38回目 新たな大陸にて 3
人類がそういった動きをしてる間にも、トンネルの向こうからやってきた機械達も行動範囲を拡げていっている。
木々は倒され、土地は均等に均され、その上に様々な設備が作られていく。
大小様々な機械が、彼等の版図を拡大していっていた。
地中から取り出された鉱物が加工されて原材料になる。
その原材料を用いて様々な道具が作り出されていく。
それは群で活動する昆虫のようである。
雑多に動いてるようで、一つの目標に向かって突き進んでいっている。
その結果が、金属で覆われた地表であり、そこを動き回る様々な機械であった。
もっとも代表的というか、もっともよく見る浮上してる機械は、そんな設備の中をあちこち動き回っていっている。
モアイ像のように人の頭のようにも見える、それでいて、頭や四肢のない人の胴体のようにも見える。
底面から噴出される空気によって浮上するそれは、出来上がった建物の間を行き交う人々のようにも見えた。
そんな彼等────人面機械とでも言おうか────も、様々な設備のあちこちに取りついて作業をしている。
作られた設備の細かな部分の仕上げや、別の部品との接合などで。
体からのばされる細かな作業用の腕や、その先端に存在する溶接器具が設備の仕上げを行っていく。
そんな機械の集合体からある程度まとまった数の集団が分離していく。
施設が並ぶ町の中で作業をしている人面機械とは違った形をしている。
人面機械のように空気の噴射によって浮上したりはしない。
昆虫のような多脚で動いている。
それこそ機械仕掛けの昆虫と言っても良いだろう。
もっとも、体にあたる部分が一般的な乗用車と同じくらいの大きさを持つそれを、昆虫と呼ぶのは無理があるだろうが。
そんな機械が数十台ずつの集団を編成して周辺へと散らばっていく。
集団も一つ二つではない。
幾つもあるそれらは、木々の間を抜け、平野を渡っていく。
そして、時折身体から噴射によって飛ぶ機械を飛ばしていった。
昆虫型の機械に内蔵されている噴射推進の機械は、彼等の目であった。
簡単なカメラとレーダーなどで周囲の様子を探っていく。
周囲の状況を確かめたそれは、必要な情報をとりおえると収納していた多脚機械に戻っていく。
そんな事を繰り返しながら、機械の集団は先へと進んでいった。
途中、モンスターと遭遇する事もある。
人類に遭遇した時と同じように、モンスターは機械の集団へと攻撃をしかけていく。
だが、機械の集団は動じる事無く接近してくるモンスターを迎えうつ。
作業用の連結部分の多いドリルを胴体から出し、それをモンスターにぶつけていく。
あるいは、溶接用のバーナーでモンスターの体に熱による穴をあけていく。
機械の集団に挑んでいったモンスター達は、そうして次々と撃破されていった。
脅威を排除した機械達は、そんな事が無かったように進んでいく。
彼等にとっては、迫るモンスターは一時的に足止めをする厄介な存在でしかない。
面倒ではあるが、根本的な問題にはならない。
それこそこの世界にやって来た時から常に撃退し続けてるのだ。
大きな問題になるとは全く思ってない。
そんな機械集団は、その足を更に先へと向けていく。
その行動範囲はまだそれほど広いものではない。
だが、数を重ねる毎に移動距離はのびていく。
時間はかかるだろうが、そのままいけば、いずれ人類の上陸地点にまで到達するだろう。