174回目 巨人達の終焉 6
そんな心配など知るよしも無い巨人は、さっさと次の行動に移っていく。
飛んでる何かは気になったのでを射落としたが。
それも何か意味があってやったのではない。
ただ、小さき者がやってくると同時に飛び回りはじめたそれらが、よからぬ何かに思えただけである。
だからさっさと落としていった。
だが、設置してあるカメラなどには気づかない。
音も立てずに動くそれらを発見できなかったからだ。
調査や発見に関わる加護をもってる者がいれば変わっただろう。
しかし、そういう者は既にいない。
先ほど、小さき者へと突進していった者の中に入っていた。
その為、残った巨人達が隠されてるカメラなどを見つける事は出来なかった。
おかげで巨人の動きを把握出来た一井物産の戦闘部隊は、次の行動に移っていく。
集結した巨人達を見て、そちらに人を動かしていった。
それとは別に、一人残って弓を構える巨人を見て、装甲車を向かわせる。
ドローンを射落とすような奴だ。
盾もなしに人だけ送り込むわけにはいかない。
可能な限り援護出来る状態を作っていかねばならない。
とはいえ、状況は戦闘部隊の方が有利と言える。
直接戦えば巨人の方が不利なのは変わらない。
一気に距離を詰めて接近戦に持ち込まない限り、巨人に勝ち目は無い。
その為にも、木々の間を伝い、物陰に隠れて接近するべきであろう。
だが、それをしようとしても、広く展開する戦闘部隊には死角がほとんどない。
接近すればあちこちから攻撃をされてしまう。
こんな状態で巨人達が勝つ可能性はほとんどなかった。
多少の道連れは作れるにしても、勝利には遠い。
だからこそ、弓持ちの援護のもと脱出をはかってるのだ。
その為に残った弓持ちは、加護を働かせながら敵へと狙いをつけていく。
空を飛ぶ航空機にすら届く矢を放つ男だ。
数百メートル先の敵を狙うなど造作もない。
今も狙いをつけて弦を引いている。
物陰伝いにやってくるので厄介だが、移動の最中は良い的だ。
それを狙って矢を放つ。
そのつもりだった。
しかし、ここで更なる誤算が出てくる。
(四角い箱か……)
自分に向かってくる装甲車を、弓持ちの巨人はそう呼んでいた。
それが何であるのかはまだはっきりとは分かってない。
だが、そこから突き出た棒から火が噴いた直後に仲間が死んだ。
それを見ていた弓持ちはそれなりに警戒していた。
(あれがあいつらの加護なのか?)
巨人の常識の範疇で判断するに、そういう考えにも至る。
もちろんそうではないのだが、肝心な部分では的を射ていた。
動いている四角い箱は脅威であるという事。
それだけは正しく認識していた。
(ならば)
やる事は一つ。
一番の脅威から片付けていく。
その為に弓持ちは狙いをつけて矢を放った。
放たれた矢は狙い通りに四角い箱こと装甲車に当たった。
その直撃は、さすがに装甲車にそれなりの衝撃を与えた。
数千メートルの射程を持ってるのだ。
相応の威力は備えている。
これが一般車両であるならば貫通していたかもしれない。
しかし、そこは曲がりなりにも装甲車である。
最も防御力の高い正面ならば、12.7ミリ機関銃弾もはじく。
今は万が一を考えて追加装甲を装着してるので、20ミリ機関砲弾にも耐える。
さすがに弓持ちの巨人の放つ矢も、それを貫通するだけの威力はなかった。
だが、それでも衝撃はある。
着弾した瞬間に装甲車に振動が走った。
装甲を射貫くことはなくても、威力全てをはじき返す事は出来なかった。
乗員も思わず悲鳴をあげる。