164回目 巨人対策 3
集めた情報の分析も行われている。
それが上層部にもあげられている。
事業活動の決定の場において、それも取り上げられている。
しかし、そうでありながらも決断を下さず会議を続けてしまっている。
もう現実の問題に目を向ける事もなく、持論を押し通すための意地のぶつかり合い。
いや、そんなたいそうなものでもない。
ただ我が儘の言い合い。
そんなものに会議は堕落していた。
言い換えれば主導権争いと言おうか。
会議の参加者達の意地と、彼らが所属してる部署。
それらの主導権をかけただけの騒動。
それが会議の実態だった。
たんなる部署間騒動、セクショナリズムというような醜い問題が発生していた。
それを止めたのは、馬鹿馬鹿しい事に巨人の動きだった。
大穴から増援と思われる巨人達がやってきた。
一井物産の者達が騒いでる間に。
それらは現地に居る巨人と合流していった。
さすがにそれを見て一井物産の上層部も行動に出る。
まだ対処しきれる数におさまってるうちに倒さねばならないと。
そのことで満場一致になった一井物産上層部は、即座に巨人達への攻撃を命じた。
現場はそんな上層部に振り回される形になる。
「いや、攻め込むのはいいけどよ」
タクミもやってきた決定に呆れていく。
攻撃そのものは否定しない。
だが、いきなりすぎて呆気にとられる。
「それに、あいつらも増えたんだろ。
だったらこっちも少しは準備しないとまずいだろ」
それが全然足りてない。
敵地に攻め込むのだから、それなりの装備が欲しかった。
具体的に言うと装甲車。
身一つで突撃などしたくない。
敵の攻撃をはじくための盾が欲しい。
その為の装甲車である。
これを動く壁として使い、その後ろに控えていたい。
ついでに、搭載してる機関砲などで巨人をなぎ払って欲しかった。
手持ちの銃でも倒せるのは分かってる。
だが、射程も威力も上回る機関砲で、より遠くから巨人を倒してもらいたかった。
それだけ接近するのは危険すぎる。
人間一人を簡単に掴みあげるくらいの力があるのだ。
接近するのは避けたかった。
なのだが、その装甲車が足りない。
あるにはあるのだが、増員された兵員の数においついてない。
出来ればあと何両か増やしてから突入したかった。
侵入できる地形は少ないかもしれないが、そこだけでもいいから動く盾が欲しい。
敵がどこからやってきて、どういう攻撃を仕掛けてくるか分からないからだ。
そんな時に、盾になるくらいの装甲と、十分な火力があるのはありがたい。
逆に、それがない所に突入するのは可能な限り避けたかった。
なのだが、現実は無情である。
尻に火がついた上層部は即座に突入を命じてくる。
その為の準備がととのってるかどうかなど関係なく。
現場からの意見は当然やってきてるが、そんなものおかまいなしに。
一応、現状の火力や兵力で十分敵を倒せるという分析結果が出てるからだ。
その分析には、
『このまま突入させたら、かなりの死傷者が出るからやめとけ』
という趣旨の事も、わかりやすい表現で明確に書かれているのだが。
上層部の者達は都合良くその部分が読めなくなっていたようだった。
はっきり言えば、分かっていて無視をした。
損害は出来るだけ出したくないが、これ以上長引かせるのも問題だと考えて。