37回目 新たな大陸にて 2
報告を受けた一井物産の企画部は、とりあえず計画がある程度進んだ事に胸をなで下ろした。
問題はまだまだ残ってるが、とりあえずやるべき事は順調に進んでいっている。
三つめの大陸への上陸と入植、開拓と開発。
それは少しずつであるが進んでいっている。
「とにかく人をまだまだ送り込まないと」
当面、必要な作業人員の確保が求められる。
当たり前だが、第一陣として送り込んだ人数だけでは入植など成功するわけがない。
続けざまにあらゆる人間を送り込んで、開拓を進めていく必要がある。
「なんだけどなあ」
「やっぱり人員の確保が難しいか」
「ああ、こればかりはどうにもならん」
危険な別大陸への渡航を決意する人間は少ない。
会社としては様々な手当を付けてはいるのだが、それでも応募者はそれほど多くはない。
全くいないわけではないのだが、予定人数にはなかなか届かない。
特に必要な技術を持つ者となると、絶対的に人数が足りない。
様々な技能研修などを実施してはいるのだが、それでも技術者の確保は難しいものがあった。
「それでも、どうにかしないと」
理由もなく急いでるわけではないのだ。
トンネルの向こうからあらわれた存在がいるから、こうして急いでいる。
出来るだけ早く活動拠点を造り、少しでも活動が出来るようにせねばならない。
なのだが、そうするための人員も技術も資材や物資も不足している。
どれ程頑張っても打つ手無しというのが今の状態だった。
「何とかならんもんかな」
「こればかりはな」
「とにかく足りないものばかりだ」
「多少の工夫でどうにかなるもんじゃないぞ」
おかれた状況を正確にとらえている彼等は、この状況を好転させる材料がない事を充分に理解している。
だからこそ無駄に楽観的な観測はしなかった。
出来ないものは出来ないのだ。
それを無理して進める事など不可能である。
そういう合理性をこの場にいる者達は持ち合わせていた。
少なくとも根性論を持ち出すような者は存在しない。
「今はとにかく現状維持が限界か」
結論としてはそうなってしまう。
開拓や開発を進めたいが、その為に必要なあらゆるものが不足している。
出来る事と言えば、上陸地点を多少は地ならしすることくらい。
それ以上は現段階では不可能である。
「だったら、今はまず上陸地点の整備を進めよう」
企画部としての結論はそのようなものになった。
現状維持。
最低限の設備や施設は作るが、それ以上は時間を経ないとどうしようもない。
その為、無理して拡大を急ぐ事をせず、上陸地点の確保にだけ努める。
消極的ではあるが、今はまだ守りに入るしかなかった。