2回目 不可解な開拓業務 2
「とは言っても……だよな」
無茶苦茶な業務を押しつけられるのはいつもの事。
無理難題をふっかけられ、それでもどうにかやり遂げてきたのも確か。
今更そんな事で文句を言うほど素人でもない。
それでも、である。
「さすにがこれはな……」
渡された辞令を、囲んだ卓に放りながらぼやく。
武装警備隊の待機室の一角、いつも屯してる場所。
そこで、同じように辞令を受け取ってる班員と卓を囲んでいる。
今回の事で思った事を愚痴るために。
「班長もそう思ったんですか」
仲間の声に、タクヤは「ああ」と頷いた。
「どう考えたっておかしいからな」
「まあ、普通に考えればそうですよね」
「何考えてんですかね、上は」
「恒例の無茶苦茶な命令なんですかね」
「さあな」
口々に出て来る疑問兼文句に、いい加減な返事がなされる。
「何がどうしてなんて、俺に分かるかよ」
「つーと、班長も何も聞いてないと」
「まあ、班長あたりじゃ本音を漏らすなんて事は無いでしょうけど」
「うるせー」
班長という事で、この中では一番偉いのは確かである。
だが、数人の部下をまとめるだけであり、下っ端である事に変わりはない。
機密などを知る事が出来る程上位の立場という事は決してない。
与えられた指示に従い、自分も動き、部下も動かす。
その程度の立場であり、それくらいの役職である。
今回のような不可解な指示が出ても、
「本当に、何考えてんだか」
と他の者達と共に疑問を抱くだけで終わってしまう。
その理由が分かるのは、全てが終わった後くらいだろう。
それも、運が良ければである。
機密に関わる事であれば、真相が語られる事は無い。
何か伝えられる事があったとしても、それが欺瞞や真相を隠すための偽情報である可能性すらある。
「社長にもなれば、何があるのか分かるんだろうけど」
冗談めかして言ってるが、実際そんなものである。
下手すれば、社長ですらも真相が分からない、その全てを知り得ないかもしれない。
それくらい謎は多いものである。
なので、疑問の答えはあれこれ想像するしかない。
それだけの自由はさすがに認められている。
真相の詮索は認められてないし、下手に暴こうとすれば機密漏洩で処罰されかねないが。
そんなわけで、何かあればこうやって集まり、答えが分かる事の無い疑問についてあれこれ考えていく。
もちろん、これで答えに辿りつく事は無い。
もしかしたら真相を言い当てる事もあるかもしれない。
だが、答え合わせをする事は決してない。
出来るのは、ただ推測や想像をする事だけ。
そんな推理小説じみた楽しみをして、時間を潰すのがせいぜいである。
同時に、こうして新たな業務がやってくる度に常に思う事。
それを皆で確かめあっていく。
「楽な仕事だといいけど」
「また無茶を言われるでしょうけど」
「いつもみたいな感じなんでしょうね」
「もう少し楽をさせて欲しいんですけどね」
「まあ、無理なんじゃねえか。
俺達が楽をしたくても、モンスターがさせてくれないし」
「本当に面倒だな」
誰もが口々に思いの丈を口にしていった。
それらの全てが愚痴でしかないのだが、言わずにはおれない程鬱憤がある。
そして、憤りも通り越して、嘆きとぼやきも出なくなり、ただ諦めに似た感情を抱いていく。
それを達観というのかもしれない。
「もっと楽になりゃあいいんだけど」
決してそうなる事は無いのは、口にしたタクヤが一番良く知っている。