154回目 巨人調査 3
当然ながら、近づいて来る存在は巨人とて感知している。
空を飛ぶ偵察機は彼等の目にも見えている。
視力や聴力において人間を上回る彼等はそれを既に知っていた。
また、動物的な感覚の鋭さから、何かが近づいてくる事も。
「また来てるな」
空を見上げて一人が漏らす。
「何だと思う?」
「分からん」
隣にいたもう一人が率直に答える。
「鳥………ではないのは分かるが」
「そうだな」
彼等が知ってる鳥とは形が違う。
翼を拡げてるのは似てるが、それとは似ても似つかない。
「何だと思う?」
「さあな」
様々な想像や推測はある。
しかし、答えが出る事はない。
彼等の知り得る範囲には存在しないものだからだ。
「捕まえてみるしかないか」
「そういう事だ」
とうに出ている結論である。
それでも質問が出てくるのは、解答が無いからだ。
答えがない限り、疑問が解消される事は無い。
そして疑問の解消の為に人は様々な想像をはりめぐらせる。
巨人達とて例外ではなかった。
「まあ、捕まえてみれば分かる」
「そうだな」
そう言って彼等はとりあえず納得した。
既に彼等の中でも対応は決まっている。
分からないなら調べればいい。
調べる為には捕まえればいい。
その為に手段は既に策定されている。
「しかし、届くのか?」
「分からん」
それがどれだけ効果があるのかは彼等にも分かってない。
空高くにいる相手だ。
射程1000メートルにもなる彼等の弓ですら届かない場所にいる。
簡単に捕まえられるわけではない。
なので、その為の準備が必要だった。
それももうじき終わる。
「上手くいけばいいが」
「何とかなるだろう」
「だといいが」
「何、アルトルブの加護がある。
大丈夫だ」
彼等の神────正確には祖霊の名を出していく。
それは弓をもって天を制したという偉大な存在である。
それにより、天空にいる敵を撃破し、巨人の今日を築いたと。
「どうにかなるさ」
「それもそうか」
神話を思い出した彼等は、ほんの少しだけ安心して空を見上げた。
その目には、上空を飛ぶ長距離偵察機の姿がうつっていた。
それから数日。
巨人達の居住地から上空に向けて弓矢が向けられる。
人間を超える身長を持つ彼等をも上回る長さ。
おそらく、全長は8メートルをも超えようか。
巨人の長弓とでも言うべき巨大な武器である。
この世界にある長大な樹木を用いて作られたものだ。
そこに大型モンスターの骨などが組み込まれている。
骨の強度を利用した複合弓。
威力は単純な樹木のしなりを利用する以上のものとなる。
それを引き絞るには、相応の力が求められる。
いかに巨人と言えども、こんなものをまともに使える者は限られる。
それを可能とする者が、一人空に向かって弓を構えていく。
「おい、見ろ」
それを上空から見ていた偵察機の搭乗員は、驚いて望遠カメラの画像を示す。
「下から狙って来てるぞ」
「嘘だろ、こっちが見えてるのか?」
「今、高度3000メートルじゃなかったか?」
そんな所に届くのかどうか。
誰もが疑問を抱いた。
だが、もしかしたらという危惧もある。
「何がどうなるか分からん、一応高度を上げるよう要請しろ」
すぐさま機長に報告がなされる。
機長もそこはわきまえた人間だった。
「分かった、すぐに高度を上げる」
言いながら機首を持ち上げ空へと向かう。
高度計が勢いを上げて数値を増加させていく。
だが、それよりも先に巨人の矢が飛んだ。
待っててくれた皆さん、お待たせしました
とりあえず、出来上がった分をいくらか掲載していく