27回目 そりゃあ人気のない部署ですから
「他の部署には新人が入ってるっていうのにな……」
危険が伴う武装警備隊を志願する者は多くはない。
たいていの者は、事務処理作業などの内勤を選ぶ。
それが普通であった。
わざわざ武装警備隊を選ぶのは、よほどの物好きか、切羽詰まってやってくる者がほとんどになる。
曲がりなりにも一流企業なので給与などの待遇は良く、それを目当てにする者はそれなりにいる。
それに、武装警備隊は一般的な入社よりも採用されやすい。
ここだけ採用基準が他よりも低くなっており、門戸は結構広いのだ。
そうしてでも人手を確保しようと必死という事である。
ただ、武装警備隊は入ってからが大変ではある。
命がけの仕事になるし、その為にそれなりの研修をこなす事が求められる。
その厳しさは軍隊並と言われている。
実際、訓練担当者は自衛隊で教官をしていた者達を採用してたりする。
もちろん現役ではなく、定年退職者を雇用したのだが。
そうした者達も今は退いて少なくなってきている。
定年退職者を雇用したので、どうしても業務に従事出来る期間が短いのだ。
だが、そういった教官達の薫陶を受けた後継者が、軍隊並の厳しい研修を今に伝えている。
研修の厳しさは今も変わらず、入ってきた新人達をふるいにかけていく。
厳しさに耐えかねて逃げる者もいるくらいだ。
もっとも、脱走の成功者はほとんどいない。
折角入ってきた者達を逃がすほど一井物産は甘くはない。
逃げる事も出来ない厳重な環境の中で、辛く苦しい研修を無理矢理にでもさせていく。
本当にどうしようもない人間であれば、相応の対処はするが。
それでも可能な限り多く、一人も脱落させないようにしごき上げて、人が必要な部署に放り込んでいく。
そうしなければならない程、人手が足りないのだから。
「今年こそは誰かが来てくれるといいけど」
「来ると思います?」
「いや、無理だろうな」
「ですよね」
「やっぱり」
「そんなもんすね」
誰もが今年も望みはないだろうという諦観で、新入りがやってくる可能性を見つめていた。
「向こうの方には新人も来るんだろうけど」
そう言って事務所などにあてられてる建物に目を向ける。
二階建てや三階建てのプレハブによる一井物産の出張所。
そこがこの大陸における、一井物産の中心地であった。
「まだまだ大きくなるだろうからな」
この大陸における開拓や開発を進めるなら、それを取り仕切る部署も拡大拡張していかねばならない。
日々拡大を続ける港周辺に合わせて、プレハブの出張所も大きくなるだろう。
人員も同様に増加していく。
「俺らの方にも、分けてもらいたいもんだ」
詮無いことをタクヤは口にした。