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22回目 異世界で配備された艦船

 艦船も異世界に合わせて建造されていった。

 ただ、これは単純に旧式の兵器を再生産、というわけにもいかなかった。

 仕様用途が異なりすぎて、再生産してもそのまま用いる事が出来るのか疑問があったからだ。

 相手は艦艇ではなく海に生息するモンスターである。

 その為、単純に再生産しても有効な手段になるのか疑問視されていた。



 また、艦船の大きさも問題だった。

 必要だったのは沿岸航路の護衛であり、外洋航海が可能な大型艦艇などは必要がない。

 ある程度の航続力と居住性は必要だったが、それも極端に高いものは不要だった。

 なのだが、海上自衛隊が保有していた艦艇だと、必要以上に大きなものばかりだった。

 用途を考えれば、排水量で言うと1000トン程度。

 なのだが、海上自衛隊の艦艇の多くが排水量2000トン以上である。

 いささか過剰にすぎると言える大きさである。



 大きさを基準にするならば、むしろ海上保安庁の巡視船などの方が近い。

 しかし、これまた用途を考えると適した能力を持ってるとは言い難い。

 巡視船は戦闘を目的としたものではないのだから当然であろう。

 やむなく新地道は、とりあえず必要な艦艇を揃えるために、かつての護衛艦を何隻か再生産をする事にした。

 その上で、異世界に適した艦船の新規設計をしていく事となった。



 そうして出来上がった艦船をとりあえず海上輸送の護衛につけて、当面はしのぐ事になった。

 だが、これは様々な失敗と問題を露呈する事にもなった。

 搭載されていた兵器やレーダー、様々な機器などは比較的順調に稼働はしていた。

 ありあわせのものを搭載して、無理矢理制御していた割には。

 自衛隊向けの艦船建造に従事していた企業が参加していたからであろう。

 なのだが、搭載されていた兵器が充分に活躍したかと言うと、否であった。

 不要なものがあったり、必要なものがなかったりした。



 まず、対艦用のミサイルが不要だった。

 当たり前だが、海に生息するモンスターのほとんどは海中にいる。

 水上に出て来る事などまず無い。

 そんなものに水上に浮かんでる艦艇を狙う為にミサイルが効果をあげるわけもなかった。

 もし狙うとしても、それならば艦砲射撃で充分であろうとも言われた。

 わざわざ高価な対艦ミサイルを用いる必要も無いだろうという事だ。



 また、飛行型のモンスターに対して対空ミサイルを使うのも疑問視された。

 効果が無かったわけではない。

 狙いを付けられるし、撃てば確実に命中する。

 しかし、モンスター一匹に高価なミサイルを使う必要があるのか、という問題が出てきた。

 それらには、備え付けたCIWS近接防御システムの対空機関砲で充分事足りたからだ。

 そして、対艦ミサイルと同じ理由が出てくる。

 ミサイルよりもはるかに安価な機関砲弾で撃墜可能な相手に、ミサイルを使う必要は無いと。

 もちろん、射程において機関砲はミサイルには及ばない。

 それにしても、艦砲による対空射撃でも充分におぎなえる。

 それとて対空ミサイルには射程で及ばないが、機関砲よりは長い。

 それを用いればいいのでは、という意見が当然ながら出てくる。



 これらとは逆に、更なる増強を求められたのが、対潜兵器であった。

 既に述べたように、海に生息するモンスターは、海中にて活動する。

 その特性は水上艦艇よりは潜水艦に近い。

 これらに対処するために、水中を攻撃出来る兵器の増加が求めれるのは当然の流れであった。

 より強力な水中探知機の導入も含めて。



 意外な兵器が活躍する場面もあった。

 爆雷である。

 誘導型で射程も長い魚雷に押されるように姿を消しつつある兵器であったが、異世界においては意外な活躍を見せた。

 複数で迫る比較的小型(それでも全長10メートルから20メートルはある)に対しては、結構な威力を発揮した。

 進行方向上に複数の爆雷を投げ込み、ほぼ同時に炸裂させる事で、段幕をはるような効果が得られたのだ。

 これにより、迫るモンスターの群を一気に叩き潰す事が出来た。



 魚雷も効果はあるのだが、一つの目標に対してのものなので、集団への効果はどうしても低くなりがちだった。

