175回目 巨人達の終焉 7
「……なんだよ、本当に」
車内にいた車長兼操縦手兼砲手は衝撃に驚いて動きを止めた。
それも仕方が無い。
まるで、壁にぶつかったような衝撃が襲ってきたのだ。
ほんのわずかだが、装甲車が後ろに飛ばされもした。
『おい、大丈夫か』
誰かからの無線が入る。
「……こちら43号車。
とりあず無事だ。
車の方も…………ちゃんと動く』
念のために軽く起動確認をし、異常がない事を確かめる。
少なくとも、自動診断装置は問題無いという結果を出している。
『そうか。
だが気をつけろ。
連中の攻撃はまだ終わってない』
「了解」
答えながらようやく分かった。
先ほどの衝撃は巨人からの攻撃によるものだと。
あらためて自分たちがとんでもないのを相手にしてるのだと実感する。
そして、その攻撃を装甲車ならしのぐ事が出来るという事も。
多少の恐怖と、それ以上の安心感を抱く。
「前進を再開する。
敵が見えたら攻撃するが構わないか?」
『許可する。
周りにいる生身の兵員が的になったらかなわん』
「了解」
返事をしながら装甲車を前進させる。
ついでに照準装置も起動させ、いつでも射撃が出来るようにする。
この小型装甲戦闘車は乗員一人でも動かせるようになっている。
運転しながらの射撃ももちろん可能だ。
その機能を使って狙いをつけていく。
「頼むぜ……」
そんな装甲車の後ろにつきながら、タクミは装甲車とその中の乗員に願った。
何故か巨人居住地への突入に指名されたタクミは、装甲車の後ろについていく事になった。
おかげで装甲車の真後ろについていかねばならなくなっている。
巨人達に可能な限り安全に接近するにはこうするしかない。
それは分かるのだが、なんで自分が行かねばならないのかが分からなかった。
だが、言われたなら拒否するわけにもいかない。
渋々ながら指示通りにここまでやってきた。
それも装甲車という動く盾があるからこそだ。
「途中で壊れたりしないでくれよ」
そう言いたくもなる。
今、タクミの命は装甲車にかかってるのだから。
それは同じように突入するよう言われた他の者も同じだ。
タクミと同じように突入を命じられた者達は、居住地に向かう装甲車の背後でただひたすら自分の安全を願っていた。
「最後まで動いてくれよ」
「なんならあのデカ物を倒してくれてもいいから」
口々に色々言いながら、巨人達の居住地へと近づいていく。
そうしてる間に、巨人達は居住地からの脱出を敢行する。
自分たちの世界へとつながる大穴。
そこをめがけて一斉に行動を開始する。
それぞれが持てる加護を存分に用いて、少しでも帰還の可能性を高めながら。
しかし、それらは無駄に終わる。
彼らを待ち構えていた者達によって、一人一人撃たれていく。
包囲されていた彼らに勝ち目はない。
結局、脱出を試みた巨人達は、援護で残った弓持ちだけを残して全滅する事となる。