151回目 企業側の論理
下っ端達が意外に思うくらいには上層部は本気だった。
何せ、自分達の存亡がかかっている。
舞台となってる第二大陸における様々な問題は、基本的に一井物産が解決せねばならないのだ。
他に頼るれるものはない。
余程の事になれば新地道も出て来るが、現状はそんな状況では無い。
よって、問題解決のために一井物産は本気にならざるえなかった。
そうなると色々と考える事になる。
可能な限り経費はかけないようにはしたいが、成果もしっかり出さねばならない。
となれば下手な出し惜しみはかえって損失を生む事になる。
投資という形で切ったはったのしのぎを削ってきた企業である。
そういった事も身に染みて分かっていた。
となれば、何が利益になり、どうすれば損失を減らせるかだ。
この場合の最悪は、出し惜しみして最低限の装備で放り出して全滅する事になる。
求める成果は得られず、金と時間をかけて育てた兵隊も失う。
いわゆる、逐次投入の形だ。
それだけは避けねばならなかった。
出せる範囲で最良最高の状態で送り出す。
被害を出来るだけ減らし、成果を可能な限り高い確率で出すにはこれしかなかった。
その為、出来うる範囲で最良の装備を用意する事になった。
人員は可能な限り多く。
使える道具も出来るだけ良い物を必要なだけ用意して。
最終的に、それが最大の利益になる。
成果を得て帰還してくれば、その分だけ損失も減る。
必要なのは情報だが、情報を得て持ちかえってこれる人材もまた貴重な資産だ。
それを失うのは大きな損害になる。
それは金銭的な損得にも繋がっていく。
人を失ってしまえば、そこに費やした訓練時間・機材や消耗品・経費などが吹き飛ぶ。
それは企業としても大きな損害だ。
それを再び揃えるには同じくらいの投資が必要になる。
そして、その投資をしてるあいだに、稼ぐ機会を失いかねない。
その時必要だった人材がいなかった事により。
企業が被る損失としてはこれが最大最悪であろう。
その為に一井物産はそれなりの準備をする事となった。
企業部隊としてはかなりの重装備を施して。
送り出す者達が生還する可能性を少しでも高めるために。
もっとも、全てが一井物産の支出というわけでもない。
この探索・偵察活動、仕事として発注してるのは第二大陸の自治体である。
当然ながら費用の多くは自治体から出ている。
その自治体は一井物産の支配下にある。
こういった資金の融通はかなり自由がきく。
言ってしまえば、一井物産がやる仕事のほとんどはこの自治体から出ている。
汚職と言われかねないやり方ではあるが、それをとやかく言う者はいない。
そもそもとして、第二大陸の支配者は一井物産である。
自治体がその下にあるのはおかしな事では無い。
むしろ、一井物産と自治体を分けて考える方が無理があった。
何より両者は運命共同体。
生き残る為に役割分担をしてるだけといえる。
その間で融通をきかす事があっても、それが悪いというのもおかしなものだった。
何より、そうでもして共同歩調をとらないとやってられない事態である。
どうでもいい事をあれこれ取りざたしてる場合ではなかった。
何より、偵察に出る者達からすれば、裏の事情などどうでもいい。
自分達の仕事にかなりの装備が支給されている事が重要だ。
それにより生き残る確率が上がるなら、文句が出るわけがない。