18回目 異世界における兵器開発事情
武装を必要とする新地道ではあるが、当初はそれほど大がかりなものを考えてはいなかった。
モンスターは確かに強力だが、それらは個人で携帯出来る火器でも対処が可能だったからだ。
安全性の確保のために軽装甲車両なども必要であったが、言ってしまえばそれくらいで事足りる。
地球のように、戦闘機に戦車に軍艦といった大がかりなものは必要無いと考えられていた。
なのだが、それでも『もしかしたら』という懸念もあった。
異世界にも空いてる大穴の数々。
その向こう側から、自分達と同程度の存在がやってきたら?
あるいは、自分達を凌駕するような文明や存在が出てきたら?
それらと戦争になったら?
その可能性を考えて、軍隊並みの武装も必要ではないかという考えはあった。
これらを考えて新地道も軍用兵器の開発や生産も考えていく事になる。
これには兵器の開発・製造に関わる企業も参加していく事になる。
日本ではなかなかままならない実験などが、新地道では可能になる
異世界では日本本土にあるような規制などほとんどない。
これは得難い利点だった。
また、モンスターという敵が常に存在している。
作ったものの有用性を試す事も出来る。
莫大な費用と時間がかかる研究開発であるが、この利点は負担の大きさを補ってあまりあった。
何せ、実戦の洗礼を常にうける事が出来るようなものなのだから。
もしもを考えて軍用兵器が欲しい新地道。
兵器開発における実験がしたい企業。
両者の利害は一致した。
そして、異世界における兵器の研究開発が始まっていく。
ただ、さすがに最新兵器の研究開発や生産は難しかった。
防衛機密に属するものは企業も保有してないものもある。
現在運用されてる兵器の製造・整備・修理・補修などを任されていてもだ。
肝心要の部分などは機密とされてるものもある。
それらを複製する事は、製造担当してる企業にも不可能であった。
また、本当に新規の開発も難しい。
現存しない新兵器を作るとなると、莫大な予算と時間が必要になる。
技術の積み重ねも必要だ。
即座に兵器が欲しい新地道の実情にも合わない。
なので、新地道における兵器開発の第一歩は旧型兵器の復活から始まった。
過去の兵器の復活である。
新たに設計図を引き起こす必要もなく、しかも実用されていたという実績もある。
性能は最新型などに比べれば見劣りするが、それでも異世界でならば充分である。
モンスター相手ならば過剰と言えるほどの能力なのだから。
こうして新地道にて旧式兵器の再生産が始まっていった。
ただし、完全に元のままの生産というわけでもなかった。
旧式兵器は、運用されていた時点からあった改善要求があった。
実際に使ってみて判明した不具合などが、現場から上がってくる。
それらを盛り込んで、後期生産分は初期分よりは使いやすくなっていく。
もっとも、改修するだけの予算や時間がない事もあって、そのまま放置される事もあるが。
新地道における再生産にあたり、これらの改善要求などは可能な限り盛り込まれる事になった。
また、当時使われていた部品や機器などは、現在そのまま生産出来ない場合もある。
これは、現在の技術力では当時の能力に及ばないからではない。
むしろその逆で、現在の技術力で作ってしまうと、過去の技術で作れた以上のものしか生産出来ないという事が多々あるのだ。
何せ再生産するのは、1970年代前後のものがほとんどである。
そこから既に半世紀以上の時間が経過している。
技術力など雲泥と言って良い差が出てきてしまってる。
それなのに、(言葉は悪いが)わざわざ現在より劣悪な部品や機器を再現する必要性がなかった。
無理なく改める事が出来るものについては、代替え出来るものをあてる事になっていった。
このため、再生産とはいえ、性能は各段に向上したものが登場する事になる。
だが、決して最高の性能を求めたわけではない。
むしろ、それよりも優先されたのは、使いやすさだった。