21回目 異世界で配備された戦闘機
戦車がそうであるように、戦闘機も似たような経緯を辿る事になる。
戦後第二世代ジェット戦闘機であり、日本の戦後最初の国産戦闘機。
F1戦闘機と呼ばれるものを、異世界にて再生産、ならびに改善改修していく事になる。
地上車輌に比べれば必要性の少ない戦闘機ではある。
何せ制空権争いをするようなモンスターはいないのだから。
空を飛ぶモンスターも、COIN機と呼ばれる軽飛行機を改造したものでも充分対処可能であった。
戦車がそうであるように、異世界において、それもモンスターを相手にするだけならば軍用機を用いる必要性は低い。
だが、それでも問題が全く無かったわけではない。
航空機のもつ迅速な速度と、それによる展開能力。
これを用いた航空支援はあると便利ではある。
だが、それをやるには、軽飛行機では速度が足りない。
爆弾などを搭載しようにも、それを抱えるだけの力もない。
この部分がどうしても問題になってしまっていた。
航続力は問題なくても、速度が低いので迅速な展開は望めない。
もし少しでも早く現地に到着させたいならば、可能な限り前線近くに航空基地を作らねばならない。
そうなると、多方面に航空兵力を配置する事になる。
それが出来れば理想ではあるかもしれないが、人手不足の新地道では無理な話だった。
少ない戦力を可能な限り広範囲に展開する事が新地道では求められていた。
だからこそ、速度の速いジェット戦闘機が必要となった。
更に、爆弾などの搭載能力も求められる。
対地攻撃という航空支援ではこうしたものが求められていた。
軽飛行機ではそこまでの能力を求める事が出来ない。
比較的軽量な武装が限界だった。
重機関銃、そして多連装ロケット弾あたりである。
これらも有効な武器ではあるのだが、それ以上が必要な場面も出てくるのだ。
そして、戦闘機ならばこれらを問題無く用いる事も出来る。
幅広い用途を考えると、やはり一定以上の性能を持つ戦闘機が必要だった。
少数であっても良いからと、そういったものを求める意見は出ていた。
これらを解消するためのジェット戦闘機の配備であり、F1戦闘機の再生産だった。
超音速の速度と爆弾搭載能力。
それは異世界が求めるものに合致していた。
戦闘機と言いつつも、実態は対地攻撃機向けの能力だったことも幸いした。
本来の任務である対艦能力を発揮する機会は無かったが、それでも異世界では充分に活躍の場があった。
ただ、もちろんかつての性能のままというわけではない。
様々な変更や改修が施されていく事になる。
一番の変更はやはりエンジンからになった。
元々搭載していたエンジンの非力さが問題だった事もあり、この部分は即座に新型に変更されていった。
日本で開発されたXF5エンジンから発展させたものを、元のエンジンの代わりに搭載。
これによりエンジン推力がおよそ2倍近くにまで跳ね上がる事になる。
大きさも本来搭載していたエンジンと同程度に仕上げたので、取り付けるにしてもさして機体に変更を加える必要はなかった。
それでも機体に全く手が加わらなかったわけではない。
超音速飛行を意識したという細長い機体には手が加えられていった。
翼も大きさを拡大、厚みも増して翼下の搭載力を強化した。
懸架装置も増加し、兵器や武器の搭載力を増大させた。
これに合わせて胴体も横幅を増やし、空間の余裕を持たせた。
その一方で全長は切りつめる事になった。
おかげで燃料の搭載量などが減る事はなかった。
おかげで操縦席後部に設置されていた各種装置を機体内部におさめる事が出来た。
これにより、操縦席後方の視界も確保されるようになった。
電子機器なども新しいものに換装されていく。
やはり性能そのものを同程度にしても、各部品を小さく出来るのが大きかった。
本来のものよりも小さくまとめる事が出来たおかげで、重量や空間に余裕が出来るようになった。
その分、より高性能な機器を搭載する事も出来るようになった。
もっとも、新地道の開発能力では、より高性能な機器を開発する事も難しいのだが。
それでも、かつてのF1戦闘機が搭載していたものよりは性能の良いものをつむ事が出来ている。
これは機首のレーダーなどにも同じ事が言えた。
こうした改良を施された結果、F1戦闘機はその姿を大きく変えていく事になる。
2メートルほど縮んだ全長と、4メートルほど増大した横幅。
推力を増したエンジンと相まって、もとの性能を凌駕する能力を獲得した。
地球の最新型戦闘機には及ばないが、対地攻撃機としては、そして異世界では充分な能力を持つ事になった。
こうして改造されたF1戦闘機を、新地道では4号戦闘機として採用していく事になる。
なお、1号戦闘機と2号戦闘機は軽飛行機の改造機。
3号戦闘機はF1戦闘機をそのまま再生産(エンジンは換装済みであるが)したもので、新地道で生産出来るかを試した実験機的な要素が強い。
戦闘を主目的とした本格的な戦闘機は、4号からと言える。
いまだそれほど配備数は多くないが、それでもモンスターを阻止する能力は充分に立証されていた。
なお、カメラなどの撮影器具を用いた機外搭載の偵察用ポッドを用いた偵察にも用いられている。
高速で飛行し、航続距離も長く、モンスターに襲われても充分に対処が出来るからだ。
どちらかというと、こうした用途で用いられる事が多い。
戦闘で4号戦闘機が必要となる場面がそれほど多くはないからだ。
それでも戦闘に参加すれば、搭載する爆弾と機首の20ミリ回転砲身機関砲でモンスターを次々に撃破していく。
4号戦闘機は無用の長物となる事は無かった。