 爆雷よりも値段が高いのも難点である。

 確実性を求めるならば必要な装備になるが、広範囲に影響を与えたい場合には使いづらくなる。

 ただ、全長100メートルという大型のモンスターを相手にする場合には、魚雷の方が有効ではあった。

 少しでも接近を許すと大惨事になるので、遠距離において確実に仕留める必要があるからだ。

 ただ、それにしても、接近された場合の防衛のために、比較的近距離に散布する爆雷は有効な対抗手段になり得た。



 こうして、対空・対艦装備は削られ、水中探知能力と対潜(対水中モンスター)兵器の増強が進められていく事になる。

 ただし、空中と水上の索敵能力はその後も向上をさせていく事になる。

 それへの備えにミサイルはそれ程必要ではないというだけで。

 それでも念のために、個人携帯型の対空ミサイルの連装型は開発されて、艦船に搭載されてはいく。

 対空機関砲よりも射程が長く命中率も高いからだ。

 また、対空機関砲も射程の長い口径の大きなものが設置されていく事になる。

 出来るだけ遠くで敵を撃退出来た方が有利だからだ。



 こうした教訓を踏まえて、新規の艦艇が造られていく。

 当面、外洋航行能力は必要ないので、船体はもっと小さくても良い。

 必要な兵器や機器も分かってきたので、それらも絞り込んでいく。

 何よりも船体の生産性などを重視していく。

 どれ程優秀であっても、安く建造期間が短くなければ意味が無い。

 その為にも作業工程を極力簡略化する必要があった。

 そうすれば、人手が少なくても済む。

 熟練した技術者もそれほど必要がなくなる。

 建造期間が短ければ、数少ない造船所でも比較的簡単に大量生産が出来る。

 余裕のない新地道では、どうしてもこうした手軽さが必要だった。

 とにかく調達が出来ねばならないのだから。



 その設計思想や概念は、大戦中の松型駆逐艦に近いものがあった。

 というより、その発想をそのまま取り入れたと言って良い。

 最高の性能ではなく、充分な性能にまとめ、それを手堅く揃えるという。

 粗悪な廉価版ではなく、用途に応じた性能に仕上げた量産品に。



 内装も可能な限り一新していった。

 特に少人数でも運用可能なように、自動化をできるだけ推し進めた。

 人手の少ない新地道において、一隻でも多くの艦艇を運用するためだ。

 その分、不慮の事態に対処できる人間も減る事になるが、この部分については諦めるしかない。

 もし何かあった場合には、無理して艦をもちなおすのではなく、艦を捨てて乗員だけでも助かれば良いと割り切って。

 実際、これは搭乗員達にしっかりと指示されている。

 訓練を受けた乗員がいれば、新たな兵器を渡せば良いだけだと。

 それよりも貴重な人手を失う事を、新地道は恐れていた。



 こうして出来上がった艦船は、松型護衛艦と名付けられていく。

 設計思想の参考にした大戦中の駆逐艦の名前をそのままもらった形である。

 また、主な役目である沿岸輸送の護衛から、艦種を既存の軍艦とは別に護衛艦とした。

 自衛隊の艦船と同じ艦種であるが、その意味は全く違うと言って良い。



 後にこの松型護衛艦をもとに、外洋航行能力を得るために船体を大型化したものが新たに作られる。

 別大陸への進出と、その為の船団の護衛のために。

 それは排水量を2000トン以上に、全長を含めた船体を更に大きくしていく。

 名前も新たに橘型としたその艦船は、新たに艦種を外洋型護衛艦としていく。

 これに合わせて松型は、艦種を海防型護衛艦としていく。

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おまえら、教えやがれ
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http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/479725667.html

『ピクシブのブースを使ってるので、その事を伝えておかねば』
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/477601321.html

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