47回目 新たな大陸にて 12
しかし、人類側の思惑を相手が待つわけもない。
トンネルから出てきた存在は勢力を更に拡大し、周辺に足を伸ばしていく。
その勢いは日増しに強くなっていく。
特に周辺に展開してる機械の数は次々に増加していっている。
施設の建造速度より、探索に出てるもの達の足の方が確実に早い。
それらが新地道勢力の上陸地点まで到達するまで、はやければ数ヶ月と予想されていた。
「これの対策をどうにかしないと」
一井物産の企画部では、対策を考えていく。
さすがにそれをこのまま放置するわけにもいかなかった。
相手に害意が無いならば良い。
だが、もしこちらへの侵略、それがないにしても戦闘を辞さない意志があるならば放置は出来ない。
相手の動きを少しでも牽制せねばならない。
「でも、どうやって?」
「相手の出鼻をくじくだけでもいいから、先頭に出てきた奴らを叩ければいいんだが」
「それにしたって、これだけ離れてるとな」
「移動するだけでも手間がかかるぞ」
数ヶ月もすれば接触すると予想される相手ではある。
しかし、今はまだ遠く離れた場所にいる。
そこまで出向くにしても、時間と手間がかかる。
何せ、直線距離で数千キロ以上離れてるのだ。
しかも人の手が入ってない原野である。
移動するにしても相当な困難が予想される。
開けた草原ならばまだ良いが、木々が生い茂ってるとそれだけで車輌による移動が困難になる。
おまけにモンスターだっている。
そう簡単に相手のいる所まで出向く事は出来なかった。
「でも、幾らかでも準備はしておきたい」
「それはまあ、出来るならそうしたいけど」
「何が出来るかってのが問題だな」
「まだ港すらまともに出来てないんだし」
「それは仕方ないけどな。
港の建造は時間がかかる」
「分かってるよ。
でもさ、上陸した連中の生活だって、いまだにテントがほとんどなんだぞ」
残念ながら事実である。
住居のほとんどはテントであり、快適な生活環境とは言い難い。
プレハブなどもあるにはるが、これらはいまだに業務作業を行う箇所にしか普及してない。
その他の設備についても推して知るべしである。
港湾設備ですら、浮き桟橋から進んでないのだ。
まだ上陸地点に生活空間を建設するだけで手一杯である。
「他の作業なんてしてる余裕があると思うか?」
「思うわけないだろ。
そんな事分かってる。
けどな、このまま何もしないでいたら、状況は悪くなる一方だぞ」
「けどなあ」
「どうすりゃいいんだ、こんな状況で」
今の状態ではやれる事などほとんどない。
それでいったいどうすればいいというのか。
「出来る事を、小さな事をやっていこう」
提言した者は、そう言って自分の考えを述べていく。
「現状では何も出来ない。
それは確かだ。
けど、全く何も出来ないわけではない」
そう言って遠く離れた大陸の状態を示していく。
「とりあえず、防備の設置は終わった。
無人機銃座によって接近するモンスターの撃退は可能だ。
これで人手をある程度は他に振り分ける事が出来る」
とは言っても、警戒に人手がいらないわけではない。
設置した機械の死角は必ず発生する。
そこを人が補う必要はある。
それでも人員を配置する必要性が低くなったのは確かだ。
「これを少し振り分ける事にする」
「いや、でもそれでも大人数を割けるわけじゃないぞ」
「もちろんだ。
せいぜい20人くらいだ。
でも、探索には充分だ。
まずは、この人数で周辺の探索をさせる」