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29回目 些細な事であるけど、さて上手くいくのだろうか

 幸か不幸か、その業務について出頭するよう言われてるのはまだ先の事である。

 それまでは今まで通りの日々が続く。

 相変わらずモンスターが出没する周辺部を走り回り、出て来るモンスターを撃退する。

 そんな事を続けていられる。

 それはそれで危険のある作業なのだが、正体不明の業務よりはマシに思えてしまう。

 何をやらされるか分からない、事よりは勝手知ったる面倒な作業の方がまだ良かった。

 少なくとも、やり方や手順は知っている。

 馴染んでる分だけやりやすいというのもある。

 新しく何かを始めるよりは楽ではあった。



「まあ、何の変わり映えもないってのは、悪くはないですけどね」

「この仕事、変わり映えばかりだったらきついですし」

「そうだよなあ」

 モンスターの出現の仕方とか、急に忙しくなったとかは勘弁してもらいたかった。

 それだけ死ぬ可能性が高くなるという事になるのだから。

「出来ればこのままでいってもらいたいもんですよ。

 せいぜい、モンスターが減ってくれればいいんですけど」

「それは無理だろうな」

 そう簡単に減ってくれるならこんな楽な事は無い。

 残念ながら、その気配は全く無いが。

「良い事なら、いくらでも起こってもらいたいけど」

「そうそうそんな事は無いって」

「だよなあ」

 班員のぼやきがタクヤの耳にも突き刺さる。

 実際、そうそう良い事など起こりはしない。

 せいぜい、こうして今も生きてるという事くらいで。

(あ、でも……)

 ふと、ここ最近起こったささやかな出来事を思い出す。

(これも、一応は珍しい事になるのかねえ……?)

 そう思って、最近着信したメールを思い出す。



 仕事で使ってるものはともかく、個人で持ってる携帯に連絡が入るのは珍しくなった。

 別大陸にやってきて、受信状態が悪くなったのが大きな理由だ。

 通信用のケーブルもなく、使えるのは衛星を経由する通信機のみ。

 それに対応してるものなんて、この大陸の支社に幾つかあるだけだった。

 最近、ようやく海底ケーブルがつながり、電話やインターネットなどの通信が出来るようになったが。

 それにしたって、まだまだ充分な通信量を確保出来てるわけではない。

 必要最低限の能力しかない。

 そんな通信網によって短い文面がもたらされていた。

 ここ数年帰ってない実家からのものだった。



(しかし……)

 その内容を思い出して少しだけ考える。

 内容は本当に大したものではなかった。

 多少タクヤに関わりそうな事ではあったが、それ程重要という事もない。

 とはいえ、全く関係がないとも言えない。

 知り合い、というか近所の幼なじみ。

 それが今年就職して、そちらの方に行くから面倒見てやれ、という親からのお言葉だった。

(あいつがねえ……)

 内容を思い出しながら記憶を手繰る。

 言われてみれば、そんな奴もいたなあ、と思い出す程度の存在であった。

 何せこの世界は子供の数が多い。

 一家族四人や五人の子供がいるのが当たり前だった。

 そんなわけで、幼なじみと言ってもかなりの数になる。

 そうそう忘れるわけでもないが、かといって一人一人とそれほど密度の濃い関係というわけでもない。

 面倒を見てやるほどの好があるわけでもない。

 一応近所なので邪険にするつもりもないが、だからといって世話をするのも手間に思えた。

(だいたい、そんな余裕があるかよ)

 仕事の件があるので、そうそう目をかけてもやれなくなる。

 何をさせられるか分からないが、おそらく余裕はなくなるはずである。

 そうなったら、そうそう気にかけてやる事も出来なくなる。



(だいたい、そんなの必要なのか?)

 最初に町の案内をしてやり、生活に必要な店の場所などを教えるくらいは良いだろう。

 だが、それ以上の接点を持っていたら鬱陶しくなるのではないかと思った。

 お互い、自分の時間や独自の人間関係を持ってる年頃である。

 子供の頃の繋がりはあっても、それだけにこだわってるわけにもいかないだろうと思えた。

(最初だけ、案内をしてやって、あとは適当にってのが一番だろうよ)

 顔を合わせれば挨拶をするくらいの関係が、おそらく丁度良いのではないかと思えた。

 特段タクヤが淡泊だというわけではない。

 お互いの時間を大事にすればいいと考えての事である。

 それに、

(あいつと接点なんて、ほとんど無いぞ)

 これが一番の理由だった。



 幼なじみと言っても、相手は年下。

 それも四つほど離れている。

 確かにまとまって遊んでいた頃もあるが、年齢があがるにつれ接点は薄れた。

 より近い年齢の者とつるむようになったし、趣味だってそれぞれ違う。

 近くに住んでる子供同士と言っても、全員が親密というわけではない。

 もちろん顔なじみだし、合えば気楽に話をしたりは出来るのだが。

 それでも、年齢差はやはり大きい。

 小学校に入れば接点はより少なくなる。

 特にここ数年、タクヤが中学を卒業して就職してからは完全に顔を合わせてない。

 仕事で忙しくて家に帰る余裕がなかったからだ。

 およそ四年ほどそれが続いてる。

 これだけ会ってないと、顔を合わせても上手く挨拶が出来るかも不安になる。

 再会してもぎこちなくなってしまうのではないかと思えた。



 かてて加えてより大きな問題もある。

 問題と言うより違いというべきか。

 それがタクヤを悩ませる。

(だいたい、女だぞあいつは)

 それが一番大きな違いだった。

 性別の違いは大きなもので、それだけで一緒に行動する事が減る。

 よほど気が合うならともかく、普通にしてるとさほど接点がない。

 興味が向く方向性(趣味など)も、行動範囲(遊びに行く場所)も変わる。

 疎遠でないにしても、どうしても違いが出てしまう。

 タクヤもその例に漏れず、今回連絡のあった相手とはそれほど接点があるわけではなかった。

 顔と名前は一致するし、実家にいた頃は顔を合わせれば挨拶をするくらいの関係ではあったが。

(上手くいくのかねえ……?)

 久しぶりに出会って、かつてのように出来るのかどうか?

 少しばかり悩んでしまった。

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おまえら、教えやがれ
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http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/479725667.html

『ピクシブのブースを使ってるので、その事を伝えておかねば』
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/477601321.html

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