてる余裕などほとんどないのだ。
「でも、まずは探索だけでも進めておかないと」
無理は承知である。
余裕がないのは分かってる。
それでもやらねばならない程事態は切迫している。
まだ相手は目の前に来てない。
だが、目の前に来てからでは遅いのだ。
その為にも、事前に現地の状態を確かめねばならない。
本当に利用可能かどうかを知るために。
「何にしても探索や調査は必要だ。
相手がいてもいなくてもな。
ついでに周辺の事も多少は分かればありがたい」
いずれは開拓する予定でいるのだ。
それが早まっただけと考えて、この無理を通していく。
「上の方も危機感は持ってるようだし、止めるような事は無いだろう。
むしろ、こちらを優先するよう上申しよう。
相手がある事なんだしな」
もしかしたら脅威になるかもしれない存在。
それへの対処を考えて、企画部は適切な方策を探していく。