170回目 巨人達の終焉 2
居住地から飛び出してきた巨人は6人。
その全てが倒れた。
急所を撃ち抜かれたのか、全く動かない者。
致命傷ながらもまだ生きている者。
そんな6人に、一井物産戦闘部隊の者達はとどめをさしていく。
頭に、心臓に。
人間だったら確実に死ぬ場所に銃弾を撃ち込んでいく。
身体構造が人間と同じかどうかは分からない。
だが、大きさはともかく見た目は人間と同じである事から、そういった場所を狙って撃っていった。
傍目には死んでるように見える者も。
確実に仕留めたという確証を得るために。
万が一にも生きていたら、どんな反撃が来るか分からない。
モンスターを相手にする時と同じだ。
余裕があるなら確実にとどめをさす。
それがこの異世界で生き残り続けるために必要な措置である。
怠れば、息を吹き返した敵に殺される。
そういった出来事は実際に何度も発生している。
その様子は居住地に残っていた巨人にも目撃されていた。
彼らは信じられないものを見るように、仲間の倒れたあたりを見ている。
何が起こったのかは彼らにも分からない。
分かるのは、仲間が倒れたこと。
それを為したのが、どうやら向かってくる小さい者達である事。
何をどうやって仲間を倒したのかは分からない。
だが、理由の分からない何らかの力で倒れたのだけは理解した。
「何があった?」
「どうして?」
「なあ、本当にあれは倒されたのか?」
「嘘だろ、まさか、本当に死んだのか?」
ありえない事だった。
彼ら巨人の常識からかけ離れた光景だった。
小さき者達に近づいたら、なぜか仲間が倒れたのだ。
「まじないでもやったのか?」
「あいつらも加護をもってると?」
「ありえない……って事はないが。
しかし、俺たちを倒すほど強力なものを持ってるのか?」
彼らは彼らの想像しうる攻撃を想定していく。
「切り結ぶ前に倒れたようだし。
おそらく接近戦ではないだろう」
「だろうな。
聞こえてきたあの音と関係があるとは思う」
「だが、いったい何が起こった?」
原因が分からない。
だからこそあれこれと想像していく。
しかし、どれほど想像しようとも正解にたどりつく事は無い。
そのように考えてる暇もない。
「とにかく、あいつらを放っておく訳にはいかん」
「そうだな」
何をされたのかは分からない。
ただ、無視できるような些細なものではない。
それだけは確かだった。
「行くぞ。
あいつらを放っておくわけにはいかん」
「近づく前に倒さないと」
そう言いながら、残っていた巨人達も自分の武器を手にとっていく。
「あいつらもやる気になったようだ」
ドローン越しに見る居住地の様子。
それを見て指揮官は渋い顔をする。
戦闘を覚悟してやってきたが、相手が本腰を入れてくるのはやはり辛い。
出来れば、相手が油断してるうちに徹底的にやりたかった。
その方が損害を出す可能性が低くなる。
しかし、その可能性はもう失われた。
さすがに仲間が倒れるのを見て、巨人も本腰を入れてくるだろう。
それは画面に表示される巨人の動きで分かる。
「全員気をつけろ。
敵も本気を出してきた」
無線で部下に伝える。
「遠慮する事なく倒せ」
すぐに部下から了解の返答が戻ってくる。
それを聞く指揮官の顔は、それでもまだこわばっていた。